魔術師見習い、ニッポンの侍の末裔を召喚する(?)

三毛猫 ポチ

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アツモリ、強敵と相まみえる

第92話 憎らしいほどまでの美しい笑い

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 突然、甲高い女の笑い声が響いたから、セレナ王女だけでなく敦盛たちも声がした方をむいた。
 甲高い笑い声をだしていたのは・・・メビウスだ!

「子爵が死んだ事で『支配の指輪ドミネーションリング』は力を失った!大魔導士センチュリーは『支配の指輪ドミネーションリング』が乱用される事を恐れ、指輪の使い手は生涯一人だけという制約を指輪に与えた。即ち、子爵が死んだ事で、このあたしは『支配の指輪ドミネーションリング』の支配から解放された!」

 そう叫ぶとメビウスは「アーハッハッハッハッッハッハッハッハッー!」と再び甲高い声で笑ったが、その笑い声に掻き消されるかのように子爵の左手に嵌めてあった『支配の指輪ドミネーションリング』の宝玉が『パリーン!』と砕け散った。

「改めて名乗らせてもらうぞ!あたしの名はメビウス、見ての通り破門魔術師だ。元ヒューゴボス帝国魔術師協会所属の1級魔術師とだけ言っておこう」
 ド派手な女、メビウスは自分の名を名乗るとニヤリとしたが、その憎らしいほどまでの美しい笑いは、逆に敦盛たちを凍り付かせるには十分だ。

「貴様がいなければ、レパード子爵は死霊魔術ネクロマンシーに手を出さなかった!全ての元凶は貴様だ!!」

 セレナ王女は怒りの表情でメビウスに向けて聖剣を突き出したが、そのメビウスはセレナ王女の視線を平然と受け止めてニヤリとした。
「フン!貴様のような微温湯ぬるまゆに浸かり切った王侯貴族に何が分かる!あたしはこの破門印のせいで表を歩けなくなった!この屈辱、この惨めさをお前に味合わせたい気分だ!どこへ行っても白い目で見られるあたしを「綺麗だ」と言ってくれたのは子爵だけだ!こんなあたしを抱いてくれたのは子爵だけだ!」
「だからといって、いらぬ知恵を与えた貴様を許す訳にはいかない!」
「どうとでも言え!あたしは子爵が望んだ物を与えたに過ぎない!あるじが望む事をした魔術師が裁かれるのはおかしい!!それを言うならアプリオのクソジジイに『世界の部屋』復活を進言したヒューゴボス帝国の宮廷魔術師も、グロリア大公の威光を盾にして贅沢三昧の大公のお抱え魔術師どもも、全員破門されるか処刑されるかのどっちかしかないのに、実際にはのうのうと生きている!これは不公平だ!!」
「所詮は自分が尊い存在だと自惚れた成れの果てが波紋印だというのを忘れて、ただ単にバカになり下がったオバサンだから、風邪を引きそうな恰好で街を平然と歩けるんだというのをいい加減に自覚しろ!」
「人間を恐怖のどん底に叩き落としたアプリオのクソジジイの孫に言われると片腹痛い!貴様もアプリオと同罪だ!そんな奴にあたしの事をとやかく言われる筋合いは無い!」
「貴様は子爵に会う前から禁忌の術に手を出してた!そんな奴が他人の事をとやかく言う資格はない!」
 そう叫ぶとセレナ王女は剣を振りかざして駆け出したが、たった1歩で倒れ込んだから、慌てて敦盛たちがセレナ王女の所へ駆けていって、ココアと敦盛がセレナ王女を抱え込んで壁際へ下がらせたくらいだ。

 それを見たメビウスはニヤリとした。
「フン!あたしをオバサン呼ばわりした罰があったのだ!エウロパ大陸最高の知性と美貌の持ち主と称えられた、このメビウスをオバサン呼ばわりする奴など、亡骸ゾンビにするのも惜しい!魂ごと地獄へ突き落してやるわよ!!」
 メビウスはニヤリとしてゾンビたちに「やれ!」と命じたから、ゾンビたちがゆっくりと剣を構えた!だが、全然攻撃する気配がない。

「・・・アツモリさん、シルフィさん、お願いがあります」
 ココアは小声で敦盛とシルフィに話し掛けから二人ともココアの顔を見たが、その表情は何かを決意した顔だ。
「・・・セレナ王女にこれ以上剣を振るわせるのは無理です。ですが、亡骸ゾンビたちが攻撃命令を受けても攻撃しないのは、恐らく亡骸ゾンビたちの前に魔法の罠マジックトラップがあるからです。レパード子爵は全ての魔法の罠マジックトラップを解除しろと言ってましたが、階段周辺だけはトラップを解除しなかったと見るべきです。亡骸ゾンビが一切動かないのは、魔法でも物理的攻撃でも作動するから、ある一定以上に近付くなと予め指示されているからとしか思えません。どこかのタイミングでオバサンがトラップを解除しますから、そうなれば、あちら側もこっちも攻撃できます。今から3分、あの亡骸ゾンビたちの攻撃から、何が何でもわたしとセレナ王女を守って下さい」
「守る?ココアを?」
「そうです。わたしも切り札を出します。そうすれば、後はわたしが決着を付けます」
 そう言った時のココアの目は悲壮感漂う物であったが、どちらにせよ、この20体以上もの魔法騎士を片付けないと全て終わりだ。敦盛は黙って頷くと右手で大蛇丸おろちまるを、左手で草薙剣くさなぎのつるぎを構えたし、シルフィも無言で敦盛の左に立ち、レイピアを構えながら何かの言葉をつぶやき始めた。
 そのココアは肩で息をして殆どうずくまっているセレナ王女を床に降ろすと、両膝を床について両手を胸の前で合わせた。それはまるで神に祈りを捧げているかのようだ。

 その時、メビウスが何事かの言葉を言ったかと思ったら亡骸ゾンビたちが一斉に動き出した!

