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幕間
時は未だ-2-
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「ただいま~!お客さん連れてきたよ!」
冒険者ギルドから歩いてすぐ、大通りを挟んだ向かい側に、地下迷宮や遺跡の探索機関『学府』トーリボル支部は居を構えている。
そこがかつて『アーマラットの呪いの迷宮』を制覇、封印したパーティ『五行』の一時拠点ともなっているのは、パーティの魔術師フェンティスと司教アレンティーナが『学府』の徒である事からだ。
「おかえり、ハロドさん」
「おかえりハロド、早かったねぇ」
受付のカウンターから、支部業務の引き継ぎ途中の魔術師、ヘリオドールと、奥からハロドと長年共に暮らす相方のトゥーリーンの声がした。
「彼は?」
「ギルマスのメンバーのジャスパだよ」
「そう。初めまして、ジャスパ。私はここの管理人候補のヘリオドールだ」
「はじめまして、絡繰士の取りまとめのジャスパだよ…大丈夫?」
目の下に隈がはっきりと見えるヘリオドールに、ジャスパが思わず声を掛ける。
「あ、ああ。済まない。最近、夢見が悪くてね…」
ここ数日、戦争でたくさんの冒険者が嬲り殺される夢を見るのだと、ヘリオドールは頭を抱えた。
「戦争というよりも、虐殺に近いね。
夢によって出てくる人は違えど、戦いの中で死ねればまだ良い方で、生きて捕えられた者達は──」
性別も種族も関係なく、自死どころか狂うことすら許されず、神の奇跡にすら縋れないほど尊厳を根こそぎ破壊された末に、身包み剥がれ、首を切られ、一糸纏わぬ姿で野晒しにされる──
これが戦争だと、戦争に負けた側の末路だとしても、とても口に出来ない内容だった。
それが回数を重ねる毎に、鮮明になっていく。
「……ひどく、生々しい夢だよ」
正夢にならなければいいのだけれど、と、辛そうに頭を抱える。
「……」
その頭を、そっと撫でる人物が居た。
トゥーリーンだ。
「言うに言えないってのは、なんだい、そういった内容なのかい?」
「……申し訳ない、貴女には…あまり聞かせられない、内容かと」
内容が内容なだけに、女性陣にはとてもではないが聞かせられない内容だった。
言葉を尽くせばもっと悲惨だ。
ただの怖い夢であればいい。
そう思わずにはいられない、しかし──
「…ねえ」
ジャスパの琴線に、何かが引っ掛かった。
「酷な事聞くけど、その夢で人の名前とか聞いたりしなかった?」
「……え?」
「…ジャスパ?」
普通、ハーフフットは夢物語に食いつく事はしない。日常をつつがなく過ごす事を信条としている彼らにとって、冒険稼業にいるハーフフットの方が、種族の中では変わり者なのだ。
変わり者扱いされてると言えど、それでも彼らは、地に足の付いてない話題にはあまり興味を示さない。
「いや………あまり思い出したい内容ではない、し、ね。
ただ、どうせまた見るだろうから……注意しておくよ」
(また、見る?どういう意味だろ)
何気ないヘリオドールの一言を、ジャスパは拾い逃さなかった。
ドアが開く音と、呼鈴の音が重なる。
「今戻った…ヘリオドール?」
戻って来たのはフェンティセーザだった。
ほぼ引き継ぎを終えた今は、魔術師ギルドで、冒険者登録を済ませた魔術師達に弓の扱い方を教えている──魔術師だけが使える職業専用武器「魔術師の弓」を、呪文を扱える回数が減っても荷物扱いにならないようにと、地下迷宮攻略に使うらしい。
「お前、また眠れてないのか?」
毎晩毎晩やってきては自分を抱き枕にするフェンティセーザを、あまりの夢見の悪さに追い返しているのだ。
