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再会
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教会に辿り着いたレイナが見たものは、愛する男の両隣で微笑むクラスメイトの姿だった。
ウェディングドレスと呼ぶには豪華さに欠けるが、様々な花の模様が刺繍された白のドレスは、見ている者の心を和ませる。
本当ならばあそこに立っているのは自分のはず、そんな気持ちも湧いてくるが間に割って入る気にはなれなかった。
なぜなら男が幼い赤子を抱きかかえているのが、レイナの瞳に映ったからである。
彼女には一目でそれが、自分とコージの子どもだと分かった。
そして2人のクラスメイトがあの場に居る理由も、女の勘でおおよそ理解する。
(そう……私の子どものために、あなた達はコージのお嫁さんになったのね)
ほんの少しだけ寂しい表情を浮かべながら、レイナは教会に背を向けた。
これ以上ここに居ると、いらぬ騒ぎを起こすかもしれない。
3人と子どもの幸せを願いながら、不死の世界で暮らそう。
そんな彼女のささやかな望みは、予想もしない形で叶えられることとなる。
「紅葉院 玲奈(こうよういん れいな)、死んだはずのお前が何でここにいる?」
「……ディザイア」
レイナの背後に、いつの間にかディザイアが立っていた。
おそらく街の入り口にいたオークが、彼に報告したのだろう。
彼の力を拝借すれば、逃げることも倒すことだって出来る。
けれどもレイナにそんなつもりはない、彼女は既に死んだ身。
本来いるべき場所に戻るのが、正しい選択なのだ。
「もう1度死ぬ前に、少しだけ話をしない? 私が何故ここに居るのか、説明をしておきたいの」
ディザイアは無言で頷くと、レイナを銀鷲亭へと案内したのである。
「……そうか、櫻木は不死の者として蘇っているのか」
「ええ、あとは河合さんや伊勢谷くんも櫻木くんの眷属にされているわ。 ただ2人とも隙を窺っているようだから、本心から付き従う気は無いみたいよ」
レイナから聞かされた情報に、ディザイアはそれほど驚かなかった。
むしろカルマなら櫻木をきっと利用すると、本能的に気付いていたのである。
「それで……、お前はこれからどうするつもりだ?」
「安藤さんや佐々木さんなら、私とコージの子を大切に育ててくれるはず。 4人の生活を邪魔するほど、私は無粋じゃないわ」
本当は今すぐにでも駆け寄って自分の子を抱き上げたいのだと、ディザイアは彼女の気持ちを理解していた。
しかし今の姿がまやかしで骨だけの化け物となっていることを、コージには絶対に知られたくない。
そうなるとレイナが選ぶ道は、1つしかなかった。
「ねえ、ディザイア。 コージ達に見つからない場所で、私を殺してくれない? 私をもう1度、永久に眠らせてほしいの」
「本当にそれでいいのか?」
「あんなに幸せいっぱいの結婚式を間近で見て、私も少しだけどコージと式を挙げた気持ちを味わえたわ。 この気持ちを忘れる前に、静かに眠りたいの」
レイナの願いを叶えるべきだと、ディザイアは考える。
街の外へ行こうと言うと、彼女も大人しく従う。
目立たないように人通りの少ない道を進んでいると、門の前で思いがけない人物が立っていた。
「玲奈さん、私達に何も言わずに子どもを押しつけて逝ってしまうの? ちょっと虫が良すぎると思わない?」
「安藤さん、佐々木さん……」
門の前で安藤 沙織(あんどう さおり)と佐々木 小梅(ささき こうめ)が、2人を待ち構えていたのである。
「お前達、いつから紅葉院が居ることに気付いていた?」
「教会から出てきた時かな? 最初に見た時はビックリしたわよ、でもディザイアが話しかけているのを見てこうなると思ったから、早めに式を切り上げてきたの」
(さすが我らが参謀は先を読んでいる、しかしよくあんな遠い場所から気付けたな)
そこまで考えてディザイアは、沙織に鷹目を与えたままになっているのを思い出し苦笑いを浮かべた。
「あと私達も、もうすぐあなたの子の世話が出来なくなりそうなの。 だから、自分の子どもの世話くらい自分でしてちょうだい」
沙織が手招きすると門の影から、コージがレイを抱いて現れる。
「レイナ……。 君と私の子だ、名前はレイと名付けた。 漢字にすると玲、君の名から1字貰った。 母親が居ないと、この子はきっと寂しがってしまう。 だから私と一緒に、この街で育てよう」
「……無理よ、だって私の本当の姿はコレなのよ」
レイナは、創造で身に付けた生身の部分を解除した。
骨だけで動く彼女を見て、何も知らない住人が悲鳴をあげる。
コージはそれを気にすることもなく、思いきり抱きしめた。
「君がどんな姿になろうとも、私が愛した女性に変わりはない。 だからこれからも私は君を愛し続ける、私の妻は君だけだ!」
「あ~あ、大勢の前で結婚式を挙げておいて言うことがコレだよ? 私達完全に2人の引き立て役だよね、小梅?」
「そうね。 でもこれが、1番良い形だと思う」
沙織と小梅がヤキモチを焼くフリをしながら、再会した2人を温かく見守る。
するとディザイアは、レイナのある変化に気付いた。
「おい、紅葉院。 お前……、俺以上の化け物になりかけているぞ」
「えっ!?」
思わず声をあげたのはコージ、父以上の化け物とはどんな存在になるのだろう?
