とあるダンジョンのラスボス達は六周目に全てを賭ける

男は五度、『否定した』。

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地下迷宮が乱立した時代がある。

男は、最初期の地下迷宮『試練場』の主であった。

凶暴な動物、怪物、果ては魔のモノまで犇めく地下迷宮には、名声を求める者、眠るとされる宝を目当てに一攫千金を求める者、他様々な事情を抱えた者たちが集まる。

地下迷宮乱立時代において、たった地下に10階程度の、階層数だけで言うならば「初級」扱いされるそのダンジョンは、乱立時代であっても最高難易度を誇る迷宮であった。

しかし、一つの街に一つという位に溢れかえる地下迷宮に歯止めを掛けようと国が触れを出した。

曰く──攻略されたダンジョンの主を生け捕り、王都に連れてきた者に、地位と財宝を与える、と

最初に攻略され、連行されかけた時に、男は追いかけてきた側近に殺された。
殺されたはずなのに、男は再び目覚めた。そこで自分が迷宮の最新部に、地下迷宮を墓所としてもろとも封印された事を知る。

抜け出すのに三年。情報を得るのに一年。
自分を捕らえ、封印した王都を滅ぼそうとした男は、そこで変わり果て壊れかけた側近の姿を目にし───

男は『否定した』。
救けられるはずだ、もっと上手く救けられるはずだとその身に刻み込んだ陣の力で過去に戻った。

それを四度、繰り返した。

捕らえられ、殺され、封印され、抜け出し、しかし男は側近を救けられなかった。
五度目は抜け出すまでに3ヶ月という速さだったが、それでも間に合わなかったのだ。

そして五度における繰り返しは、男だけではない──側近にも、世界にも、重くのしかかっていたのである。

六度目の時の逆巻きを諦めた男は、王都に壊滅的な損害を与えた後、変わり果て、壊れる寸前の側近と共に何処へと消え去った。

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その十五年後、かつて『試練場』と呼ばれた廃墟に再び息吹が宿った──
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