雑文エッセイ

越川千太郎

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17、十二進法

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日々のお金の勘定で、英国人の脳みそにしみ込んだ十二進法を洗いおとすのは容易ではないらしこんな話がある。ロンドンのある日本商社員がミニの英国人秘書にきいた。「百の半分はいくら?」 「五十でしょ」「じゃ、五十の半分は?」 「二十六かな」。嘘のようだけれど、つまり十二進法の国の人々にとって「六」という数には、つねに「半分」というニュアンスがあるからだ。
いらいらして英国人はいってるそうだ。「そんなに十進法がよけりゃ、ついでに一年を十ヶ月にしろ」などと。 たしかに私たちは「十二」という数と縁が深い。 一年十二ヶ月。 一日二十四時間。一ダース十二個。キリストに十二使徒があり、東洋の干支も十二支だ。
英国政府は長い切り替え準備期間をおき、全家庭に「十進法の手引き」を配った。 「お年寄りは、むずかしかったら子どもに聞きなさい……」。日本で尺貫法をメートル法にかえた時の話とちょっと似ている。 十何年後のいまでも、時々おとなは子どもにたずねる。
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