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第5話 ゴブリンの襲撃
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「おっ、見えてきた。あそこが轟の村の入り口だ」
王道達の目の前に木の柵で囲まれた小さな村が見えてきた、30件前後の家が1ヶ所に固まる様に密集しており村を邪族から守る意味でも極力広範囲に家を広げない工夫がされているみたいだ。
「宿でも在れば、今日はこの村で一晩泊まろうと思うのだけどどうかな?」
俺1人の判断で決める訳にもいかないから、全員の意見を聞く事にした。
「そうね、汗もかいているしお風呂にでも入ってゆっくり休みたいわ」
「きみ兄ちゃんと一緒なら、宿で無くても大丈夫だよ」
「あの女神が言っていたテントで寝るにしても男性と一緒ってのは・・・ねえ?」
「私は別にテントで一緒に寝たって平気だけど」
「その、テントというのはコテージみたいな物でしょうか?私見るのは初めてなもので・・・」
「あ、あの、王道さん!もし宿に泊まるとしてもお金は有るのですか?」
みどり先生の言葉で俺はこちらの世界の通貨を持っていない事に気が付く、途方にくれそうになったがライアから受け取った物の中に財布が有った事を思い出した。
「試しに実験してみるか」
自身の財布から1万円札を取り出して受け取った財布の中へ入れてみると、1万円札が吸い込まれる様にして消えた。そして再度財布の中に手を入れて探ってみると2枚の硬貨が入っていた。
「何だこれ?」
今まで見た事の無い模様と大きさの硬貨2枚に1万円札は両替されていた、どうやらこの硬貨1枚は5000円相当の価値が有るらしい。
「元の世界のお金も両替してくれるのは有り難いな、だけど俺の手持ちだけじゃ心許ないし・・・みんなに頼んでみるか」
王道は1度立ち止まると、ある提案をした。
「みんな聞いてくれ、さっき試してみたんだがライアから受け取った財布は元居た世界のお金もこちらの通貨に両替してくれる物だった。そこで1つ相談なんだが、この旅が終わるまでみんなが今持っているお金を一時この財布に入れて貰えないだろうか?宿に泊まるにせよ、飯を食べるにせよお金が必要になる。俺の変換で何か商売になりそうな物に変えられれば越した事は無いが、それまでの間の生活費として協力して貰えないか?」
ここで王道の予想だにしなかった事態が起きた、他のみんなはカードでの生活で現金を持ち歩く暮らしをしていなかったのだ!
「あちゃ~!!現金を持ち歩いているのは俺だけか!?」
「ごめんね、きみ兄ちゃん。こうなるのが分かっていれば義父さんから現金でお小遣いを貰ってきたんだけど」
「ねえ、王道。このカードはキャッシング機能も付いているけど入れた場合どうなるのかしら?」
そう言うと、華憐が何やら黒光りするカードを取り出して俺に見せてきた。
「おい、それってもしかしてブラックカードって奴じゃないのか!?」
「詳しい名前は知らないけど、確か1日に500万までならすぐに引き出せる筈よ」
「なんちゅうカードを持ち歩いているんだお前は・・・」
「物は試しよ、入れてみるわね」
財布の中に華憐がカードを入れてみた、すると
[1日最大金貨50枚まで貸し出し可能です、何枚引き出しますか?]
