召喚に巻き込まれた冴えないおっさんのハーレムライフ?

いけお

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第16話 華憐の告白

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鑑定結果

邪族 軍隊ゴキブリ

隊列を組み、集団で襲い掛かる昆虫型邪族。雑食の上に食欲旺盛で通り過ぎた後には生物の痕跡すら残らない。生命力が非常に高い為、繁殖力も結果的に驚異的な物となっている。見つけた場合は速やかに全てを焼き払う事をお奨めする。




「う~ん・・・」

バタッ! 奈央が失神して倒れてしまう、確かにこんな巨大なゴキブリが群れで襲ってきたらこうなるのも仕方ないか。

「アクアだったかしら?この洞窟の奥には、人は居ないのね?」

涙目で王道にしがみ付いているアクアに華憐が質問する。

『はい、私以外何も居りませんでした。苔とか生えていたので水で洗い流していたら突然アレに襲われたので・・・』

俺達を出迎える為に掃除しようとしていたのかもしれないが、自分の居場所を教えていた様な物だ。そうなると、最奥の方では卵を産み付けられている可能性も有るな。

「華憐、お前の炎の魔法でここから先の全てを焼き払ってくれないか?アクアが居たと思われる場所よりも更に奥まで。このゴキブリが卵を産んでいたとすると、また繁殖されかねない」

『ヒィッ!?』

甲高い声を上げるとアクアまで気を失った。奈央にせよアクアにせよ、この手の奴が心底苦手だという点では似ているのかもしれない。

「確かにこいつらが洞窟の外に出たら、凄く厄介ね。炎蛇の群れよ、私の先に居る全てを焼き払いなさい!」

華憐が叫ぶと、両手の指から合計10匹の炎の蛇が現れた。蛇達は軍隊ゴキブリを飲み込む毎に少しずつその姿を大きくしていく、そして洞窟の奥の方まで進むと合体して1匹の大蛇となり洞窟の通路全体を飲み込みながら引き返してきて華憐の手前で姿を消した。

「とりあえずこれで大丈夫だと思うけど、1度洞窟の入り口まで戻って再度やっておくわ」

「ああ、頼む。そうすれば、さっきのナメクジみたいな連中も居なくなるから奈央達が怖がる事も無いしな」

「ふ~ん、随分と奈央に優しいのね。怖がりな女の子が好みなの?」

「違うって、しかし華憐お前はゴキブリやナメクジは平気なのか?」

「好きじゃないけど、気を失うほど苦手って訳じゃないわ。それよりも、そこで残念そうな顔をしている薫の方が気にならない?」

華憐に言われて振り返ると、薫が灰となったゴキブリ達を見て残念そうな顔をしていた。

「薫、ゴキブリが灰になったのがそんなに残念なのか?」

「いえ昔どこかの漢方の医学書で見た事が有るのですが、ある種類のゴキブリの雌は血行促進作用を持つ漢方薬として使用されているというのを思い出したので、もしかするとこのゴキブリを使えば王道さんのご病気が治るかもしれないと期待したのですが灰となってしまったので非常に残念です」

(ちょっと待て!俺にゴキブリを煎じた物でも飲ませようと考えていたのか!?)