何故かは分からないが、一緒にくっついて眠っていると、フェンティセーザだけは自分の夢に巻き込んでしまう。それが嫌なのだ、などとは何故か口が裂けても言えないと妙な所でプライドが邪魔をする。
が、相手の空色の瞳はそんな事など見抜いていた。
「お客人。挨拶だけの非礼を許してほしい。
ハロド、トゥーリーン、アレンティーが帰ってくるまでここを頼む」
そして、問答無用でヘリオドールの顔の前に手を翳す。
くたり、と意識を失った身体をフェンティセーザが受け止めた。<睡眠>の呪文だ。
「無理矢理眠らせた。このまま寝せてくる」
そういって、肩を貸す形で奥へと連れていった。
「……あれで、付き合ってないんだって」
「……それわざわざ付け足す情報?」
ドアの向こうに消える姿を見送って、ぽつりと漏らしたハロドに、ジャスパが返す。
「一応、ね」
神妙な顔で、ハロドはこくりと頷いた。
────
酷い、夢だった。
翌日、ヘリオドールが見る夢を一緒に『観て』きたフェンティセーザは言葉少なにそう告げた。
「ねえ、兄さん、左頬…」
「それは今重要じゃない」
どうみても一発まともに拳を入れられた跡すらもどうでもいいと、フェンティスはハロドに一通の封書を渡す。
「ハロド、これをフォスタンド殿に届けてくれないか?照会を…頼む、と。
あとは、今はこれ以上は不確かなので言えない、とも伝えてくれ」
それは、夢の中で確認できた冒険者タグに刻まれた名前だった。
────
『見るな、見ないでくれ』
ヘリオドールの、聞いたことのない悲痛な叫びが脳内に木霊する。
夢の中、瓦礫の中にただただ残る城は──トーリボルの城。
たった四人に率いられた軍隊に冒険者達は壊滅させられた。
軍隊が掲げる旗の紋章は──『王都』。
率いる四体の騎影は、発掘と探索の側に席を置く『学府』の徒であれば、大抵の者が名くらいは知っているはずの──本来ならばそこにいるはずがない者達だった。
その中には、にわかには信じられない事に、フェンティセーザには憶えのある気配があった。
二人が『視た』一連の流れが何なのかは容易に想像が付く。しかし、それらを確定させる証拠は、証言も含めて一切合切が『存在しない』。
「……ヘリオドールにここを譲って正解だった」
アレンティーナと二人きりになって、フェンティセーザは忌々しげに言葉を吐いた。
「兄さん」
その顔を、とても似た苦悶の色を──復讐に取り憑かれた表情を、かつてアーマラットでトゥーリーンが浮かべた事があった。
あの時は、どうやって彼女を宥めたのかしら。
覚えてはいるけれど、忘れられないけれど、きっと今の兄には通用しない。
「あらあら、二人ともどうしたの?」
そんな所に、奥からひょっこりと顔を出したのは、マネラだ。
「酷い顔ね、フェンティス」
「マネラ」
「だめですよ」
制止を掛けようとしたフェンティセーザを遮って、近づいて来たマネラは、迷う事なく、フェンティセーザの手に自分の手を重ねた。
「今はまだよ、早いわ」
アレンティー、貴女もよ。
そう続けて、マネラは、アレンティーナの手も取った。
「あなたたちに今できる事は、その時の為に牙を研ぐ事。手立てを集める事。視野が狭まった時ほど、首を回して周りをご覧なさいな?」
いつもは物静かなマネラの言葉が、声が、二人の心に響いて沁みる。
「時が来ましたらね、きっと全てが噛み合って動き出しますよ。そして、動き出したらもう止まらないと思うのよ。ですから、それまでにやっておいた方がいい事を見つけ出して、そちらに心を砕きましょう?」
普段から感情を露わにしないフェンティセーザが唯一、仮面をかなぐり捨てるのは、故郷の森の事だけしかない。
故郷の森を想い、仲間を想い、森を滅ぼしたであろう『王都』を、間に合わなかった自分も含めて憎悪する──その瞬間だけだ。
