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2章 Secret Origins
【二十四】君を愛している
しおりを挟む「ここは来る度に構造が代わるって言うけど、
来る度に変えるなら、空間自体は接続されているでしょう。
だったら、あたしの血粉をほんのちょっとでも、シスマなら気づいてくれるわ!」
「私の血水魔法は、ジェーン様にアンカーをつけていますからね」
さっき視界を確保するフリで払った血を、
クレオの基地、神智の心臓に可能な限り広がらせた。
そうすれば、シスマがそれに触れられたら、場所がわかる。
血水魔法で血に干渉できれば、連鎖的にこちらに伝わる。
「わからないわ。それでも、ここは遠くて広い。
シスマが近くにいる証拠なんて……」
「どんな状況でも、シスマはあたしの所に来ようとするわ。
だって、あたしのことが大好きなんだもん。
もちろん、あたしも大好き」
両親には愛されなかったし、殺されかけもした。
だがジェーンは、「絶対に信じられる人」がいると思ってくれている。
それなら彼女は大丈夫だ。
何があっても、負けることはないだろう。
物言わぬ改造体の肉だけを武器に、
宇宙一のパワーを圧倒していた女性。
それが今や、二対一同然になっている。
「そう……わかった。
たしかに、この状態だと私には荷が重い。
それは認めようじゃないか」
綻びが増えていたクレオの話し方から、
気取った中性的な話し方が戻ってくる。
瞬間、外骨格が解かれて、膨大な数の肉触手が、
血の塊と化した僕と、それを操作するシスマに向かう。
穏やかで快適な生活のためにデザインされた空間は、
跡形もなく汚れて、壊れている。
クリーム色を基調にしたそれは、肉片の色にかなり似ていた。
「私は、貴女の業務を引き継いだ側です。
互角ではありませんが、人類としては比較的に近いでしょう」
シスマの血水魔法が、
天才の振るうシェイプシフターの変形と、互角に絡み合う。
相手は超常の頭脳の持ち主だが、
彼女には勝つ必要はない。防御だけでいい。
それならば、かなり拮抗できる。
「クレオ。これでわかったでしょう。
話を聞いて、何度でも何度でも言うけれども。
あたしは、貴女のやることを全部は否定しない。
ただ、やり方を考えましょう?」
「うるさいな。
私はただ、君を殺さなければいいだけなのを、勘違いしているだろう」
ジェーンの繰り返しの提案に対して、
やっと不愉快そうな感情を示した。
指を鳴らすと、巨大なスクリーンが新しい映像に切り替わった。
そこに映し出されたのは魔法陣。
素養が薄い僕でも、見覚えのあるものだ。
異なる次元にアクセスし、
熊王国を顕現せしめて以降のセイメイは、
世界各地を回って、異界、彼方へ呼びかける方法を集めていた。
そして、その過程で、術や儀式を秘匿する人々を殺してきた。
奴が使った陣の中でも、これは、そうだ。
初めて、ヒーローチームで挑んだ戦い。
セイメイが召喚した、超巨大生物との戦い……。
「ぐいえぇぇぇぇぇぇ!!!!」
クレオに繋がっていた肉触手に、無数の口が刻まれ、
それぞれが断末魔を上げる。
空間に大きな亀裂が走り、開かれる。
向こうには、巨大な縦割れの眼球が覗く。
久々に見た。
見知った顔だった。
人の顔と名前は忘れないのが、僕の自慢だ。
「あれは……ゾル=イソムって邪神だ。
僕一人では勝てなかった存在。
地球三つ分の大きさがある」
「な、何その頭の悪い大きさ表現……!」
ただならない気配を察して、ジェーンも声が震える。
寝床で聞けば大法螺だろうが、
実物と知って目の当たりにすれば、ただ圧倒されてしまう。
赤黒いナマコのような、
生き物の鬱血した舌のような、
太い血管が浮き出た触手が、空間の奥から、
クレオの肉腫を剥ぎ取って持って行く。
存在レベルの危機を感じて、激しい収縮を繰り返す
シェイプシフターの塊を、
口盤の中央に開いた裂け目に、放り込んだ。
ゆっくりと咀嚼の動作をすると、
少しだけ、亀裂から身を離す。
全体像が、わずかにだが想像しやすくなった。
