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果たすべき義務と約束
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感極まったマリアから漏れる啼泣、それは美しい女神の歌声。
浴場の中に響く甘いメロディーはやがて大きなハーモニーとなり、ディザイアの心までも溶かした。
緩急をつけて彼女を責め立てると、次々と新たな音色が紡ぎ出される。
蕩けるような甘美な時間は、極上の快楽を彼にもたらした。
ディザイアが精を放つと、マリアは歓喜の声をあげてそれを受け止める。
そしてペニスをやさしく包み込むように締めあげ、次の射精を求めるのだ。
精巣が空になるまでマリアの膣内に精を放ったディザイアは、その場で眠っている彼女を両手で抱き上げ空いている寝室まで運ぶとベッドに寝かせる。
静かな寝息を立てているマリアの横顔を見ながら、妾との間に生まれた子とはいえ実の娘を生け贄に差し出す王に、彼は改めて殺意を抱いた。
(こんな佳い女を、俺に殺させようとするとは。 だが実の親が殺されるのをマリアは悲しむかもしれない、適当に言い訳して気取られないようにしよう)
そう結論づけたディザイアはマリアが目覚めるまで、隣で見守り続けたのである。
「マリアと白薔薇騎士団の者達は、この砦で待っているように」
「どうしてですか? 私達が一緒だと、なにか不都合なことでも?」
「……俺達と一緒に行軍すると、この国の住人に裏切ったと思われるかもしれない。 だが砦にいれば捕虜にされていたと言い訳も出来る、だから王達を国外に追放するまでおとなしく待っていろ」
マリアはディザイアの瞳を少しだけ見つめると、首を左右に振りながら彼の命令を断った。
「その命令には従えません。 騎士団の者達は残してもかまいませんが、私、私だけは付いていかなければなりません」
「それはなぜだ?」
質問の答えはわかっている、それでもディザイアは確かめずにはいられない。
マリアは、彼が予想したとおりの答えを返した。
「王の……家族の最期を見届けるのは、私の義務だからです」
「お前の義務か」
「ええ、あなたは私に父を殺すと言いました。 他の家族も同様だとも。 自分の子を王に据えるために私は父を、家族を死に追いやろうとしています。 その罪から目を背けるわけにはいきません」
気丈に答えるマリアを抱き寄せると、ディザイアは彼女にだけ聞こえる声で囁く。
「先に裏切ったのはお前の家族だ、お前に罪はない。 だがその罪を自ら背負うことでお前の心が救われるのであれば、俺は止めない。 それと謝っておくことがある」
抱き寄せた手を離しながら、ディザイアはマリアに頭を下げた。
「お前の子をこの国の跡継ぎにする約束は必ず果たす、だがお前を俺の妻にすることは出来ない。 俺の妻は1人だけ、他の女はすべて俺の牝犬としてのみ傍にいることが許される……」
クレア以外の女は性処理の道具にすぎない、彼はそうは言い切ったのである。
しかしそれでも構わないと、マリアは答えた。
「あなたの子を産めるのなら、牝犬でも構いません。 肉欲に溺れ、家族を捨てた私にとてもお似合いですわ」
「これからお前をどんな恥ずかしい目に遭わせても、構わないんだな?」
「はい、それがあなたの望みならば……」
すべてを受け入れると誓うマリアを守るため、ディザイアは国民の怒りや憎しみを自分に向けさせる方法を思いつく。
「ならば予定変更だ、白薔薇騎士団の者達にも協力してもらおう。 全員今すぐ鎧と下着を脱いで裸になれ、そしてこの首輪を付けるんだ」
彼が思いついた方法、それは……。
全裸の彼女達に首輪とロープをつけて、先頭で行軍させるというものだった。
「おい、あれを見ろ!」
「先頭を歩いているのは、マリア王女よ!」
「肌を人目に晒させるとはなんたる恥辱、神はこんな非道をいつまで許すのか!?」