「やった、成功よ!これでお金の心配が無くなったわ」
「だけどこれって、元の世界でカードを止められたら使えなくなるんじゃないのか?」
「その点は心配ない、このカードは私しか使えないから請求書が家に届けば私が無事だという証明にもなるわ」
「もしかして、そこまで見越してカードを入れたのか!?」
「どう、これで私と交際する気になった?」
しかし、華憐も後日家に届いた請求書の利用先が異世界だと正直に書かれているとは知る由も無く家族をより心配させる結果となっていた。それはさておき食料とお金の問題が解決したので、残るは水だけとなった訳だがその問題も
「私が水の魔法で出せば良いだけでは?」
っと言う奈央の言葉で瞬時に解決した、奈央は6人の中で1番冷静沈着なので慌ててばかりの俺は彼女の爪の垢を飲んでみたい気持ちにさせられた。こちらの世界に来て最初の晩は宿でのんびりと過ごそうという結論になり、村の入り口に回ると俺達は中に入ってみた。ちなみに華憐には生存報告も兼ねて1日の限度額一杯まで引き出して貰っている。カードがもしも止められたとしても、500万円分有ればしばらくは生活出来るからだ。
「村の入り口に誰も居ないなんて、無用心だな」
最初に入ってみて、思ったのがこれだった。ライアの話では邪族に襲われる事も有るって話だし木の柵で村を囲っているのに周辺を警戒する者が居ないのは変だ。
「お~い!手の空いている者は急いで来てくれ、急がないともうすぐゴブリン達が襲ってくるぞ~!!」
俺達のちょうど反対側の方から男の大きい声がした、どうやらこの村はもうすぐゴブリンの襲撃を受けるらしい。
「村人に何か有ったら大変だ、みんな急ごう!」
「待ってください、私と美雷さん薫さんの3人はこちらに残ります」
急いで向かおうとすると、急に奈央がそんな事を言い出した。
「向こう側からゴブリンが来るんだぞ、向こうに行かなくてどうするんだ!?」
「だからこそ、別働隊が居た場合を想定して残ると言っているんです」
「あ、そうなの?」
「はあっこれだから男は単純なのよ、いいですか?何時誰がゴブリンが正面から全員で押し寄せると決めたのです?決まってないのなら、別働隊だって居てもおかしくは無いでしょ!?それに薫さんの浄化魔法で効果が無くても周囲を照らす事が出来るので、夜襲にも対応出来ます」
「凄い、そこまで考えが回るなんて頭良いな。それに華憐と同じ剣道部でスポーツも出来る様だし、オマケにポニーテールの似合う美人とくれば付き合いたいって言ってくる男も多いんじゃないのか?」
「生憎と女子高なもので、男に言い寄られる事は滅多に御座いません。それにそういう男ほど頭の軽そうな奴ばかりだから正直ウンザリしているわ」
本当に嫌そうな顔をしている、余程チャラいのが来たのだろう。
「同じ男から何度も告白されたりしなかったんだ?」
「今まで言い寄ってきた男は1度断れば来ませんでしたよ、『お高く気取りやがって、このアマ』なんて捨て台詞を吐くのが関の山です」
「そうなんだ、しかし勿体無いな。俺だったら君みたいな娘と本気で付き合おうと思ったら何度でも通うのに」
「えっ!?」
「だってそうだろう?1度断られた位で諦められるのなら、それは本気で付き合いたいと思ってない証拠だよ。だから君の言っている事は正しい、だけどいずれは君の目に適う人が現れる筈だからその時はもう少しだけ心を開く様にしてあげなよ」
「わ、分かったわよ!ほら、早く行ってあげないとゴブリンが来ちゃいますよ」
奈央に急かされるので、俺は華憐・門音・みどり先生を連れて応援に向かう事にした。去り際に奈央の顔が心なしか赤く見えたのは多分気のせいだろう。