森の滅びの時に何があったのかは、今は誰も知る由もない。しかし、王都の軍に蹂躙された土地が、民がどうなったかは、残された記録が物語る。
「今は、まだよ」
ぎゅ、と、小柄なノームの小さな手が、彼女よりも大きな二人の手を包み込む様に握られる。
「ともかくも、確定してから、動くことね」
はい、と、ぽん、と手の甲を叩かれて、二人は我に返った。
「さあ、朝ごはんはまだでしょう?作ってありますから、台所までいらっしゃいな」
いつもの口調で、いつもの声で、マネラが二人を食事に誘ってドアの向こうに消えていった。
「……引き止められて、しまったな……」
ぽそり、とこぼれたフェンティセーザの言葉に
「そうね」
アレンティーナが短く返す。
マネラは、ただひたすらに神への信仰を礎に生きる。そんな友の言葉は、路を外れそうになる時にこそ生きる。
二人だけではない、このパーティの要なのだ。
「あまり待たせると悪いから、先に行くわね」
「……ああ」
もう少し落ち着いてから行く、と返して、フェンティセーザは天井を仰いだ。
まだ何も始まっていないというのに、今は何も、考えたくなかった。
────
冒険者ギルド、ギルドマスターの部屋の空気がこれ以上に無いほど張り詰めた。
「フェンティスから伝言。
『今はこれ以上は不確かなので言えない』ってさ」
前日、ジャスパからヘリオドールの『夢』の話を聞いた時は、まさかのハーフフットからの情報に驚いたものだが、ジャスパですら、ここまで早く答が返って来るとは思ってもみなかった。
「『また見る』って言ってたけど…」
「どうやら、ヘリオドールの兄さん『夢を視るひと』みたいだね…」
ジャスパとハロドがひそひそと言葉を交わす。
全ては夢の中の話だ。何も証拠はない。
せめてその場所が判明し、冒険者タグなりなんなり見つかればまだ信憑性が増すのだが、王都の監視が確定している上、当時からの住人に聞くのも憚られるだけに身動きが取れようもない。
封緘を解いた中に記されていたものは、トーリボル二度目の壊滅時の、冒険者ギルドマスターとその仲間の名前だった──
冒険者ギルドから歩いてすぐ、大通りを挟んだ向かい側に、地下迷宮や遺跡の探索機関『学府』トーリボル支部は居を構えている。
そこがかつて『アーマラットの呪いの迷宮』を制覇、封印したパーティ『五行』の一時拠点ともなっているのは、パーティの魔術師フェンティスと司教アレンティーナが『学府』の徒である事からだ。
「おかえり、ハロドさん」
「おかえりハロド、早かったねぇ」
受付のカウンターから、支部業務の引き継ぎ途中の魔術師、ヘリオドールと、奥からハロドと長年共に暮らす相方のトゥーリーンの声がした。
「彼は?」
「ギルマスのメンバーのジャスパだよ」
「そう。初めまして、ジャスパ。私はここの管理人候補のヘリオドールだ」
「はじめまして、絡繰士の取りまとめのジャスパだよ…大丈夫?」
目の下に隈がはっきりと見えるヘリオドールに、ジャスパが思わず声を掛ける。
「あ、ああ。済まない。最近、夢見が悪くてね…」
ここ数日、戦争でたくさんの冒険者が嬲り殺される夢を見るのだと、ヘリオドールは頭を抱えた。
「戦争というよりも、虐殺に近いね。
夢によって出てくる人は違えど、戦いの中で死ねればまだ良い方で、生きて捕えられた者達は──」
性別も種族も関係なく、自死どころか狂うことすら許されず、神の奇跡にすら縋れないほど尊厳を根こそぎ破壊された末に、身包み剥がれ、首を切られ、一糸纏わぬ姿で野晒しにされる──
これが戦争だと、戦争に負けた側の末路だとしても、とても口に出来ない内容だった。
それが回数を重ねる毎に、鮮明になっていく。
「……ひどく、生々しい夢だよ」
正夢にならなければいいのだけれど、と、辛そうに頭を抱える。
「……」
その頭を、そっと撫でる人物が居た。