ディザイアが見ているレイナの鑑定で、まず最初に変わったのはこれである。
【不死の女王レイナ】→【生殺与奪を得た淫魔 紅葉院 玲奈】
息子を搾り尽くしそうなその肩書きに、ディザイアは一抹の不安を覚えた……。
ウェディングドレスと呼ぶには豪華さに欠けるが、様々な花の模様が刺繍された白のドレスは、見ている者の心を和ませる。
本当ならばあそこに立っているのは自分のはず、そんな気持ちも湧いてくるが間に割って入る気にはなれなかった。
なぜなら男が幼い赤子を抱きかかえているのが、レイナの瞳に映ったからである。
彼女には一目でそれが、自分とコージの子どもだと分かった。
そして2人のクラスメイトがあの場に居る理由も、女の勘でおおよそ理解する。
(そう……私の子どものために、あなた達はコージのお嫁さんになったのね)
ほんの少しだけ寂しい表情を浮かべながら、レイナは教会に背を向けた。
これ以上ここに居ると、いらぬ騒ぎを起こすかもしれない。
3人と子どもの幸せを願いながら、不死の世界で暮らそう。
そんな彼女のささやかな望みは、予想もしない形で叶えられることとなる。
「紅葉院 玲奈(こうよういん れいな)、死んだはずのお前が何でここにいる?」
「……ディザイア」
レイナの背後に、いつの間にかディザイアが立っていた。
おそらく街の入り口にいたオークが、彼に報告したのだろう。
彼の力を拝借すれば、逃げることも倒すことだって出来る。
けれどもレイナにそんなつもりはない、彼女は既に死んだ身。
本来いるべき場所に戻るのが、正しい選択なのだ。
「もう1度死ぬ前に、少しだけ話をしない? 私が何故ここに居るのか、説明をしておきたいの」
ディザイアは無言で頷くと、レイナを銀鷲亭へと案内したのである。
「……そうか、櫻木は不死の者として蘇っているのか」
「ええ、あとは河合さんや伊勢谷くんも櫻木くんの眷属にされているわ。 ただ2人とも隙を窺っているようだから、本心から付き従う気は無いみたいよ」
レイナから聞かされた情報に、ディザイアはそれほど驚かなかった。
むしろカルマなら櫻木をきっと利用すると、本能的に気付いていたのである。
「それで……、お前はこれからどうするつもりだ?」
「安藤さんや佐々木さんなら、私とコージの子を大切に育ててくれるはず。 4人の生活を邪魔するほど、私は無粋じゃないわ」
本当は今すぐにでも駆け寄って自分の子を抱き上げたいのだと、ディザイアは彼女の気持ちを理解していた。
しかし今の姿がまやかしで骨だけの化け物となっていることを、コージには絶対に知られたくない。
そうなるとレイナが選ぶ道は、1つしかなかった。
「ねえ、ディザイア。 コージ達に見つからない場所で、私を殺してくれない? 私をもう1度、永久に眠らせてほしいの」
「本当にそれでいいのか?」
「あんなに幸せいっぱいの結婚式を間近で見て、私も少しだけどコージと式を挙げた気持ちを味わえたわ。 この気持ちを忘れる前に、静かに眠りたいの」
レイナの願いを叶えるべきだと、ディザイアは考える。
街の外へ行こうと言うと、彼女も大人しく従う。
目立たないように人通りの少ない道を進んでいると、門の前で思いがけない人物が立っていた。
「玲奈さん、私達に何も言わずに子どもを押しつけて逝ってしまうの? ちょっと虫が良すぎると思わない?」
「安藤さん、佐々木さん……」
門の前で安藤 沙織(あんどう さおり)と佐々木 小梅(ささき こうめ)が、2人を待ち構えていたのである。
「お前達、いつから紅葉院が居ることに気付いていた?」
「教会から出てきた時かな? 最初に見た時はビックリしたわよ、でもディザイアが話しかけているのを見てこうなると思ったから、早めに式を切り上げてきたの」
(さすが我らが参謀は先を読んでいる、しかしよくあんな遠い場所から気付けたな)
そこまで考えてディザイアは、沙織に鷹目を与えたままになっているのを思い出し苦笑いを浮かべた。
「あと私達も、もうすぐあなたの子の世話が出来なくなりそうなの。 だから、自分の子どもの世話くらい自分でしてちょうだい」
沙織が手招きすると門の影から、コージがレイを抱いて現れる。
「レイナ……。 君と私の子だ、名前はレイと名付けた。 漢字にすると玲、君の名から1字貰った。 母親が居ないと、この子はきっと寂しがってしまう。 だから私と一緒に、この街で育てよう」
「……無理よ、だって私の本当の姿はコレなのよ」
レイナは、創造で身に付けた生身の部分を解除した。
骨だけで動く彼女を見て、何も知らない住人が悲鳴をあげる。
コージはそれを気にすることもなく、思いきり抱きしめた。
「君がどんな姿になろうとも、私が愛した女性に変わりはない。 だからこれからも私は君を愛し続ける、私の妻は君だけだ!」
「あ~あ、大勢の前で結婚式を挙げておいて言うことがコレだよ? 私達完全に2人の引き立て役だよね、小梅?」
「そうね。 でもこれが、1番良い形だと思う」
沙織と小梅がヤキモチを焼くフリをしながら、再会した2人を温かく見守る。
するとディザイアは、レイナのある変化に気付いた。
「おい、紅葉院。 お前……、俺以上の化け物になりかけているぞ」
「えっ!?」
思わず声をあげたのはコージ、父以上の化け物とはどんな存在になるのだろう?
ディザイアが見ているレイナの鑑定で、まず最初に変わったのはこれである。
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