俺達が到着すると、既に反対側の村の入り口では村人とゴブリン達の間で戦いが始まっていた。ゴブリン達は大人よりも一回り小さいが動きが素早く数も多いので苦戦している様だった。
「俺は戦う事が出来ないから華憐と門音は前に出て、ゴブリン達の排除を頼む。それからみどり先生は負傷した村人達を癒してあげてくれないか?」
「「わかった!」」
「はい」
3人は即座に分かれると、華憐と門音は村人達の間をすり抜けて前に割り込み片っ端からゴブリンを斬り捨てた。みどり先生も負傷した村人達のケガを癒しているが幸い死んでいる人は居なかった。俺も何か手伝えないか鑑定でゴブリンを見る事にした。
鑑定結果
邪族 ゴブリン
小さな村や集落を襲い、若い女性や食料を奪っていく最下級の人型邪族。攫われた女性はゴブリン達の母体にされてしまうので注意が必要。
(お決まりかもしれないけど、女性を攫って苗床にするのか。ならば、排除するのに何の問題は無いな)
ついでにゴブリンの死骸は何かに変換可能なのか、再度鑑定してみた。
鑑定結果
アイテム ゴブリンの死骸
煮ても焼いても食えない、ゴブリンの死骸。邪魔なので処分して貰えるのなら銅貨1枚と変換出来ます。
(邪魔だから変換で処分してくれって、この鑑定のスキルの言葉遣いはライアに少し似ているかも)
そんな事を考えていると、華憐と門音が既にゴブリンの半数近くを既に倒し終えていた。俺に気付いた村人の1人が話しかけてくる。
「助勢に入ってくれて助かった!あんた達は一体何者だ!?」
「あ~俺達っていうか彼女達は6柱神に召喚されて、邪族からこの世界を救う様に依頼された者だ」
「それじゃあ、あんたも一緒に召喚された仲間でいいんだな!?」
「いや・・・俺は彼女達が召喚されるのに巻き込まれただけだ」
「はあっ!?」
そんなやり取りをしていると、ゴブリン達のリーダー格と思われる大人とほぼ同じ大きさの奴が姿を見せたので改めて鑑定してみる。
鑑定結果
邪族 ゴブリンリーダー
ゴブリン数十匹を従える下級人型邪族。それでも所詮はゴブリンなのでザコです。
(何だか同情してきた、鑑定にザコ呼ばわりされるのは気の毒だ)
「どうやら強い助っ人を呼んであったみたいだが、それもここまでだ」
「あいつ、喋れるのか!?」
「まさか我らが陽動で本隊は反対側に回り込んでいたとは思わなかっただろう?今頃、本隊が村の中を自由に暴れている筈だ。お前らがやってきた事は無駄なあがきだったのだよ、ハハハハハ!」
「・・・・ごめん、仲間の1人が別働隊の存在に早々と気付いて待ち構えてる」
「なんだと!?」
驚くゴブリンリーダーの背後にいつの間にか門音が回り込むと大鎌で真っ二つに切り裂いた。
「あなた、煩い。きみ兄ちゃんの顔が見れないからそこで寝てなさい」
門音の奴、俺の顔を見ながら今まで戦っていたのか!?華憐も何だか気だるそうにしているし、ゴブリンの連中が弱すぎるって事なのか?スライムと戦った時よりも雑な剣の振り方を華憐がしているのであながち間違いでは無いかもしれない。それから5分もしないで陽動と言っていたゴブリン達は殲滅された。
「それじゃあ、反対側に残している奈央達が心配だからすぐに向かおう」
「のんびりと向かって大丈夫ですよ、奈央が本気を出したら私よりも強いのだから」
「まじで?」
「それにきみ兄ちゃん、薫さんも日舞だけじゃなくて古武術も習っているみたいだからかなりの猛者だと思うよ?」
ただ器が大きいだけじゃなくて、それなりに戦える技量を持っている人をしっかりと選んでいた訳か。それならば、門音も何か身に付けているって事か?そう思って門音の顔を見たら
