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集結の章
─the last countdown─
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────
「──ぶっちゃけると、八年後からのある一定期間、オレの身代わりになって欲しい」
執務室から個人の部屋に通されて開口一番、だった。
「言ったところで信じて貰えないだろうけれど、オレには前世までの記憶がある。
今からだいたい十年後、四十前後でオレは暗殺された。
前世のオレは、殺されても死なない位身体には恵まれていたのに、ある日を境に急激に衰弱死だ。多分、特殊な毒だろう」
それは、彼自身と『アルター』しか知らない事だった。
「同じ歳頃に、同じ死に方を、オレは5回繰り返した。
その後は5回とも、『王都』に攻め込まれてこの街は壊滅的な状態になった」
無言で、話を聴く二人に、領主は続けた。
「…何故『5回も』繰り返したのかって?
──『アルター』が、どうしようもない位にどうしようもない程、あいつにとっては譲れない理由で、時を遡ったからだよ、5回も」
──話を聴く二人の頭に『タイムリープ』という言葉が浮かぶ。
「オレは、前世までのオレが興したこの街を、生き延びさせたい。死んでいた歳頃を死なずに生き延びて、街のこの先を見たい。
領主としては、街の為なら自分はどうなってもいいって考えるさ。でも、オレの死が街の死だと言うならどうなってもいけないんだよ、オレは。
──6回目は、無いんだ」
腹の底から吐き出す様な、深い、深い、声で。
「貴女がたへのオレの依頼は
『トーリボル領主リヴォワール・ダ・トリフェン』の身代わりとなって、八年後からの一定期間を『(なんとしても生き延びろ)』──受けて、くれるだろうか」
ごくり、と、マヌエラの喉が鳴った。
「身代わりとなれ」──死ね、と言われるに等しい事を言われて、「こんな依頼は受けさせられない」とエィンヤがマヌエラの袖口を引こうとしたその時。
「『生き延びろ』と仰られましたね?」
「…先輩?!」
マヌエラの言葉に、思わず、エィンヤの口調が鋭くなる。
「ああ」
「いかなる手段を使ってでも?」
「ああ。オレと貴方が生き延びなければならない。その為なら、あらゆる助力は惜しまない」
震える声のマヌエラに、淡々と領主が返す。
「死ね」と言われて、それを「受ける」。
余程の忠誠なりなんなりがなければ、声が震えない者などいない。
「数年前の壊滅を経て、街と、『試練場』『冒険者ギルド』『学府』『カパタトの使徒』──ここは全てが手を組んでいる。
街全体を挙げて、と言ってもあくまで裏側からだが、この街を在り続けさせる為にはどんな労力も惜しまない。
無茶な依頼なのは承知している。
だから、手段は問わない。
貴女がたが考え付く、ありとあらゆる手段を以て、オレの身代わりになって生き延びてくれないだろうか?」
しん、と静寂が、場を支配する。
「……エィンヤ」
「先輩」
袖口を握ろうとしていたエィンヤの手を、マヌエラはきゅっ、と握りしめた。
「私のわがままに、付き合って?」
「……馬鹿ですか、あなたは」
受けるのか、こんな馬鹿げた依頼を。
何の縁もゆかりもない相手の。
受けざるを得ない状況なのは理解している。
自分たちは、この街に、とっくに命を助けてもらった上に、追手も消えて、難敵を排除してもらっているのだ──
よしんばこの話を断ったとしても、その借りを返さずにこの街を出られる訳がない。
でも──それがなくても、きっとこの人なら受ける。
エィンヤは内心ほぞを噛む。
「──何年、一緒に仕事してきたと思ってるんですか」
こんな、ハードル高ければ高いほど『燃える』性癖を、こんな所で出さないで欲しい…!
