とあるダンジョンのラスボス達は六周目に全てを賭ける

太嘉

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集結の章 挿話─風─

「冒険者ギルドにて」─6─

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トラブルはいつも、予約なんて無しでやってくる。

「…ってことなんだよ」

早朝、住宅街の一角にある、絡繰商工会。
冒険者達の集う街の、盗賊や忍者など『密やかなる』事を生業とした者たちの寄合所だ。

同時に、生まれつき密やかなる事が出来る──生まれながらの『盗賊』と揶揄される事もある──ハーフフットの寄合所でもある。

二十四時間営業のそこで寝泊まりを決めている、盗賊稼業達の取りまとめ役・ジャスパは、やってきたハロドから事の次第を聞いた。

「分かった。急がなきゃだね?」
「うん。オイラこれから長屋に行ってくるよ。
ギムリも呑んだくれてるだろうし」

ジャスパが替わりに店番を頼もうとするのを、ハロドが先に制する。

「しゃあない、スフェン!今から1時間くらい残れる?」
「弾んでくれたら」
「了解、頼んだ!」

昨夜から店番で入っていた、ハーフフットの盗賊・スフェンに声を掛けると、残業代で快く請け合ってくれた。

「あ、オイラの朝ごはんの食べちゃっていいからね。あと焼くだけで氷室の手前に入れてるやつ」
「ハムの追加は?」
「かぶりつかないなら、カウンター下の氷室のやつを好きにいいよ」

やったー!と弾んだ声が返ってくる。

「…元、取れてる?」
「ハムはオイラの趣味のやつだから」

ハーフフットは基本的に、商売には向かない。
何故なら、とってもざっくりだから。

それでも成り立つのは
みんなとってもざっくりだから。
そして一部のしっかりした、否、しっかりせざるを得なくなったハーフフットがきっちり締めていて、綺麗に収支が取れているからだ。

「意外と的確に意見をくれるんだよね。
そしてそれが結構いい感じで商品になって売上出るんだ」

経営の手綱を握ってるからと言って、恩に着せたりちょろまかしたりしないのもハーフフットだ。だから割を食う立場になっても損を感じない程度には、色んなモノが回ってくる。

「じゃあ、頼んだよスフェン」
「はーい、いってらー!」

────

「……という事なんだよ」

かくかくしかじか。

『サムライ長屋』は朝が早い。
なんだったらここの管理人達は、夜明け前に剣の稽古で一汗かいてたりもする。

「そうか…」
どう動こうかと、ガタイがいい方の侍が頭を捻る。
「では私は一度、領主殿に話を通して来ましょう。
『トビザル』様から、今日の昼すぎにはこちらに着くと連絡が来てますので」
細身の侍がガタイがいい侍に告げると
「うむ、ワシゃあ前もってカラタチ通りの面々に話を通しに行こう」

カラタチ通りには冒険者向けの店が並ぶ。
一番大きいのは、どこの街にもある、冒険者向けの総合道具屋『ボーリム・サヴォルー商会』だ。
他の武器屋や防具屋、道具屋もあるが『装備一式で困った時はこの店に行けばどうにかなる』とまで言われている。
一番の売りは、迷宮から持ち帰った品々の『買取』と『鑑定』で、装備品は他所で揃えられても、この二つは商会にしかできない事だ。

冒険者相手には阿漕な商売をするが、それ以外では社是が『奉仕』なだけあって、街の者たちが嫌がったりしたがらなかったりする仕事を進んで引き受ける。まあ、金にがめつい者も居はするが、どの地域であっても全ての店で商品価格は統一されているし、基本的に『信頼』を失う様な真似はしない。

──過去のトーリボルでもそうだったが、有事の際は冒険者達が売却に持ち込んだ武器や防具、アイテムまで無償で解放する。それも顧客を護る為の『奉仕』なのだそうだ。
そして、気前良くそこまでやるのが分かっているからこそ、冒険者達は店を利用するのである。

