水の庭にて

遠海

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第1章

交流

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「――で、なんでお前は付いてくんだよ……」
「交流だよ、交流。一緒にコンペするんだからお前のことも知っときたいなって」
 本日も何事もなく開館を迎えた。平日ということもあり、客数は控えめでゆったりとした空気感が漂っている。まずは掃除でもしに行くか、と入り口から大水槽に向かう途中で、キョロキョロと不審な動きをする中条に出会ったのだ。

 特に相対する必要はないと判断し、声をかけることもなく素通りしたのだが、何故か中条は俺の斜め一歩後ろに付いてきた。
「俺のこと知ってもコンペでどうにもならんだろ」
「まあまあ」
 肩を軽く叩かれ、緩くあしらわれた。その態度に不快感を覚え、肩に乗せられた手をはたき落とした。しかし中条はまるで気にしていない様子で鼻歌なんか歌いながら、やはり付いてくる。もはや相手にするのも面倒だ。教育課の仕事はイマイチ分からないし、そういうやり方もあるのかもしれない。とっとと自分の仕事をこなしていくに限る。

 さっさと早足でバックヤードを抜けて、自分の担当現場に向かう。バックヤードはかなり複雑に入り組んでいる。通路は狭いし、階段も急。機械も多く存在していてあちこちの設備と絡み合い、大きな水槽を跨ぐように置かれただけの細い板は橋として使うには心許ない。新人の頃はよく迷子になりかけたものだ。だがもう3年目にもなると慣れたものだ。迷うことなく、大水槽の裏手にたどり着いた。

 畠中水族館が誇る"大水槽"。それは水量6千トンを超えるほどの大きな水槽で、ジンベイザメが悠々と遊泳できる大きさを持つ。その大水槽をぐるりと回る螺旋状の緩やかな下り坂が観客用の通路になっていて、360度大水槽を見学できるのだ。ちなみにここにいるジンベイザメは全長5メートルほど。これでもまだまだ子供で、甘えたい盛りの可愛い奴だ。人間にも慣れきっていて、飼育員が近づこうが一瞥もすることなく優雅に泳ぐその姿は、子供といえどもはや貫禄がある。大人になれば倍ほどにもなる可能性を秘めていて、まだまだ育つのが楽しみだ。

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