トゥーリーンだ。
「言うに言えないってのは、なんだい、そういった内容なのかい?」
「……申し訳ない、貴女には…あまり聞かせられない、内容かと」
内容が内容なだけに、女性陣にはとてもではないが聞かせられない内容だった。
言葉を尽くせばもっと悲惨だ。
ただの怖い夢であればいい。
そう思わずにはいられない、しかし──
「…ねえ」
ジャスパの琴線に、何かが引っ掛かった。
「酷な事聞くけど、その夢で人の名前とか聞いたりしなかった?」
「……え?」
「…ジャスパ?」
普通、ハーフフットは夢物語に食いつく事はしない。日常をつつがなく過ごす事を信条としている彼らにとって、冒険稼業にいるハーフフットの方が、種族の中では変わり者なのだ。
変わり者扱いされてると言えど、それでも彼らは、地に足の付いてない話題にはあまり興味を示さない。
「いや………あまり思い出したい内容ではない、し、ね。
ただ、どうせまた見るだろうから……注意しておくよ」
(また、見る?どういう意味だろ)
何気ないヘリオドールの一言を、ジャスパは拾い逃さなかった。
ドアが開く音と、呼鈴の音が重なる。
「今戻った…ヘリオドール?」
戻って来たのはフェンティセーザだった。
ほぼ引き継ぎを終えた今は、魔術師ギルドで、冒険者登録を済ませた魔術師達に弓の扱い方を教えている──魔術師だけが使える職業専用武器「魔術師の弓」を、呪文を扱える回数が減っても荷物扱いにならないようにと、地下迷宮攻略に使うらしい。
「お前、また眠れてないのか?」
毎晩毎晩やってきては自分を抱き枕にするフェンティセーザを、あまりの夢見の悪さに追い返しているのだ。
何故かは分からないが、一緒にくっついて眠っていると、フェンティセーザだけは自分の夢に巻き込んでしまう。それが嫌なのだ、などとは何故か口が裂けても言えないと妙な所でプライドが邪魔をする。
が、相手の空色の瞳はそんな事など見抜いていた。
「お客人。挨拶だけの非礼を許してほしい。
ハロド、トゥーリーン、アレンティーが帰ってくるまでここを頼む」
そして、問答無用でヘリオドールの顔の前に手を翳す。
くたり、と意識を失った身体をフェンティセーザが受け止めた。<睡眠>の呪文だ。
「無理矢理眠らせた。このまま寝せてくる」
そういって、肩を貸す形で奥へと連れていった。
「……あれで、付き合ってないんだって」
「……それわざわざ付け足す情報?」
ドアの向こうに消える姿を見送って、ぽつりと漏らしたハロドに、ジャスパが返す。
「一応、ね」
神妙な顔で、ハロドはこくりと頷いた。
────
酷い、夢だった。
翌日、ヘリオドールが見る夢を一緒に『観て』きたフェンティセーザは言葉少なにそう告げた。
「ねえ、兄さん、左頬…」
「それは今重要じゃない」
どうみても一発まともに拳を入れられた跡すらもどうでもいいと、フェンティスはハロドに一通の封書を渡す。
「ハロド、これをフォスタンド殿に届けてくれないか?照会を…頼む、と。
あとは、今はこれ以上は不確かなので言えない、とも伝えてくれ」
それは、夢の中で確認できた冒険者タグに刻まれた名前だった。
────
『見るな、見ないでくれ』
ヘリオドールの、聞いたことのない悲痛な叫びが脳内に木霊する。
夢の中、瓦礫の中にただただ残る城は──トーリボルの城。
たった四人に率いられた軍隊に冒険者達は壊滅させられた。
軍隊が掲げる旗の紋章は──『王都』。
率いる四体の騎影は、発掘と探索の側に席を置く『学府』の徒であれば、大抵の者が名くらいは知っているはずの──本来ならばそこにいるはずがない者達だった。
その中には、にわかには信じられない事に、フェンティセーザには憶えのある気配があった。
