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2.裏切られた男
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数々の女性と浮名を流してきたフアニートは、王太子に裏切られたと知ったリカルダなら簡単に落とすことができると思っていた。だから、無理やり関係を迫るつもりはない。リカルダが自分との逢瀬のため休憩室にやって来たと噂されるだけで十分だったのだ。
今回の話はアルマから持ち掛けられたので、何故かリカルダを目の敵のように嫌っているアルマに適当に合わせていたが、フアニートは特にリカルダに悪感情を抱いてはいない。それどころか、若くて美しく、父親は大臣を務めるルシエンテス公爵だ。結婚相手としてこれほど優良な女性はそういないと思っている。しかも、ルシエンテス公爵は公爵位の他にもいくつか爵位を持っているので、リカルダと結婚すれば子爵位くらいは貰えるはずだ。それはアルモンテ伯爵の三男であるフアニートにとって、喉から手が出るほど欲しいものだった。
差出人不明の手紙でこの部屋に呼び出された。フアニートはリカルダにそう伝えるつもりにしていた。すべて王太子の策略だと匂わせ、ショックを受けるだろうリカルダを優しく慰めて、新しい婚約者に納まろうと考えているのだ。もちろん、無理やり既成事実を作るような馬鹿な真似をするつもりはない。ただし、自分と密会していたとの噂はどうしても必要だった。それも、アルマの侍女が上手くやってくれる手筈になっている。
あとは自ら罠にかかりにくる哀れな獲物を待つだけだ。フアニートはベッドに腰掛けながらほくそ笑んでいた。
それなのに、部屋にやって来たリカルダがフアニートの姿を見て驚いている間に、顔を見た記憶のあるパスクアル伯爵家の侍女が現れて、リカルダの口と鼻にハンカチを押し付けてしまった。そのハンカチには何かの薬物が染み込ませているらしく、リカルダは体から急に力が抜けたようにふらつく。そんなリカルダをどうにか支えた侍女は、茫然としているフアニートを振り返った。
「馬車を待たせてあります。ついてきてください」
「ちょっと待て! リカルダをどこへ連れて行く気だ。アルマからそんなことは聞いていないぞ!」
突然の侍女の行いに焦ったフアニートは、思わず大声を出してしまっていた。しかし、リカルダは驚く素振りも見せず、ぐったりとして侍女にもたれかかっている。
「フアニート様、お静かにしてください。人が来れば面倒なことになります。とにかく、さっさとこの女を連れ出しますよ。舞踏会で気分が悪くなった女性を送ると言えば、王宮の門番もすんなりと通すでしょう」
侍女は感情のこもらない冷たい声でフアニートを促した。事情はわからないものの、ここで騒ぎ立てるのは不味いことだけは理解したフアニートは侍女の後に続く。
三人は王宮の門番に怪しまれることもなく無事外に出ることができた。
門近くには黒い馬車が停められていて、侍女がリカルダを抱えるようにして乗り込んだ。
馬車までは侍女に肩を貸してもらいどうにか歩いていたリカルダだったが、馬車の座席に座らせられた途端に気を失うように横になった。急に目が覚めて逃げ出すことを阻止するためか、侍女が横に座ってリカルダの頭を膝に乗せる。
「早く乗ってください」
どうしようかと迷っていたフアニートだったが、侍女に促され馬車に乗り、リカルダたちとは対面の座席に腰を下ろす。
すると、馬車が静かに動き出した。
「どこへ行くつもりだ?」
不安そうな面持ちでフアニートが侍女に聞いた。全くの想定外の事態に思考が追い付いていない。
「お嬢様が用意した古い館がございます」
何の感情も見せずに侍女は答える。
お嬢様とはアルマのことだと理解できたが、なぜ彼女がこんなことをするのかフアニートには想像もできなかった。