「えへへ、それは内緒だよ♪」
と悪戯っぽく笑いながら、奈央達の方へ向かっていく。今日の所は確かめるのを諦めて俺は門音の後を追いかけて村の反対側に移動した。そして、移動した先で目にした物は山の様に積まれたゴブリン達の死骸だった・・・。
「あら遅かったのね、私の水の魔法で膝下まで沈めて美雷の拳甲で感電死させたら一瞬で終わったわ」
(恐ろしい始末の仕方を考えたな奈央・・・)
ともあれ、轟の村を襲撃しようとしていたゴブリン達は華憐達の手で全滅した。残された大量の死骸は王道によって銅貨100枚近くに変換されると、最初の晩の宿代として消えてゆくのだった。
王道達の目の前に木の柵で囲まれた小さな村が見えてきた、30件前後の家が1ヶ所に固まる様に密集しており村を邪族から守る意味でも極力広範囲に家を広げない工夫がされているみたいだ。
「宿でも在れば、今日はこの村で一晩泊まろうと思うのだけどどうかな?」
俺1人の判断で決める訳にもいかないから、全員の意見を聞く事にした。
「そうね、汗もかいているしお風呂にでも入ってゆっくり休みたいわ」
「きみ兄ちゃんと一緒なら、宿で無くても大丈夫だよ」
「あの女神が言っていたテントで寝るにしても男性と一緒ってのは・・・ねえ?」
「私は別にテントで一緒に寝たって平気だけど」
「その、テントというのはコテージみたいな物でしょうか?私見るのは初めてなもので・・・」
「あ、あの、王道さん!もし宿に泊まるとしてもお金は有るのですか?」
みどり先生の言葉で俺はこちらの世界の通貨を持っていない事に気が付く、途方にくれそうになったがライアから受け取った物の中に財布が有った事を思い出した。
「試しに実験してみるか」
自身の財布から1万円札を取り出して受け取った財布の中へ入れてみると、1万円札が吸い込まれる様にして消えた。そして再度財布の中に手を入れて探ってみると2枚の硬貨が入っていた。
「何だこれ?」
今まで見た事の無い模様と大きさの硬貨2枚に1万円札は両替されていた、どうやらこの硬貨1枚は5000円相当の価値が有るらしい。
「元の世界のお金も両替してくれるのは有り難いな、だけど俺の手持ちだけじゃ心許ないし・・・みんなに頼んでみるか」
王道は1度立ち止まると、ある提案をした。
「みんな聞いてくれ、さっき試してみたんだがライアから受け取った財布は元居た世界のお金もこちらの通貨に両替してくれる物だった。そこで1つ相談なんだが、この旅が終わるまでみんなが今持っているお金を一時この財布に入れて貰えないだろうか?宿に泊まるにせよ、飯を食べるにせよお金が必要になる。俺の変換で何か商売になりそうな物に変えられれば越した事は無いが、それまでの間の生活費として協力して貰えないか?」
ここで王道の予想だにしなかった事態が起きた、他のみんなはカードでの生活で現金を持ち歩く暮らしをしていなかったのだ!
「あちゃ~!!現金を持ち歩いているのは俺だけか!?」
「ごめんね、きみ兄ちゃん。こうなるのが分かっていれば義父さんから現金でお小遣いを貰ってきたんだけど」
「ねえ、王道。このカードはキャッシング機能も付いているけど入れた場合どうなるのかしら?」
そう言うと、華憐が何やら黒光りするカードを取り出して俺に見せてきた。
「おい、それってもしかしてブラックカードって奴じゃないのか!?」
「詳しい名前は知らないけど、確か1日に500万までならすぐに引き出せる筈よ」
「なんちゅうカードを持ち歩いているんだお前は・・・」
「物は試しよ、入れてみるわね」
財布の中に華憐がカードを入れてみた、すると
[1日最大金貨50枚まで貸し出し可能です、何枚引き出しますか?]