「今日の昼過ぎだね?伝えておくよ」
「ええ。今日の昼過ぎです。少し遅くなる事はあっても、早まる事はないと。
もう少し時間を遅らせたいなら、店に入って食事でも」
「じゃあ、どんなに早くてもお昼ご飯が終わる頃で!」
「分かりました。その様に」

細身の侍があどけなく微笑む。
これで、彼の故郷のヒノモトでは最強の一角と言われているのだから、人は見かけによらない。

「ギムリ殿はどうしようか」
「まだ寝てるならそのまま寝かせておいてよ。ついでで申し訳ないけど、事情の説明もお願いしていい?」
「起きとるわい」

ガタイがいい侍との会話に割って入って来たのは、ハロドの仲間のドワーフの侍、ギムリだ。
迷宮に潜る時に、特例で、転職を経ずに基本せんもん職に切り替わる者が十数名いるのだが、彼もその一人だ。

朝の挨拶を簡単に交わして

「説明も要らん、聞こえておったわ。
ワシの出る幕は無かろうが…」
「あ、フェンティスが、トゥーリーンを街から引き離しといてって」
「んあ?またあの小僧何で…いや、分かったと伝えといてくれや、あやつが一人で居るようならワシから声を掛ける」

エルフとドワーフは仲が悪いと言われてはいるし、確かにそう言われてもおかしくはないのだが、ギムリとフェンティセーザはかつて一つ地下迷宮ダンジョンを共に攻略踏破した仲間だ。
自分達の司令塔ブレインがそう言うのであれば、何かあるのだろう──ここに来る原因になった無茶振りよりはマシな部類だと快諾する。

「では、戸締りでもして一歩きしてくるか」
「ええ」
「じゃあワシゃあ一旦帰るわ」

そうと決まれば侍達は行動が早い。

「んじゃ、オイラは…」

────

「……なんだってさ」

かくかくしかじか。

冒険者ギルドの窓口はまだ開いてないが、一日二十四時間いつでも有事に対応できる様に体制を組んである。
そして、ギルドマスター・フォスタンドとその仲間、合計三人の拠点でもある──約一名、寄合所に入り浸って『出たきり雀』だが。

「…なるほど」
「驚かないのな」

ふむ、と唸るルチレイトに、フォスタンドが声を掛ける。

「つい今し方、変な魔力の流れが『学府』支部側からこちらに、な」

確か、支部長のヘリオドールが
「万が一の時の為に、念には念を入れておきたい」
と言って、地下に何やら設置していたが、それのことだろう。

「……予行練習と思えば良いか。いざという時に手間取って間に合わないというのが一番の笑い種だからな。
ルーツ。地下のアレの起動を。
ジャスパ。全冒険者に本日の不要不急のギルド来訪を控えるように通達を」
「了解した」
「了解。じゃあ行ってくるね」

ギルドマスターの命令に返事をして、二人は踵を返す。そして

「…レイ、今日の服、首までちゃんと隠せるやつがいいと思うよ」

余計な一言を残して、すたこらさっさとジャスパはその場を後にした。

────

「ハロド兄」
「ジャスパ」

目抜通りとカラタチ通りの交差点で、二人のハーフフットが合流した。

かくかくしかじか。

双方とも「終わった」と、成果をボディランゲージを交えて伝え合う。そこに

「あ、あの」

一人のエルフが声を掛けてきた。
生成りのローブに白糸で『学府』の紋章が刺繍されている。『学府』傘下となった地下迷宮を攻略する魔術師に支給されるもので、非力と言われている一般的な魔術師の身分を保障し『護る』ものでもある。

「すみません、『五行』のハロドさんとお見受けします…」
「そだよ。どしたの?」
「あ、わたし、『カリオステ』のフロアライトと申します。今し方、支部の地下に変な魔力の流れを感じまして…」