確かに、婚約者以外の男と一夜を共にしたとなれば、リカルダは王太子妃となる資格を確実に失ってしまうだろう。しかし、下手をするとフアニートは婦女誘拐の嫌疑をかけられてしまうのだ。リカルダから誘われたと言い募っても、信じてもらえるかはわからない。
たとえ世間に信じてもらえたとしても、リカルダからは確実に嫌われるだろう。同意もなしに薬物を使って攫ってきたのだから。
だが、どんな理由があろうとも、このまま一夜を明かしたのなら、リカルダにはもう自分と結婚する以外の道は残されていない。これで良かったのかもしれない。フアニートは不安な気持ちに蓋をして、そう自分に言い聞かせていた。
夜道を慎重に進んでいた馬車は、日付も変わろうという時間にやっと停止した。
馬車を降りたフアニートの目の前には、侍女の言葉通り古い館があった。長期間使われていなかったらしく、庭には背の高い雑草が生い茂っている。しかし、堅牢に作られているのか建物自体はそれほど傷んではいないようだ。
馬車が止まったせいでリカルダは目が覚めたらしく、侍女に助けられながら馬車を降りてきた。まだ意識がはっきりとはしていないのか、足元はおぼつかない。フアニートはリカルダの手助けをしようとしたが、侍女はそれを拒否するように、リカルダを支えながらさっさと歩き出す。
「ランプをお願いします」
立ち止まったままのフアニートに侍女が声をかけると、彼は慌てて馬車にかけられていたランプを持ち、侍女に続いて古い館に入っていく。
一階の客間らしい部屋に置かれたベッドには、あらかじめ侍女が用意していたのか真新しいシーツがかけられていた。古びた室内でそこだけが新しく異質な感じを与えていた。
侍女はそのベッドにリカルダを横たえさせる。まだ薬物が効いているのか、リカルダは再び目を閉じた。
ランプを壁にかけたフアニートは、所在なさげに古いソファに腰をかけた。
侍女は何も喋らない。しかし、この部屋を出ていくことはなく、ベッド脇にあった木の椅子をベッドと並行に置きなおした。そこに座るとリカルダとフアニートの両方を監視できる位置だ。
侍女が前もって用意していたのか、ベッドヘッドボードに置かれていた短剣を手にして椅子に座る。
静寂の中、リカルダの小さな寝息だけが聞こえていた。
フアニートはどうしたものかと悩んでいた。
じっとこちらを睨んでいる侍女の隙をついてリカルダを助けるのは無理なようだ。侍女と争いにでもなれば、手にした短剣でリカルダを傷つけるかもしれない。そうなれば彼の罪も重くなる。それに、自身が傷を負うのも嫌だった。
だからといって、このままここから逃げてしまえば、リカルダ誘拐の首謀者にされかねない。
こんな事態を引き起こしたアルマに内心で毒つきながら、フアニートは座ったまま動けないでいた。
どれほどの時間が経ったのだろう。ようやく薬物の効果が切れたらしく、リカルダがゆっくりと目を開ける。やがて、その緑色に輝く美しい目に光が戻り、リカルダは薄汚れた部屋を見渡した。たったそれだけで、事情を察したらしく、リカルダはフアニートの方に目を向けた。
「あの休憩室にいらした方ですわね。わたしくしを汚すように頼まれましたの? 命じたのは殿下と噂になっているあのお方でしょうか? わたくしを呼び出した殿下もご存じなのですね」
辛そうに閉じられた目から一筋の涙が流れ、リカルダの頬を伝っていく。
「いや、違う! 確かに命じたのはアルマだが、僕は君を汚すつもりなどないから! 殿下に裏切られた貴女を救いたかっただけだ」
ランプの薄暗い中でも、リカルダの美しさは損なわれていなかった。美少女の涙に目を奪われながら、フアニートはとにかく必死でリカルダに訴えた。
「お気の毒に。愛しい女性のためとはいえ、犯罪に手を染めてしまうなんて。でも、命を捧けるほどの情熱的な愛、少し羨ましいですわね。わたくしは、婚約者にさえこうして裏切られてしまいましたのに」
横になったまま、リカルダは痛ましいものでも見るような眼差しをフアニートに向けた。