「やった、成功よ!これでお金の心配が無くなったわ」
「だけどこれって、元の世界でカードを止められたら使えなくなるんじゃないのか?」
「その点は心配ない、このカードは私しか使えないから請求書が家に届けば私が無事だという証明にもなるわ」
「もしかして、そこまで見越してカードを入れたのか!?」
「どう、これで私と交際する気になった?」
しかし、華憐も後日家に届いた請求書の利用先が異世界だと正直に書かれているとは知る由も無く家族をより心配させる結果となっていた。それはさておき食料とお金の問題が解決したので、残るは水だけとなった訳だがその問題も
「私が水の魔法で出せば良いだけでは?」
っと言う奈央の言葉で瞬時に解決した、奈央は6人の中で1番冷静沈着なので慌ててばかりの俺は彼女の爪の垢を飲んでみたい気持ちにさせられた。こちらの世界に来て最初の晩は宿でのんびりと過ごそうという結論になり、村の入り口に回ると俺達は中に入ってみた。ちなみに華憐には生存報告も兼ねて1日の限度額一杯まで引き出して貰っている。カードがもしも止められたとしても、500万円分有ればしばらくは生活出来るからだ。
「村の入り口に誰も居ないなんて、無用心だな」
最初に入ってみて、思ったのがこれだった。ライアの話では邪族に襲われる事も有るって話だし木の柵で村を囲っているのに周辺を警戒する者が居ないのは変だ。
「お~い!手の空いている者は急いで来てくれ、急がないともうすぐゴブリン達が襲ってくるぞ~!!」
俺達のちょうど反対側の方から男の大きい声がした、どうやらこの村はもうすぐゴブリンの襲撃を受けるらしい。
「村人に何か有ったら大変だ、みんな急ごう!」
「待ってください、私と美雷さん薫さんの3人はこちらに残ります」
急いで向かおうとすると、急に奈央がそんな事を言い出した。
「向こう側からゴブリンが来るんだぞ、向こうに行かなくてどうするんだ!?」
「だからこそ、別働隊が居た場合を想定して残ると言っているんです」
「あ、そうなの?」
「はあっこれだから男は単純なのよ、いいですか?何時誰がゴブリンが正面から全員で押し寄せると決めたのです?決まってないのなら、別働隊だって居てもおかしくは無いでしょ!?それに薫さんの浄化魔法で効果が無くても周囲を照らす事が出来るので、夜襲にも対応出来ます」
「凄い、そこまで考えが回るなんて頭良いな。それに華憐と同じ剣道部でスポーツも出来る様だし、オマケにポニーテールの似合う美人とくれば付き合いたいって言ってくる男も多いんじゃないのか?」
「生憎と女子高なもので、男に言い寄られる事は滅多に御座いません。それにそういう男ほど頭の軽そうな奴ばかりだから正直ウンザリしているわ」
本当に嫌そうな顔をしている、余程チャラいのが来たのだろう。
「同じ男から何度も告白されたりしなかったんだ?」
「今まで言い寄ってきた男は1度断れば来ませんでしたよ、『お高く気取りやがって、このアマ』なんて捨て台詞を吐くのが関の山です」
「そうなんだ、しかし勿体無いな。俺だったら君みたいな娘と本気で付き合おうと思ったら何度でも通うのに」
「えっ!?」
「だってそうだろう?1度断られた位で諦められるのなら、それは本気で付き合いたいと思ってない証拠だよ。だから君の言っている事は正しい、だけどいずれは君の目に適う人が現れる筈だからその時はもう少しだけ心を開く様にしてあげなよ」
「わ、分かったわよ!ほら、早く行ってあげないとゴブリンが来ちゃいますよ」
奈央に急かされるので、俺は華憐・門音・みどり先生を連れて応援に向かう事にした。去り際に奈央の顔が心なしか赤く見えたのは多分気のせいだろう。
俺達が到着すると、既に反対側の村の入り口では村人とゴブリン達の間で戦いが始まっていた。ゴブリン達は大人よりも一回り小さいが動きが素早く数も多いので苦戦している様だった。
「俺は戦う事が出来ないから華憐と門音は前に出て、ゴブリン達の排除を頼む。それからみどり先生は負傷した村人達を癒してあげてくれないか?」