「ねえ王道、薫の勘違いを何時気付かせてあげるの?早めに教えてあげないと知った時のあなたの評価がた落ちになるわよ」

「がた落ちになるのは早かろうが遅かろうが同じだ、しかも誤解を解く方法が俺がああなった理由を実践で教えるかしないとならないだろうが!?」

「実践・・・」

華憐が何やら考え始めた、真剣に考えている姿を近くでよく見ると案外可愛いな。

「ねえ、王道」

「ん、どうかしたか華憐?」

「薫の誤解を解く時に、私が相手でも実践出来る?」

頭をハンマーで殴られた様な衝撃を受けた、華憐は自分からこんな事を言うとは思っていなかったからだ。

「美雷が王道と一緒にお風呂に入った事を聞かされて、私も負けたくないと思ったの。だから・・・王道が望むなら私の全てを見せても良いわよ」

「華憐・・・」

見つめ合う、王道と華憐。2人の時間は背後からの声で終了する。

「2人共、それは宿に戻ってから好きなだけしてください。今は奈央さんとアクアを担いで洞窟から出るのが先決なのでは?」

薫の指摘で我に返った2人は、慌てて気を失っている2人を担ぐと洞窟の外に出た。その後、再度華憐が洞窟内を炎蛇で掃除してダンジョンに住みついた邪族は居なくなった。




山都に戻ると、村中が大騒ぎとなっていた。何でも6柱神の1人が磐咲の地に楽園を作ると言い出して住人に出て行く様に言ったらしい。更に数日後には突如邪神率いる邪族の軍勢が現れ磐咲の街を取り囲み住人は命からがら逃げ出したそうなのだ。ライア達は邪神と何か取引でもしたのだろうか?情報が少なすぎて王道は現時点の段階だと磐咲に戻るのは危険だと判断した。

空いてる宿を何とか見つけるとアクアの分も含めて5部屋借りる、しかし目覚めるまで1人で放置しておくのも危ないと思ったので奈央と同じ部屋にアクアの分のベッドを移動させ2人を寝かせた。交代で食事と風呂を済ませる事にした王道・華憐・薫の3人はまず薫が部屋を出て行く。

「さっきの話の続きだけど、私じゃ王道の恋愛対象にはなれないの?」

華憐が小声で王道に問い掛ける。

「王道がこの世界に残ると言うなら、私も残る。王道がハーレムを築きたいと言うのなら認めてあげる。だけど、せめて私を1人の女として見て欲しい」

華憐の目から涙が流れ始めた。

「好きなの王道、妾でも構わないからずっと傍に居させて」

王道は指先で華憐の涙を拭うと、抱き寄せながら優しく今の気持ちを伝える。

「華憐、こんな冴えない俺を好きだと言ってくれて凄く嬉しいよ。だけど、今は気持ちに応える事は出来ない。吊り橋効果と言ったら身も蓋も無いが、もしかしたらこの異世界に召喚されてからの極度の緊張を俺への恋愛感情と錯覚しているのかもしれないだろ?」

「そんな言い方は酷いわ、私のこの気持ちが偽物だとでも言いたいの?」

「そうじゃない、俺が華憐に抱いている気持ちの方が偽物かもしれないんだ」

「それじゃあ、王道も私の事が好きなの?」

「好きか嫌いかで言えば、好きだ。俺の彼女になって欲しいとも思う。だけど門音や奈央に美雷とみどり先生にも同じ位惹かれている。だから、君だけを選べた時は改めて俺の方から告白させてくれ」

「なら、もっと私の事しか考えられない様にする為に頑張らないといけないわね。今日の所はそれで十分よ、必ずあなたの口から好きだと言わせてみせるから」

2人は少しの間笑い合うとやがてお互いの顔を近付けて口付けを交わそうとしたが、氷で出来た剣が2人の唇が触れるのを防いでいた。

「それ以上、私の前で見せ付けるのでしたら口裂け男と口裂け女にしちゃいますよ?」

いつの間にか奈央が目覚めていた、心なしか部屋の気温も数度下がった様に感じる。

「華憐さん、私も王道さんを譲るつもりはありません。ですから、これは私からの宣戦布告です」

奈央はつかつかと王道に歩み寄るとそのままキスをしてきた。

「なっ!?」

重ね合わせた唇を離すと、奈央は勝ち誇った顔で華憐を見る。すると今度は華憐の心に火が付いた。

「私だって負けないんだから!」

華憐は強引に王道の唇を奪うと無理やり舌を入れてくる、王道の心を自分の物にしようと必死なのがその様子からも見て取れた。

「遅くなりました、どちらか目を覚ましましたか?」

食事と風呂を済ませて戻ってきた薫は交互に王道とキスを繰り返している華憐と奈央を見て、唖然とした。2人のキスの応酬はそれからアクアが目覚めるまで続くのだった・・・。
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