 後方の亡骸ゾンビたちが一斉に呪文の詠唱を始め、前方の亡骸ゾンビたちは剣を構えて突っ込んできた。

「我が名はシルフィ!『世界樹の剣ユグドラシルソード』よ、その真の姿を現せ!」

 シルフィが高々と声を上げた瞬間、右手に持っていた剣が緑色に光った!
 剣の姿が美しい娘に変わり、シルフィの前に現れた。右手には褐色の剣を持ち、その長い髪は緑色をしており、あたかも世界樹が乙女の姿になったかのような瑞々しさだ。
「ドリュアスよ!盟約に従い、我らを守れ!」
 シルフィはそう命じると自身は弓矢を手に取った。その視線の先にあったのはメビウス!シルフィは一撃で勝負をつけるつもりだ。
 魔法騎士が2体同時にドリュアスに斬りかかった。ドリュアスは1体の魔法騎士の攻撃を剣で受けたが、もう1体の攻撃を避ける事が出来ず、剣がドリュアスの脇腹に深く食い込んだ。
 だが、ドリュアスはその攻撃を受けても表情1つ変えない!それどころか、打ち合っていた魔法騎士を圧倒し始め、あっという間に剣を弾き返し、一撃の元に両断したかと思ったら、自分に攻撃をしていた魔法騎士の右腕を切り落とした。
 右腕を切り落とされた魔法騎士は、腰に吊るしていた短杖ワンドを持つと呪文を唱えた。その呪文は『火球ファイヤーボール』だ。詠唱時間が短いからドリュアスを直撃したが、その呪文を受けてもドリュアスは平然としていた。その時、ドリュアスの左手から赤い火の玉が現れ魔法騎士を攻撃した。どう考えてもドリュアスが『火球ファイヤーボール』をコピー攻撃したとしか思えず、しかも威力は倍以上だ!たちまち魔法騎士は炎に包まれ、その動きを止めた!
 シルフィはドリュアスの動きを見て『ニヤリ』としたが、同時に弓をつがえてメビウスに狙いを定めた。メビウスは高見の見物を決め込んでいるのか笑みを浮かべているほどだ。
 シルフィはメビウスの眉間に狙いを定め、矢を放った!
 そのままメビウスの眉間に突き刺さるかと思った瞬間、いきなり1体の剣士が現れ、剣で矢を弾き飛ばした!その剣士を見た瞬間、シルフィは目を疑った!それは全身を血だらけにした初老の男性、そう、レパード子爵だ!でも、血だらけの人間が動くなど普通に考えたら有り得ない!魂はセレナ王女の聖剣で神の元へ旅立ったが、黒水晶の力でレパード子爵の肉体が亡骸ゾンビとなって復活してメビウスの盾になったとしか思えないのだ!シルフィは「チッ!」と舌打ちしたが、自身の力がどんどん奪われていくから、2撃目は諦めるしかなかった。シルフィはポケットから『神の酒』を取り出すと一気に飲んで、その空き瓶を後ろに放り投げた。
 ドリュアスはなおもシルフィの前で3体の魔法騎士とやり合っていたが、その攻撃力は一向に衰えるどころか、攻撃を受けるたびに威力を増していく!呪文攻撃を受けても倍返しのコピー攻撃をするから、さすがの魔法騎士も攻めあぐんでいる。

 敦盛はもっと凄まじい!
 常に2体、もしくは3体もの魔法騎士と同時にやり合っている!腕を失っても、首を跳ね飛ばされても不死生物アンデッドゆえに攻撃を止めないから、足を切り落とすしかないのだが、口が残ると精霊魔法が飛んでくる。光の精霊ウィルオーウィスプが体当たりすると電撃に似たような衝撃が走り、闇の精霊シェードの精神攻撃を受けると体力ではなく精神力を持って行かれる。敦盛は首を落とすのではなく口を切り裂くというピンポイント攻撃をせざるを得ず、その間に魔法騎士の剣のダメージを受けて、もう血塗れだ。
 でも、敦盛はココアに約束した。全部の敵を斬ると。しかも、ココアは敦盛を信じて何かの切り札を使おうとしている。それが何なのかは分からないが、ココアの目は嘘を言ってるようには見えなかった。ならば、ココアが自分を信じてくれている以上、自分もその期待に応える必要があるのだ。苦しいなどと言ってられないのだ。

 その時、シルフィが両肩で「ゼー、ゼー」と大きく息をしながら片膝をついた!それと同時にドリュアスが消えて『世界樹の剣ユグドラシルソード』に戻ってしまった。ドリュアスの無敵の秘密、それは使い手であるシルフィがその魔法力でドリュアスのダメージを肩代わりし、その魔法力でドリュアスの倍返し攻撃をしていたからに他ならない。シルフィが『神の酒』を飲み続けていたのは洪水の如く使う魔法力を補っていたに他ならないのだが、それを使い切ったからシルフィも限界に達したのだ!
 それとほぼ同時に敦盛も血塗れになって片膝をついた!こちらも両肩を激しく上下に揺すっている。
 敦盛とシルフィに魔法騎士が殺到した!!

「眠れぬ者たちよ!我が言葉に耳を傾け、安息の地に赴け!」
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