「「わかった!」」
「はい」
3人は即座に分かれると、華憐と門音は村人達の間をすり抜けて前に割り込み片っ端からゴブリンを斬り捨てた。みどり先生も負傷した村人達のケガを癒しているが幸い死んでいる人は居なかった。俺も何か手伝えないか鑑定でゴブリンを見る事にした。
鑑定結果
邪族 ゴブリン
小さな村や集落を襲い、若い女性や食料を奪っていく最下級の人型邪族。攫われた女性はゴブリン達の母体にされてしまうので注意が必要。
(お決まりかもしれないけど、女性を攫って苗床にするのか。ならば、排除するのに何の問題は無いな)
ついでにゴブリンの死骸は何かに変換可能なのか、再度鑑定してみた。
鑑定結果
アイテム ゴブリンの死骸
煮ても焼いても食えない、ゴブリンの死骸。邪魔なので処分して貰えるのなら銅貨1枚と変換出来ます。
(邪魔だから変換で処分してくれって、この鑑定のスキルの言葉遣いはライアに少し似ているかも)
そんな事を考えていると、華憐と門音が既にゴブリンの半数近くを既に倒し終えていた。俺に気付いた村人の1人が話しかけてくる。
「助勢に入ってくれて助かった!あんた達は一体何者だ!?」
「あ~俺達っていうか彼女達は6柱神に召喚されて、邪族からこの世界を救う様に依頼された者だ」
「それじゃあ、あんたも一緒に召喚された仲間でいいんだな!?」
「いや・・・俺は彼女達が召喚されるのに巻き込まれただけだ」
「はあっ!?」
そんなやり取りをしていると、ゴブリン達のリーダー格と思われる大人とほぼ同じ大きさの奴が姿を見せたので改めて鑑定してみる。
鑑定結果
邪族 ゴブリンリーダー
ゴブリン数十匹を従える下級人型邪族。それでも所詮はゴブリンなのでザコです。
(何だか同情してきた、鑑定にザコ呼ばわりされるのは気の毒だ)
「どうやら強い助っ人を呼んであったみたいだが、それもここまでだ」
「あいつ、喋れるのか!?」
「まさか我らが陽動で本隊は反対側に回り込んでいたとは思わなかっただろう?今頃、本隊が村の中を自由に暴れている筈だ。お前らがやってきた事は無駄なあがきだったのだよ、ハハハハハ!」
「・・・・ごめん、仲間の1人が別働隊の存在に早々と気付いて待ち構えてる」
「なんだと!?」
驚くゴブリンリーダーの背後にいつの間にか門音が回り込むと大鎌で真っ二つに切り裂いた。
「あなた、煩い。きみ兄ちゃんの顔が見れないからそこで寝てなさい」
門音の奴、俺の顔を見ながら今まで戦っていたのか!?華憐も何だか気だるそうにしているし、ゴブリンの連中が弱すぎるって事なのか?スライムと戦った時よりも雑な剣の振り方を華憐がしているのであながち間違いでは無いかもしれない。それから5分もしないで陽動と言っていたゴブリン達は殲滅された。
「それじゃあ、反対側に残している奈央達が心配だからすぐに向かおう」
「のんびりと向かって大丈夫ですよ、奈央が本気を出したら私よりも強いのだから」
「まじで?」
「それにきみ兄ちゃん、薫さんも日舞だけじゃなくて古武術も習っているみたいだからかなりの猛者だと思うよ?」
ただ器が大きいだけじゃなくて、それなりに戦える技量を持っている人をしっかりと選んでいた訳か。それならば、門音も何か身に付けているって事か?そう思って門音の顔を見たら
「えへへ、それは内緒だよ♪」
と悪戯っぽく笑いながら、奈央達の方へ向かっていく。今日の所は確かめるのを諦めて俺は門音の後を追いかけて村の反対側に移動した。そして、移動した先で目にした物は山の様に積まれたゴブリン達の死骸だった・・・。
「あら遅かったのね、私の水の魔法で膝下まで沈めて美雷の拳甲で感電死させたら一瞬で終わったわ」
(恐ろしい始末の仕方を考えたな奈央・・・)
ともあれ、轟の村を襲撃しようとしていたゴブリン達は華憐達の手で全滅した。残された大量の死骸は王道によって銅貨100枚近くに変換されると、最初の晩の宿代として消えてゆくのだった。
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