二人が『視た』一連の流れが何なのかは容易に想像が付く。しかし、それらを確定させる証拠は、証言も含めて一切合切が『存在しない』。
「……ヘリオドールにここを譲って正解だった」
アレンティーナと二人きりになって、フェンティセーザは忌々しげに言葉を吐いた。
「兄さん」
その顔を、とても似た苦悶の色を──復讐に取り憑かれた表情を、かつてアーマラットでトゥーリーンが浮かべた事があった。
あの時は、どうやって彼女を宥めたのかしら。
覚えてはいるけれど、忘れられないけれど、きっと今の兄には通用しない。
「あらあら、二人ともどうしたの?」
そんな所に、奥からひょっこりと顔を出したのは、マネラだ。
「酷い顔ね、フェンティス」
「マネラ」
「だめですよ」
制止を掛けようとしたフェンティセーザを遮って、近づいて来たマネラは、迷う事なく、フェンティセーザの手に自分の手を重ねた。
「今はまだよ、早いわ」
アレンティー、貴女もよ。
そう続けて、マネラは、アレンティーナの手も取った。
「あなたたちに今できる事は、その時の為に牙を研ぐ事。手立てを集める事。視野が狭まった時ほど、首を回して周りをご覧なさいな?」
いつもは物静かなマネラの言葉が、声が、二人の心に響いて沁みる。
「時が来ましたらね、きっと全てが噛み合って動き出しますよ。そして、動き出したらもう止まらないと思うのよ。ですから、それまでにやっておいた方がいい事を見つけ出して、そちらに心を砕きましょう?」
普段から感情を露わにしないフェンティセーザが唯一、仮面をかなぐり捨てるのは、故郷の森の事だけしかない。
故郷の森を想い、仲間を想い、森を滅ぼしたであろう『王都』を、間に合わなかった自分も含めて憎悪する──その瞬間だけだ。
森の滅びの時に何があったのかは、今は誰も知る由もない。しかし、王都の軍に蹂躙された土地が、民がどうなったかは、残された記録が物語る。
「今は、まだよ」
ぎゅ、と、小柄なノームの小さな手が、彼女よりも大きな二人の手を包み込む様に握られる。
「ともかくも、確定してから、動くことね」
はい、と、ぽん、と手の甲を叩かれて、二人は我に返った。
「さあ、朝ごはんはまだでしょう?作ってありますから、台所までいらっしゃいな」
いつもの口調で、いつもの声で、マネラが二人を食事に誘ってドアの向こうに消えていった。
「……引き止められて、しまったな……」
ぽそり、とこぼれたフェンティセーザの言葉に
「そうね」
アレンティーナが短く返す。
マネラは、ただひたすらに神への信仰を礎に生きる。そんな友の言葉は、路を外れそうになる時にこそ生きる。
二人だけではない、このパーティの要なのだ。
「あまり待たせると悪いから、先に行くわね」
「……ああ」
もう少し落ち着いてから行く、と返して、フェンティセーザは天井を仰いだ。
まだ何も始まっていないというのに、今は何も、考えたくなかった。
────
冒険者ギルド、ギルドマスターの部屋の空気がこれ以上に無いほど張り詰めた。
「フェンティスから伝言。
『今はこれ以上は不確かなので言えない』ってさ」
前日、ジャスパからヘリオドールの『夢』の話を聞いた時は、まさかのハーフフットからの情報に驚いたものだが、ジャスパですら、ここまで早く答が返って来るとは思ってもみなかった。
「『また見る』って言ってたけど…」
「どうやら、ヘリオドールの兄さん『夢を視るひと』みたいだね…」
ジャスパとハロドがひそひそと言葉を交わす。
全ては夢の中の話だ。何も証拠はない。
せめてその場所が判明し、冒険者タグなりなんなり見つかればまだ信憑性が増すのだが、王都の監視が確定している上、当時からの住人に聞くのも憚られるだけに身動きが取れようもない。
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