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7.本当に役立たずだった(ルシア視点)
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カイオが王都を出ていって二時間ほどが経ったけれど、カイオはまだ帰ってこない。窓の外は薄暗くなってきていた。
今日初めて会ったカイオは、口が悪くて少し意地悪だ。でも、根は優しい人なのだと思う。
私に聖なる力が残っていなければ、ただの田舎娘の私と出会うことなどなかった誇り高き竜騎士。たった二十年しか生きていない彼の人生の殆どは、厳しい訓練に費やされた筈だ。
この国の人々を守るために、巨大な竜に乗り命をかけて魔物と戦うことを自ら選んだ強い人。
私たちの聖なる力が国の最果てに集められて、人々の生活に必要な白魔素を生成するとともに魔物から国を守っているのは知っている。そして、時々聖なる力が薄くなったところを突き破って魔物が内部に侵入して、竜騎士がそんな魔物を討伐していることも。
どうか誰一人欠けることなく無事に帰ってきてと願わずにはいられない。
せめて少しでもカイオの役に立ちたくて、私は夕食の用意をしようと思った。絶対にお腹を空かせて帰ってくる筈だから。
パンはたくさん買っていた。肉と野菜、それに卵もある。今まで調理などしたこともなかったけれど、簡単な夕食ぐらいなら作ることができると思った。
しかし、台所では戸惑うばかりだった。火の付け方もわからない。水も出せない。神殿では危ないからと刃物を使うことは禁止されていたので、食材を切るのはとても怖い。
その上、暗くなってきたのに、明かりのつけ方さえ知らない。
魔法が使えない私は本当に何もできず、ただの役立たずだった。
台所は段々と暗くなっていき、私は途方に暮れて、心細くて泣きそうになる。
もう手元さえ見えづらくなってきたので、私は台所から出て、食事室の椅子に座ってカイオを待つことにした。テーブルの上にぼんやりと見えているのは、カイオが買ってくれたライムンドの模型だ。真っ黒なライムンドの姿は暗くてはっきりとはわからないけれど、手で触ると形が良くわかる。
カイオが駆る輝くような黒い鱗を持つ大きな竜。私はそんなライムンドに魅了されてしまった。模型ですら美しい。
「絶対にカイオをここに連れ帰って。お願い、ライムンド」
手の中の模型にそう呟いて、私は自己嫌悪に陥ってしまう。
この暗い家に一人でいるのが怖いから、誰かにそばにいて欲しいと願ってしまった。カイオのためではなく、私のために。
私は神殿にいる間、何の努力もしなかった。
竜騎士が使う銀の武器に聖なる力を込める時も、早く聖なる力が枯れてしまえばいいと思いながら無造作に行った。武器に込められた聖なる力の量で、武器の威力が違ってくると説明されていたのに。
他の聖乙女が行うように丁寧に少しずつ真心を込めて祈れば良かった。
今更後悔しても遅い。私はなんて愚かだったのだろう。
カイオは私の祝福した武器で魔物と戦っている。あんなやっつけ仕事で聖なる力を込めた武器で、彼はちゃんと魔物と戦えているのだろうか。
私のせいで彼の今までの努力が無駄になるようなことになったらと思うと、本当に怖い。
もう、何時間経ったのだろうか。窓から見える空は真っ黒で、ライムンドが帰還してもわからない。
自分が酷い女だと十分自覚した。
だから、私のために帰ってきてとカイオにそう願う。
何もできない私を怒っていいから。
仕事を疎かにしたと軽蔑してもいいから。
自分の行いに責任を取ることさえできない馬鹿だと罵っていいから。
お願いカイオ、無事にここへ戻ってきて。
私はライムンドの模型を抱きしめ、そう願い続けた。
今日初めて会ったカイオは、口が悪くて少し意地悪だ。でも、根は優しい人なのだと思う。
私に聖なる力が残っていなければ、ただの田舎娘の私と出会うことなどなかった誇り高き竜騎士。たった二十年しか生きていない彼の人生の殆どは、厳しい訓練に費やされた筈だ。
この国の人々を守るために、巨大な竜に乗り命をかけて魔物と戦うことを自ら選んだ強い人。
私たちの聖なる力が国の最果てに集められて、人々の生活に必要な白魔素を生成するとともに魔物から国を守っているのは知っている。そして、時々聖なる力が薄くなったところを突き破って魔物が内部に侵入して、竜騎士がそんな魔物を討伐していることも。
どうか誰一人欠けることなく無事に帰ってきてと願わずにはいられない。
せめて少しでもカイオの役に立ちたくて、私は夕食の用意をしようと思った。絶対にお腹を空かせて帰ってくる筈だから。
パンはたくさん買っていた。肉と野菜、それに卵もある。今まで調理などしたこともなかったけれど、簡単な夕食ぐらいなら作ることができると思った。
しかし、台所では戸惑うばかりだった。火の付け方もわからない。水も出せない。神殿では危ないからと刃物を使うことは禁止されていたので、食材を切るのはとても怖い。
その上、暗くなってきたのに、明かりのつけ方さえ知らない。
魔法が使えない私は本当に何もできず、ただの役立たずだった。
台所は段々と暗くなっていき、私は途方に暮れて、心細くて泣きそうになる。
もう手元さえ見えづらくなってきたので、私は台所から出て、食事室の椅子に座ってカイオを待つことにした。テーブルの上にぼんやりと見えているのは、カイオが買ってくれたライムンドの模型だ。真っ黒なライムンドの姿は暗くてはっきりとはわからないけれど、手で触ると形が良くわかる。
カイオが駆る輝くような黒い鱗を持つ大きな竜。私はそんなライムンドに魅了されてしまった。模型ですら美しい。
「絶対にカイオをここに連れ帰って。お願い、ライムンド」
手の中の模型にそう呟いて、私は自己嫌悪に陥ってしまう。
この暗い家に一人でいるのが怖いから、誰かにそばにいて欲しいと願ってしまった。カイオのためではなく、私のために。
私は神殿にいる間、何の努力もしなかった。
竜騎士が使う銀の武器に聖なる力を込める時も、早く聖なる力が枯れてしまえばいいと思いながら無造作に行った。武器に込められた聖なる力の量で、武器の威力が違ってくると説明されていたのに。
他の聖乙女が行うように丁寧に少しずつ真心を込めて祈れば良かった。
今更後悔しても遅い。私はなんて愚かだったのだろう。
カイオは私の祝福した武器で魔物と戦っている。あんなやっつけ仕事で聖なる力を込めた武器で、彼はちゃんと魔物と戦えているのだろうか。
私のせいで彼の今までの努力が無駄になるようなことになったらと思うと、本当に怖い。
もう、何時間経ったのだろうか。窓から見える空は真っ黒で、ライムンドが帰還してもわからない。
自分が酷い女だと十分自覚した。
だから、私のために帰ってきてとカイオにそう願う。
何もできない私を怒っていいから。
仕事を疎かにしたと軽蔑してもいいから。
自分の行いに責任を取ることさえできない馬鹿だと罵っていいから。
お願いカイオ、無事にここへ戻ってきて。
私はライムンドの模型を抱きしめ、そう願い続けた。
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