『カリオステ』──『虚空』でも名を馳せる冒険者パーティの一つ『赫眼のカリオステ』のメンバーだ。『虚空』の攻略からこちらに流れて来たのだろう。

「あ、その件ならオイラからいいかな?」

答えたのはジャスパだ。

「つい今、ギルドマスター・フォスタンド・レイドリックから通達があってね。
今から『学府』支部と協力して、冒険者ギルド地下にある、魔力を必要とする機器の試運転を行うので、全冒険者達に、解除があるまで不要不急のギルド来訪を控える様にって。
オイラは今から全寄合に通達を回させに行くから、一刻以内に全部に回ると思う。
変な魔力の流れは多分それ関係。安心して」
「そうなのですね、分かりました」
「じゃあ、オイラは一旦支部に戻って伝えてくるね。多分午後には解けると思うよ」
「ありがとハロド兄。じゃあ」

じゃあね、と二人のハーフフットがフロアライトに手を振ってタタタッと足音もなく去っていく。

「……」

(か、かわいい……)

ジャスパは絡繰商工会へ、ハロドは『学府』支部へ。
そもそも普段からあまり見かける事もないハーフフット達の背中を見送って、フロアライトは拠点へと踵を返したのだった。

────

「あ、トゥーリーンにアレンティー」
「早いねぇ」
「おはよう、ハロド」

『学府』支部まで戻ると、丁度パーティメンバーの二人が出掛けるところだった。

「どこ行くのさ」
「今から『診療所』に行って朝のお勤めを済ませたら、お城の裏で浄化のお勤めよ」
「私は暇つぶし兼、護衛さ」
「ギムリ帰ってきた?」
「帰って来たわ。私たちの行き先聞いて、ギムリ、今日は工房区に行ってくるって」
「マネラは診療所で、読み書きを教えると言ってもう出ていったよ」
「んじゃ、オイラも二人についてっていい?
ちょっとお城に用事があるんだ」
「嬉しい、ありがと」
「んじゃ、ちょっと待ってて。
フェンティスに伝言あるから書き置きしてくる」
「待ってるから慌てなくていいぞ」
「ありがと、了解!」

テンポ良く情報交換を済ませて、ハロドは支部に入っていく。
受付に置いてある紙にさらりと経過をしたためたあと、二階に上がると、それを異様に静かな支部長室の前の手すりにダガーで刺し留める。

(他には人の気配もないし、ここで間違いないや)

今夜はもしかしたら、外に泊まった方がいいかも──などと、一階の自室に降りて装備一式が入った袋を掴むと、ハロドは二人の元に向かった。

───『王達の帰還』─上─へと続く……

────

「ただいまー」
「……おかえりー……」

絡繰商工会のドアを開けると、どこか元気のないスフェンの声が返って来た。
理由は聞かなくても分かる。
多分、ジャスパが自分の朝食様に準備していた厚切りトーストに、ハムを盛り盛りに追い盛りした幸せの塊を、仲間にほとんど持って行かれたのだろう。

「あ」
「はよっすジャスパさん」
「おじゃましてまふ」

むぐもぐと、スフェンの仲間達の幸せそうな挨拶が返ってくる。

「ぴえぇん…」
「…ご愁傷様」

泣きそうなスフェンを尻目に、カウンター下の氷室を確認する。
使いかけのハムが、申し訳程度に残してあった。

「スフェン」

その、端っこの幸せを、ジャスパはスフェンの口に突っ込む。

「…!」
「あ、ずりぃ!」
「あんたたちが食ってるのはスフェンの残業代なんだけどね」

正確には、スフェンの夜当番の残業代の上乗せ分だが。

「ギルマスから緊急通達出たよ。今から内容したためる。
スフェン、片付けはいいからソレ持ってすぐ『学府』支部じゃなくて魔術師ギルドの方に走って。んでそのまま帰っていいから。
ラヴァストンは戦士ギルド、リチアは『円卓』、アルミニは『城』まで走って。よろしく」
「「「ええー?!」」」
「先に上手い汁吸ってるんだから拒否権なーし!」

その場に居る者は誰でも使う。例え商工会に無関係だろうが、だ。
ジャスパはさささっと同じ内容の通達を三通と住民向けの一通をしたためると、封筒に入れて封緘して書類を渡す。