「い、いや、命を捧げるようなつもりはないが」
フアニートは慌てて首を横に振る。死ぬつもりなど全くない。美しく高貴なリカルダと結婚して、爵位と領地をもらい幸せに暮らしていく。それがフアニートの願いなのだ。
数々の女性を落としてきた彼は、リカルダを自分に夢中にさせる自信があった。ましてや婚約者に裏切られたばかりのリカルダなのだ。フアニートにかかればあっという間に腕の中に落ちてくるだろう。そう算段していたのだが、アルマが抱くリカルダへの憎しみは思った以上に深いようだと、今更ながらフアニートは後悔する。おそらく、リカルダがささやかな幸せを得ることすらアルマは許せなかったのだろう。
「でも、ご存じだとは思いますが、わたくしは公爵家の娘です。誘拐してただで済むとお考えになったわけではありませんでしょう?」
「ち、違う。君を攫ったのはそこにいる侍女で、僕は巻き込まれただけなんだ」
フアニートは誘拐したことを慌てて否定した。どうにかして誘拐に関わっていないとリカルダに信じさせることができないかと考えを巡らせている。
「私はお嬢様とフアニート様に命じられ貴女をここまでお連れしただけです」
声を震わすこともなく、侍女は冷静に答える。
「でしょうね。見ず知らずの侍女が私を誘拐する理由はありませもの。それに、はっきりとは覚えていませんが、彼女は私を大切に扱ってくれましたから」
侍女の言葉を信じたように、リカルダは大きく頷いた。
「本当に違うんだ。その女に命じたのはアルマで、悪いのはすべてアルマだ! とにかく人を呼んでくるから待っていろ。僕は君を絶対に助けるからな」
攫った侍女と攫われたリカルダを二人残すことに躊躇いも見せず、フアニートは部屋を出ていく。
フアニートは慌てて外に出たが、門の先に停まっていたはずの馬車は見当たらず、辺りは深い闇に包まれていた。それでもフアニートは走り出す。とにかく誘拐犯に仕立て上げられるのは避けなくてはならない。
自分はアルマに嵌められたのだ。こうなれば騎士団に行ってアルマの罪を告発し、自分はリカルダ誘拐と無関係だと証明するしかない。その思いで王宮の方角を目指してフアニートはひたすら走った。
今回の話はアルマから持ち掛けられたので、何故かリカルダを目の敵のように嫌っているアルマに適当に合わせていたが、フアニートは特にリカルダに悪感情を抱いてはいない。それどころか、若くて美しく、父親は大臣を務めるルシエンテス公爵だ。結婚相手としてこれほど優良な女性はそういないと思っている。しかも、ルシエンテス公爵は公爵位の他にもいくつか爵位を持っているので、リカルダと結婚すれば子爵位くらいは貰えるはずだ。それはアルモンテ伯爵の三男であるフアニートにとって、喉から手が出るほど欲しいものだった。
差出人不明の手紙でこの部屋に呼び出された。フアニートはリカルダにそう伝えるつもりにしていた。すべて王太子の策略だと匂わせ、ショックを受けるだろうリカルダを優しく慰めて、新しい婚約者に納まろうと考えているのだ。もちろん、無理やり既成事実を作るような馬鹿な真似をするつもりはない。ただし、自分と密会していたとの噂はどうしても必要だった。それも、アルマの侍女が上手くやってくれる手筈になっている。
あとは自ら罠にかかりにくる哀れな獲物を待つだけだ。フアニートはベッドに腰掛けながらほくそ笑んでいた。
それなのに、部屋にやって来たリカルダがフアニートの姿を見て驚いている間に、顔を見た記憶のあるパスクアル伯爵家の侍女が現れて、リカルダの口と鼻にハンカチを押し付けてしまった。そのハンカチには何かの薬物が染み込ませているらしく、リカルダは体から急に力が抜けたようにふらつく。そんなリカルダをどうにか支えた侍女は、茫然としているフアニートを振り返った。
「馬車を待たせてあります。ついてきてください」
「ちょっと待て! リカルダをどこへ連れて行く気だ。アルマからそんなことは聞いていないぞ!」