マリア王女率いる討伐軍が、カリスト渓谷で魔王軍と戦い敗北。
王女と白薔薇騎士団は捕虜となり、裸で行軍させられるという辱めを受けている。
その報は、すぐに王都カリウスに届けられた。
慌てる大臣達を尻目に、王ジオルドは死に損ないの娘の始末に頭を悩ませる。
(役立たずの娘など、さっさと殺してしまえば良いものを……。だが今の状況はあの娘を殺すのにたいへん都合が良い、生き恥を晒させる訳にいかないと弓で射れば民の反感も起きない。 すぐに準備に取りかかろう)
苦悩の末の決断を演じながら、ジオルドはマリアの殺害を命じた。
「我が娘マリアに、これ以上の生き恥を晒させるわけにはいかない。 済まぬが大臣よ、弓の名手をすぐに集めマリアを楽にしてやってくれ」
大臣とその側近達が、慌ただしくマリア暗殺の準備を始める。
しかしその命令は城内の部下を通じて、郊外に住むとある老将の耳に入った。
「なに、王がマリア王女を弓で射殺すよう命じたと!? ジオルドの奴め、マリア様をそこまで疎んでおられたか……。 このままではマリア様の命が危ない、何とかしてお守りせねば」
「あなたがニルア将軍?」
「誰だ!?」
聞き覚えのない声にニルアが叫ぶと、天井裏からワーキャットの娘が降りてくる。
「私はメリナ。 ディザイア様の命により、マリア王女からの手紙を預かってきた」
「マリア様からワシ宛ての手紙だと?」
ニルアはメリナから手紙を受け取ると、中身を確かめた。
「これは……たしかにマリア様の筆跡。 するとマリア様は、自らあのような真似をされているというのか!?」
「信じる信じないはあなたの自由。 でもこの手紙の指示に従わない場合は、あなたの首を獲らないといけない」
感情の篭もっていない声で答えるメリナ、ニルアは手紙を懐にしまうと手紙の指示に従うことを約束する。
「メリナ殿。 マリア様にはニルアが承知したとお伝えください。 私にとって彼女は娘と同じ、娘を見殺しにするような父親などおりません」
手紙の返答をするニルアの心は既に、主君ジオルドを見限っていた……。
浴場の中に響く甘いメロディーはやがて大きなハーモニーとなり、ディザイアの心までも溶かした。
緩急をつけて彼女を責め立てると、次々と新たな音色が紡ぎ出される。
蕩けるような甘美な時間は、極上の快楽を彼にもたらした。
ディザイアが精を放つと、マリアは歓喜の声をあげてそれを受け止める。
そしてペニスをやさしく包み込むように締めあげ、次の射精を求めるのだ。
精巣が空になるまでマリアの膣内に精を放ったディザイアは、その場で眠っている彼女を両手で抱き上げ空いている寝室まで運ぶとベッドに寝かせる。
静かな寝息を立てているマリアの横顔を見ながら、妾との間に生まれた子とはいえ実の娘を生け贄に差し出す王に、彼は改めて殺意を抱いた。
(こんな佳い女を、俺に殺させようとするとは。 だが実の親が殺されるのをマリアは悲しむかもしれない、適当に言い訳して気取られないようにしよう)
そう結論づけたディザイアはマリアが目覚めるまで、隣で見守り続けたのである。
「マリアと白薔薇騎士団の者達は、この砦で待っているように」
「どうしてですか? 私達が一緒だと、なにか不都合なことでも?」
「……俺達と一緒に行軍すると、この国の住人に裏切ったと思われるかもしれない。 だが砦にいれば捕虜にされていたと言い訳も出来る、だから王達を国外に追放するまでおとなしく待っていろ」
マリアはディザイアの瞳を少しだけ見つめると、首を左右に振りながら彼の命令を断った。
「その命令には従えません。 騎士団の者達は残してもかまいませんが、私、私だけは付いていかなければなりません」
「それはなぜだ?」
質問の答えはわかっている、それでもディザイアは確かめずにはいられない。
マリアは、彼が予想したとおりの答えを返した。
「王の……家族の最期を見届けるのは、私の義務だからです」
「お前の義務か」