通常、冒険者ギルドの通達伝達は、ギルド事務員の仕事だ──だからか、冒険者ギルドの緊急通達を運ぶ事は、冒険者達の間でも密かに名誉ある任務の一つだ。

領主の居城に通達が届けば、速やかに外の掲示板に張り出される。そちらには、ギルド事務員への臨時休業の指示が書かれている。先日も一度張り出されている為、そこまでの騒ぎにはならないだろう、はずだ。

「お待たせ、よろしく」
「ふぁ!」
「早っ!」
「いいい行ってきます!」

慌てて幸せの塊を飲み込むと、スフェンの仲間達がそれぞれの書物を手に走って出ていった。

「…帰りが遅くて心配して来てくれたんでしょ?仲間想いじゃん」
「…分かってるけどさぁ…」
「今度オイラが居る時においでよ、ハム盛り盛りトースト作ったげるよ」

やれやれ、といった風のジャスパの言葉に「約束だからね!」とスフェンが通達を手に飛び出していく。

「…さて」

『学府』はハロドの拠点だ。
そこから仲間を経由で『診療所』には一報が行くはずだ。
『サムライ長屋』は二人しかいない。最悪、領主の居城への書類経由で伝わるはずだ。

さらりともう一通、通達を記すと、ジャスパは商工会の掲示板に張り出した。

「はよっす~」

コロロン。
呼び鈴の音と同時に、朝からの店番がやって来た。

「おはよ、スコリア」

やって来たのは人間だ。絡繰商工会でも数少ない忍者で、スコリアは通り名だ。

「早速でごめんだけど、緊急通達出てさ。
その件でオイラギルドに詰めるから」
「またっスか?了~解。
勝手に食べていい?」
「飯まだなの?」
「ん」
「カウンター下のは食べていいよ」

ほどほどにね、と釘を刺しながら、ジャスパはハムの塊を2つ、氷室から移す。香草と塩を少しキツめにしているから、早々減る事は無いと思うのだが…

「今日の食材の受取よろしくね」
「了解っす」

絡繰商工会だけではなく、寄合所では簡単な食事が提供されるため、調理と提供は店番の大事な仕事の一つだ。

ガララン、と呼び鈴が鳴る。

「食材を届けに参った」

聞き慣れた声がする。
『サムライ長屋』のガタイが良い方だ。

「あーい」

ジャスパが返して外に出ると、なかなかの体格のせいで商工会の建物に入れない男が、箱を担いで立っていた。

「ジャスパ殿、緊急通達の件、商会に話は付けてある」
「早いね『シマヅ』のお兄さん。ありがと!
オイラもう行くから、食材は中の人に渡しといて~」
「うむ、気をつけて行かれよ」

ヒノモトの人間に、共通語の小洒落た発音は少し難しいのかもしれない。が、だいたい伝わるので、ジャスパは気に留めない事にする。

いってきまーす、と元気よく返して、ジャスパが走って行った。それに続いて

「はよっす」
「おお」

荷物を受け取りに出て来たスコリアと『シマヅ』の間に微妙な空気が流れる。

「…久しぶりです、『シマヅ』殿」
「四代目こそ」

荷物を渡しながら、声量を落として言葉を交わす。

スコリアはトクガワ直属の忍者だ。
ヒノモトにて、市井の守護に当たる侍達とはまた違う役職を持つ。
その役職に沿って、今はトーリボルとヒノモトのダンジョンマスターの間と、トーリボル領主とヒノモトの統治者との間の密約を果たす──の為に派遣されている。

この事実を知るのは、領主と迷宮側と、冒険者ギルドマスターとその二人の仲間だけだ。

「…真逆、『ミフネ』のぼんに手など」
「出せるか痴れ者が」

アレはまだ子供だ、と返り討つ勢いの即答に「おおこわ」とスコリアが肩を竦める。

何せ、二十歳までの『肛姦禁止令』を明文化しているお国柄なのだ。事が明るみに出れば下手すれば死罪──常に異形との最前線であるヒノモトに置いては特に、手塩を掛けて鍛えたつわものの前線生命に関わるが故の、重い処罰が待っている。