突然の侍女の行いに焦ったフアニートは、思わず大声を出してしまっていた。しかし、リカルダは驚く素振りも見せず、ぐったりとして侍女にもたれかかっている。
「フアニート様、お静かにしてください。人が来れば面倒なことになります。とにかく、さっさとこの女を連れ出しますよ。舞踏会で気分が悪くなった女性を送ると言えば、王宮の門番もすんなりと通すでしょう」
侍女は感情のこもらない冷たい声でフアニートを促した。事情はわからないものの、ここで騒ぎ立てるのは不味いことだけは理解したフアニートは侍女の後に続く。
三人は王宮の門番に怪しまれることもなく無事外に出ることができた。
門近くには黒い馬車が停められていて、侍女がリカルダを抱えるようにして乗り込んだ。
馬車までは侍女に肩を貸してもらいどうにか歩いていたリカルダだったが、馬車の座席に座らせられた途端に気を失うように横になった。急に目が覚めて逃げ出すことを阻止するためか、侍女が横に座ってリカルダの頭を膝に乗せる。
「早く乗ってください」
どうしようかと迷っていたフアニートだったが、侍女に促され馬車に乗り、リカルダたちとは対面の座席に腰を下ろす。
すると、馬車が静かに動き出した。
「どこへ行くつもりだ?」
不安そうな面持ちでフアニートが侍女に聞いた。全くの想定外の事態に思考が追い付いていない。
「お嬢様が用意した古い館がございます」
何の感情も見せずに侍女は答える。
お嬢様とはアルマのことだと理解できたが、なぜ彼女がこんなことをするのかフアニートには想像もできなかった。
確かに、婚約者以外の男と一夜を共にしたとなれば、リカルダは王太子妃となる資格を確実に失ってしまうだろう。しかし、下手をするとフアニートは婦女誘拐の嫌疑をかけられてしまうのだ。リカルダから誘われたと言い募っても、信じてもらえるかはわからない。
たとえ世間に信じてもらえたとしても、リカルダからは確実に嫌われるだろう。同意もなしに薬物を使って攫ってきたのだから。
だが、どんな理由があろうとも、このまま一夜を明かしたのなら、リカルダにはもう自分と結婚する以外の道は残されていない。これで良かったのかもしれない。フアニートは不安な気持ちに蓋をして、そう自分に言い聞かせていた。
夜道を慎重に進んでいた馬車は、日付も変わろうという時間にやっと停止した。
馬車を降りたフアニートの目の前には、侍女の言葉通り古い館があった。長期間使われていなかったらしく、庭には背の高い雑草が生い茂っている。しかし、堅牢に作られているのか建物自体はそれほど傷んではいないようだ。
馬車が止まったせいでリカルダは目が覚めたらしく、侍女に助けられながら馬車を降りてきた。まだ意識がはっきりとはしていないのか、足元はおぼつかない。フアニートはリカルダの手助けをしようとしたが、侍女はそれを拒否するように、リカルダを支えながらさっさと歩き出す。
「ランプをお願いします」
立ち止まったままのフアニートに侍女が声をかけると、彼は慌てて馬車にかけられていたランプを持ち、侍女に続いて古い館に入っていく。
一階の客間らしい部屋に置かれたベッドには、あらかじめ侍女が用意していたのか真新しいシーツがかけられていた。古びた室内でそこだけが新しく異質な感じを与えていた。
侍女はそのベッドにリカルダを横たえさせる。まだ薬物が効いているのか、リカルダは再び目を閉じた。
ランプを壁にかけたフアニートは、所在なさげに古いソファに腰をかけた。
侍女は何も喋らない。しかし、この部屋を出ていくことはなく、ベッド脇にあった木の椅子をベッドと並行に置きなおした。そこに座るとリカルダとフアニートの両方を監視できる位置だ。
侍女が前もって用意していたのか、ベッドヘッドボードに置かれていた短剣を手にして椅子に座る。
静寂の中、リカルダの小さな寝息だけが聞こえていた。
フアニートはどうしたものかと悩んでいた。