「手段は問わない。
その為の、金にも労力にも糸目を付けない。
最終ゴールは『生き延びる』こと──であれば、お受けいたします」
マヌエラが口にした条件の、どれか一つが欠けていたとしたら、彼女とて──選べるものなら首を縦には振らなかったろう。
だが、命と引き換えである以上、選択肢など無いに等しい。
「──感謝する」
どんなに言葉を尽くしても足りない──領主は、ただ頭を下げるしかできなかった。
──領主の、たった一人での『生存への戦い』の駒がやっと揃った。これでやっと、スタート地点に立ったに過ぎないのは、痛いほど分かっている……
やっと──
──── countdown started……
「──ぶっちゃけると、八年後からのある一定期間、オレの身代わりになって欲しい」
執務室から個人の部屋に通されて開口一番、だった。
「言ったところで信じて貰えないだろうけれど、オレには前世までの記憶がある。
今からだいたい十年後、四十前後でオレは暗殺された。
前世のオレは、殺されても死なない位身体には恵まれていたのに、ある日を境に急激に衰弱死だ。多分、特殊な毒だろう」
それは、彼自身と『アルター』しか知らない事だった。
「同じ歳頃に、同じ死に方を、オレは5回繰り返した。
その後は5回とも、『王都』に攻め込まれてこの街は壊滅的な状態になった」
無言で、話を聴く二人に、領主は続けた。
「…何故『5回も』繰り返したのかって?
──『アルター』が、どうしようもない位にどうしようもない程、あいつにとっては譲れない理由で、時を遡ったからだよ、5回も」
──話を聴く二人の頭に『タイムリープ』という言葉が浮かぶ。
「オレは、前世までのオレが興したこの街を、生き延びさせたい。死んでいた歳頃を死なずに生き延びて、街のこの先を見たい。
領主としては、街の為なら自分はどうなってもいいって考えるさ。でも、オレの死が街の死だと言うならどうなってもいけないんだよ、オレは。
──6回目は、無いんだ」
腹の底から吐き出す様な、深い、深い、声で。
「貴女がたへのオレの依頼は
『トーリボル領主リヴォワール・ダ・トリフェン』の身代わりとなって、八年後からの一定期間を『(なんとしても生き延びろ)』──受けて、くれるだろうか」
ごくり、と、マヌエラの喉が鳴った。
「身代わりとなれ」──死ね、と言われるに等しい事を言われて、「こんな依頼は受けさせられない」とエィンヤがマヌエラの袖口を引こうとしたその時。
「『生き延びろ』と仰られましたね?」
「…先輩?!」
マヌエラの言葉に、思わず、エィンヤの口調が鋭くなる。
「ああ」
「いかなる手段を使ってでも?」
「ああ。オレと貴方が生き延びなければならない。その為なら、あらゆる助力は惜しまない」
震える声のマヌエラに、淡々と領主が返す。
「死ね」と言われて、それを「受ける」。
余程の忠誠なりなんなりがなければ、声が震えない者などいない。
「数年前の壊滅を経て、街と、『試練場』『冒険者ギルド』『学府』『カパタトの使徒』──ここは全てが手を組んでいる。
街全体を挙げて、と言ってもあくまで裏側からだが、この街を在り続けさせる為にはどんな労力も惜しまない。
無茶な依頼なのは承知している。
だから、手段は問わない。
貴女がたが考え付く、ありとあらゆる手段を以て、オレの身代わりになって生き延びてくれないだろうか?」
しん、と静寂が、場を支配する。
「……エィンヤ」
「先輩」
袖口を握ろうとしていたエィンヤの手を、マヌエラはきゅっ、と握りしめた。
「私のわがままに、付き合って?」
「……馬鹿ですか、あなたは」
受けるのか、こんな馬鹿げた依頼を。
何の縁もゆかりもない相手の。
受けざるを得ない状況なのは理解している。
自分たちは、この街に、とっくに命を助けてもらった上に、追手も消えて、難敵を排除してもらっているのだ──
よしんばこの話を断ったとしても、その借りを返さずにこの街を出られる訳がない。
でも──それがなくても、きっとこの人なら受ける。
エィンヤは内心ほぞを噛む。
「──何年、一緒に仕事してきたと思ってるんですか」
こんな、ハードル高ければ高いほど『燃える』性癖を、こんな所で出さないで欲しい…!
「手段は問わない。
その為の、金にも労力にも糸目を付けない。
最終ゴールは『生き延びる』こと──であれば、お受けいたします」
マヌエラが口にした条件の、どれか一つが欠けていたとしたら、彼女とて──選べるものなら首を縦には振らなかったろう。
だが、命と引き換えである以上、選択肢など無いに等しい。
「──感謝する」
どんなに言葉を尽くしても足りない──領主は、ただ頭を下げるしかできなかった。
──領主の、たった一人での『生存への戦い』の駒がやっと揃った。これでやっと、スタート地点に立ったに過ぎないのは、痛いほど分かっている……
やっと──
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