銀狼公子の導き手

竜胆 琳

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一部 プリステラ王国編

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 メイファの扱いが変化したのは五年前。
 メイファの異母兄である華家の当主が急死し、後継を巡る争いに端を発した華家のいざこざの中、メイファの存在が無視された。
 亡くなった当主とメイファは、もともと歳の離れた異母兄妹ということもあり、さほど仲が良かったというわけではなかった。
 だが他国に嫁いだ異母妹にそれなりの援助と、婚家の侯爵家に対し商業取引の優遇を行なっていた。

 家督争いののち当主を継いだのは、当主の側室の息子の三男であった。本妻の子や兄を陥れ跡目を継いだのだ。
 そして新しい当主はメイファへの援助も、侯爵家への優遇措置も全て中止したのだ。

 そこで現国王と侯爵は一計を案じた。
 華家新当主の従兄妹に当たるファルナをロシャス王子の婚約者にすることで、援助と優遇措置を復活させようとしたのだ。

 だが華家からは何の援助もないまま、メイファとの縁を切るという使書のみ差し向けられ、華家との繋がりは切れ、それっきりとなった。
 代わりというわけではないが、スーシェン帝国の南西の地を収めるミン家から、援助と取引の申し出があった。明家も交易港を治める領地を持った上級貴族であった。

 これは先先代の華家当主と先代の明家当主が盟友であったこと、メイファの母親が明家の傍系であったメイ家の出身で、メイファ自身父親に連れられ幼い頃から明家と交友があったことが明家を動かしたのだと、メイファ付きのメイド、ロンメイの言葉であった。
 あれから五年経った今も、華家からは何の音沙汰もない。いずれ婚約解消に至ることはファルナにとっては自明の理であった。
 
「華家から連絡はあったかしら」
「いえ、全く御座いません」
「そう」

 後ろの控えていたファルナのメイド、シャオメイは、お茶の用意をしつつ返答するのだった。
 
「母様の具合についてロンメイはなんと?」
「あまりよろしくないようです。1日のうちお起きになる時間がまた減ってしまったと」
「そう」

 紅茶を口にしつつファルナは考える。

 母親の具合の悪さはそもそも華家のせいだ。スーシェンに一時でも戻ることができるなら随分と回復するはずだ。
 だが、里帰りについて問い合わせても返事もよこさない。
 仕方ない。これ以上明家に迷惑をかけたくないのだけど、明家から帝国側に許可をとって頂こうかしら。

 カシャン!
「あつっ」

 シャオメイの声に振り向くと、ミルクポットのカケラを握り血を滴らせるシャオメイの姿が目に入った。

「申し訳ございませんお嬢様」

 カップをテーブルに起きシャオメイに近づき手を開かせる。

「このミルクポットがヤワ過ぎるのです」
「身体を鍛えるのはいいけどほどほどにと言っているでしょう」
「何をおっしゃいます。私はお嬢様の護衛でもあるのです」

 だからと言って力加減を間違えて茶器を握り潰すのは如何かと思う。
 
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