じっとこちらを睨んでいる侍女の隙をついてリカルダを助けるのは無理なようだ。侍女と争いにでもなれば、手にした短剣でリカルダを傷つけるかもしれない。そうなれば彼の罪も重くなる。それに、自身が傷を負うのも嫌だった。
だからといって、このままここから逃げてしまえば、リカルダ誘拐の首謀者にされかねない。
こんな事態を引き起こしたアルマに内心で毒つきながら、フアニートは座ったまま動けないでいた。
どれほどの時間が経ったのだろう。ようやく薬物の効果が切れたらしく、リカルダがゆっくりと目を開ける。やがて、その緑色に輝く美しい目に光が戻り、リカルダは薄汚れた部屋を見渡した。たったそれだけで、事情を察したらしく、リカルダはフアニートの方に目を向けた。
「あの休憩室にいらした方ですわね。わたしくしを汚すように頼まれましたの? 命じたのは殿下と噂になっているあのお方でしょうか? わたくしを呼び出した殿下もご存じなのですね」
辛そうに閉じられた目から一筋の涙が流れ、リカルダの頬を伝っていく。
「いや、違う! 確かに命じたのはアルマだが、僕は君を汚すつもりなどないから! 殿下に裏切られた貴女を救いたかっただけだ」
ランプの薄暗い中でも、リカルダの美しさは損なわれていなかった。美少女の涙に目を奪われながら、フアニートはとにかく必死でリカルダに訴えた。
「お気の毒に。愛しい女性のためとはいえ、犯罪に手を染めてしまうなんて。でも、命を捧けるほどの情熱的な愛、少し羨ましいですわね。わたくしは、婚約者にさえこうして裏切られてしまいましたのに」
横になったまま、リカルダは痛ましいものでも見るような眼差しをフアニートに向けた。
「い、いや、命を捧げるようなつもりはないが」
フアニートは慌てて首を横に振る。死ぬつもりなど全くない。美しく高貴なリカルダと結婚して、爵位と領地をもらい幸せに暮らしていく。それがフアニートの願いなのだ。
数々の女性を落としてきた彼は、リカルダを自分に夢中にさせる自信があった。ましてや婚約者に裏切られたばかりのリカルダなのだ。フアニートにかかればあっという間に腕の中に落ちてくるだろう。そう算段していたのだが、アルマが抱くリカルダへの憎しみは思った以上に深いようだと、今更ながらフアニートは後悔する。おそらく、リカルダがささやかな幸せを得ることすらアルマは許せなかったのだろう。
「でも、ご存じだとは思いますが、わたくしは公爵家の娘です。誘拐してただで済むとお考えになったわけではありませんでしょう?」
「ち、違う。君を攫ったのはそこにいる侍女で、僕は巻き込まれただけなんだ」
フアニートは誘拐したことを慌てて否定した。どうにかして誘拐に関わっていないとリカルダに信じさせることができないかと考えを巡らせている。
「私はお嬢様とフアニート様に命じられ貴女をここまでお連れしただけです」
声を震わすこともなく、侍女は冷静に答える。
「でしょうね。見ず知らずの侍女が私を誘拐する理由はありませもの。それに、はっきりとは覚えていませんが、彼女は私を大切に扱ってくれましたから」
侍女の言葉を信じたように、リカルダは大きく頷いた。
「本当に違うんだ。その女に命じたのはアルマで、悪いのはすべてアルマだ! とにかく人を呼んでくるから待っていろ。僕は君を絶対に助けるからな」
攫った侍女と攫われたリカルダを二人残すことに躊躇いも見せず、フアニートは部屋を出ていく。
フアニートは慌てて外に出たが、門の先に停まっていたはずの馬車は見当たらず、辺りは深い闇に包まれていた。それでもフアニートは走り出す。とにかく誘拐犯に仕立て上げられるのは避けなくてはならない。
自分はアルマに嵌められたのだ。こうなれば騎士団に行ってアルマの罪を告発し、自分はリカルダ誘拐と無関係だと証明するしかない。その思いで王宮の方角を目指してフアニートはひたすら走った。
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