「ええ、あなたは私に父を殺すと言いました。 他の家族も同様だとも。 自分の子を王に据えるために私は父を、家族を死に追いやろうとしています。 その罪から目を背けるわけにはいきません」
気丈に答えるマリアを抱き寄せると、ディザイアは彼女にだけ聞こえる声で囁く。
「先に裏切ったのはお前の家族だ、お前に罪はない。 だがその罪を自ら背負うことでお前の心が救われるのであれば、俺は止めない。 それと謝っておくことがある」
抱き寄せた手を離しながら、ディザイアはマリアに頭を下げた。
「お前の子をこの国の跡継ぎにする約束は必ず果たす、だがお前を俺の妻にすることは出来ない。 俺の妻は1人だけ、他の女はすべて俺の牝犬としてのみ傍にいることが許される……」
クレア以外の女は性処理の道具にすぎない、彼はそうは言い切ったのである。
しかしそれでも構わないと、マリアは答えた。
「あなたの子を産めるのなら、牝犬でも構いません。 肉欲に溺れ、家族を捨てた私にとてもお似合いですわ」
「これからお前をどんな恥ずかしい目に遭わせても、構わないんだな?」
「はい、それがあなたの望みならば……」
すべてを受け入れると誓うマリアを守るため、ディザイアは国民の怒りや憎しみを自分に向けさせる方法を思いつく。
「ならば予定変更だ、白薔薇騎士団の者達にも協力してもらおう。 全員今すぐ鎧と下着を脱いで裸になれ、そしてこの首輪を付けるんだ」
彼が思いついた方法、それは……。
全裸の彼女達に首輪とロープをつけて、先頭で行軍させるというものだった。
「おい、あれを見ろ!」
「先頭を歩いているのは、マリア王女よ!」
「肌を人目に晒させるとはなんたる恥辱、神はこんな非道をいつまで許すのか!?」
マリア王女率いる討伐軍が、カリスト渓谷で魔王軍と戦い敗北。
王女と白薔薇騎士団は捕虜となり、裸で行軍させられるという辱めを受けている。
その報は、すぐに王都カリウスに届けられた。
慌てる大臣達を尻目に、王ジオルドは死に損ないの娘の始末に頭を悩ませる。
(役立たずの娘など、さっさと殺してしまえば良いものを……。だが今の状況はあの娘を殺すのにたいへん都合が良い、生き恥を晒させる訳にいかないと弓で射れば民の反感も起きない。 すぐに準備に取りかかろう)
苦悩の末の決断を演じながら、ジオルドはマリアの殺害を命じた。
「我が娘マリアに、これ以上の生き恥を晒させるわけにはいかない。 済まぬが大臣よ、弓の名手をすぐに集めマリアを楽にしてやってくれ」
大臣とその側近達が、慌ただしくマリア暗殺の準備を始める。
しかしその命令は城内の部下を通じて、郊外に住むとある老将の耳に入った。
「なに、王がマリア王女を弓で射殺すよう命じたと!? ジオルドの奴め、マリア様をそこまで疎んでおられたか……。 このままではマリア様の命が危ない、何とかしてお守りせねば」
「あなたがニルア将軍?」
「誰だ!?」
聞き覚えのない声にニルアが叫ぶと、天井裏からワーキャットの娘が降りてくる。
「私はメリナ。 ディザイア様の命により、マリア王女からの手紙を預かってきた」
「マリア様からワシ宛ての手紙だと?」
ニルアはメリナから手紙を受け取ると、中身を確かめた。
「これは……たしかにマリア様の筆跡。 するとマリア様は、自らあのような真似をされているというのか!?」
「信じる信じないはあなたの自由。 でもこの手紙の指示に従わない場合は、あなたの首を獲らないといけない」
感情の篭もっていない声で答えるメリナ、ニルアは手紙を懐にしまうと手紙の指示に従うことを約束する。
「メリナ殿。 マリア様にはニルアが承知したとお伝えください。 私にとって彼女は娘と同じ、娘を見殺しにするような父親などおりません」
手紙の返答をするニルアの心は既に、主君ジオルドを見限っていた……。
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