「ああ、今日の昼過ぎに三代目が見えられるぞ」
「へ?叔父貴が?」
「儂ン我儘ばァ少ぉし聞いてもらっただけよ」
「へえ、旦那が、『少ぉし』ねぇ」

「へぇええ?」とにやついた雰囲気のスコリアに「旦那言わん、ぬしン方が歳上じゃろが」と『シマヅ』が肩を軽くぶつける。

何せ最大級の我儘を、統治者トクガワに聞いてもらっているのだ、この『シマヅ』という男は。

「儂ゃァここまでよ、後はアレに任せちょる」
「ふぅん、じゃあ坊に精々死なねえ様に伝えてくだしあ。一昨日おとついから毛色が違うのが増えて来てますぜ」
「?」
「あぁあ、水の量が合わねぇんす。入れすぎ。
溢れるまで入れちゃあアカンでしょうよ」

スコリアが急に声の大きさを戻す。

「ふむ」

合わせて、『シマヅ』も普段の声に戻す。

「なるほど、伝えておこう。かたじけない。礼を言う」

にっこり。
人の良い笑みを浮かべると『シマヅ』は踵を返した。

────

「……だってさ」

もう戻るつもりは無かったのだが。

先ほどの軽口のお返しで、べちべちと頭をはたかれたジャスパは、フォスタンドに報告を上げる。

「昼前後あたりから、な。よくやった」

ジャスパを小脇に抱えて、フォスタンドは、ギルドのフロアへと出た。

「皆、おはよう」

フォスタンドの声に、皆が声を合わせて「おはようございます」と返してくる。

「本日の対応出勤、感謝する」

──今日、今、ここにいる面々は、冒険者ギルドの事務作業に従事する、それなりに実力のある現役の冒険者達だ。

「報告が揃った。
本日の業務は、新規受入及び転出のみとする。
同時に『学府』と連携して、建物を護る防護壁発動の予行演習」

普段よりも幾分か強い覇気に、冒険者達の中にはごくり、と喉を鳴らす者もいた。

「貴公らを招集したのには理由がある。
確かな情報筋により、本日昼前後より、この近辺は緊張状態となる」

最後の一言に、さすがにざわめきが起こる。

「本日午前中の新規受入に、貧相な男が来ると思われる。
黒髪、やつれた顔、痩せぎすで背丈はそれなり。
その他にも、独特の雰囲気などのすぐに報告を上げて欲しい。
対処には『学府』支部長と元支部長が当たる。相手は厄介な術を使うため、くれぐれも先に手を出すな、との事だ。」

ぱんぱん、と響く様に、フォスタンドが手を叩く。
小脇から解放されたジャスパが音を立てずに器用に着地した。

「今回の人選は、万が一の時に自分の身を守れる事を前提として、貴公らの冒険者としての経験や感覚を考慮した。
『試練場』解放まで間近だ。無事にその日を迎える為にも、我らは、二度の壊滅を経験したこの街を余計な危機に晒すわけにはいかない」

淡々と告げるその様に、場が静まり返る。
時を待たずして既に、ここは緊張状態なのだと──

「もし何もなく、今回の報告が杞憂に終わったとしても、今日の事はいつ何時何があっても対応ができる様に、貴公らの仲間達に共有して欲しい。
忘れるな。ここトーリボルは大勢の冒険者という常に緊張を抱えた街だ。いつ治安が悪化してもおかしくない。それを守り、冒険者も住民も過ごしやすい街を保つのは我々冒険者自身である!
以上だ。貴公らの天性の感覚に期待する。今日一日、よろしく頼む」
「了解しました!」

フォスタンドの言葉に、奮い立った冒険者達が声を揃えて返事を返した。

長い様で短い、普段とは違う冒険者ギルドの一日が始まった。

──『風は異世界からも吹く』─3─へ続く…
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