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一部 プリステラ王国編
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しおりを挟む王都を出てしばらく街道を走ると、人の通りが極端に少なくなる。まるで何かに追われているがごとく速度で走る馬車を、訝しげに見つつ避ける者もいなくなったころ、シャオメイは御者台から馬車の中に入ってきた。
「本当に揺れませんね、この馬車」
「この馬車自体魔道具だからね。ほとんど揺れはないわ」
車輪と車体の接続部に特殊なパーツを取り付けることで振動が伝わらないようになっている。
「馬もこの早さで走ってもバテることはないし、この調子で行けば明日の朝にはつきますね」
二頭の馬は御者もなく街道を走り続けている。
「一見普通の馬に見えるけど、ゴーレム馬だからね。燃料さえあれば休憩も必要ないから」
スーシェン帝国では珍しくないゴーレム馬車だが、プリステラ王国では王族と一部の貴族しか保有していない希少品だ。
ゴーレム馬自体が高額なせいもあるが、動かすための燃料〝魔石〟が大量に必要なのだ。
魔石はプラムブル商会の主商品である。
この魔力を含んだ鉱石は、三日月大陸の中央を横断する山脈、ロンシェン山脈以北でしか産出されない。
ロンシェン山脈以北イコールスーシェン帝国といっても良い。
魔道具を動かすための魔石も、輸入品なのである。
魔力を含んだ魔石は濃い赤色をしている。魔力含有量が多いほどその色は濃く透明度が高いが、魔力がなくなれば色を失い白く濁る。
スーシェン帝国の下級貴族などは、白く濁った魔石、空魔石に魔力を充填して金を稼ぐこともしている。
ファルナは両足につけていたバングルを外し、セットされている赤い魔石を順番に空魔石と交換した。
「腕輪の方はもう少しみたいだから、これだけ渡しておくわ」
濃いガーネットのような色の魔石を小袋に入れシャオメイに渡す。
「どうしても足らなければ〝込める〟けど」
「いえ、十分ですよお嬢様」
魔力を持つものは空魔石に魔力を〝込めることができる〟のだ。
もともと、空魔石は肌に直接触れさせれば、魔力をゆっくりと吸い上げる。だがその量はさほど多くなく、魔石が少し色着く程度だ。
ファルナが身につけているバングルやブレスレットは、魔力がいっぱいになるまで吸い上げる効果がある。
母親のメイファも明家からもらった〝装着者から魔力を吸い上げ魔石に移す〟魔道具を大量に身につけている。
魔法が使えないため、そうやって身の内に溜まった魔力を放出しているのだ。
スーシェン帝国の魔道具には、魔法を使えなくなるまで魔力を吸い出す、犯罪者に枷としてつける魔道具もある。
最初はメイファの体内魔力を減らすため、枷を使うことも考えたが、枷はそのまま体外に魔力を限界まで放出する。魔力は多すぎても少なすぎても身体に影響を与え、起き上がることができなくなる。
魔力の枯渇は身体にもよくないため、魔石に魔力が充填されれば吸い上げが止まる、今の装飾過多な魔道具をあちこちにつけているのだ。
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