それは、あまりにも巨きなイソギンチャクだった。
取ったシェイプシフターたちと比べることで、
僕の言ったことが本当だと、わかってもらえたんだろう。
ジェーンとシスマが、石像のように固まった。
未知のものというのは、
必ずしもワクワクだけをくれるものではない。
あまりにも予想外すぎると、
これまでの人生が丸っと否定された気分になる。
または、常識が否定され尽くして、
理性を保てなくなってしまう。
ドラゴンどころではない、
宇宙的巨大生命体が今にもこちらに乗り込んできそうだというのは、
人生の大半を非常識に生きてきたジェーン・エルロンドでも、
卒倒するほどのものだった。
「これだ。シニスター・セイメイは、惑星そのものを砕くものも呼び寄せ、従える。
シェイプシフターに崇拝と詠唱をさせ、贄にもなってもらえば、
不死なのだから、無限にこちらへ召喚できる。
巨いなるものを」
「い、祈りは更生のためって言ってたじゃない!」
「もちろん。しかし、祈りというのは、自分の領域外のことを何者かに委ね、
意に沿わぬ結果でも、粛々と受け入れる覚悟が整うのが大きな効果だ。
つまりは、祈る対象はなんでもいい。
せっかくなので、邪神に祈ってもらおう」
彼女の言うことは道理的には、論理的には、正しいかもしれない。
しかし、頭では納得できても、感情面では納得できない。
いくら死刑囚といえども、騙して生贄にするのは、
人道を無視しすぎている。
少なくとも、僕の感覚ではそうだ。
「さあ、出てこい」
イソギンチャク型の邪神の口蓋。
その瞳が、弓なりに引き絞られた。
こちらを見たのだと、わかる。
あまりにも埒外の存在に睨まれたことで、
シスマは気絶し、
ジェーンも倒れかけた。
よろけて、バランスを崩す。
ここで意識が途切れたら終わりだ。
何をされるかわかったものではない。
しかし、彼女には今来ようとしている生き物への対応が、
わからないはずだ。
僕が声を出しても、わかってくれるかどうか……。
「コッ、クルァァァ、コッコッ。ズィー」
気絶しかけたジェーンの口から、
この星の言語ではないものが出た。
空間の切れ目の向こうにある生き物が、
彼女の発言に反応して、身動ぎした。
驚いた。
僕が助言するまでもなく、
最適解を選んだ。
「その言葉は?」
「言葉よ。スゲーマンが言ってたわ。
ヒーローの本質は対話だって。
スゲーマンは、倒すだけじゃなくて、
ゾルなんとかの言語を、しっかり勉強していたのよ!!
やばい、死ぬと思ったら、頭に浮かんできたわ!」
前世の知識は、命の危機に引き出されるものらしい。
それならば、この事態に、
僕が持っていた知識をジェーンが引き継ぐのは、自然だった。
以前に彼女に伝えた心得を、
覚えていてくれていたなんて。
「馬鹿な。奴の知識には、そんなものは……」
「それがスゲーマンよ!
誰のことも信じては痛い目を見て、学習しないの! 百万年間!!
星より大きい生き物の言葉も、学ぼうとして当たり前だわ!
コッ、コアァァァァーーーー、ケルットルゥ」
ジェーンの発言に解説を付け足すなら、
生贄を捧げられたとしても、サイズ比で言えばスルメ未満だ。
それでも、わざわざ次元を超えて来るということは、
ゾル=イソムという者は、この星に目当てのものがあるか、
気質的に友好的な可能性が高いと、僕は考えている。
実際に、僕が生前に分析しておいた彼への言語は、
しっかりと機能していた。
「さあ、その肉の塊を、こっちにぺってして。
もう、ここにいても仕方ないから、
今日はお開きしましょう。お家にゴーよ」
優しく語りかけると、
ゾル=イソムは、噛み噛みして遊んでいた
シェイプシフターの塊を吐き出した。
クレオにとっては、
コラテラルダメージも厭わない、
セイメイの知識を活用した、
まさに最終手段だったのだろう。
それが、僕の知識一つで対処された。
セイメイという、最悪の天才に人生を翻弄されてきた彼女にとっては、
認め難い結果のはずだ。
「たしかに。セイメイは、使役することしか考えていなかった。
だが忘れてはいないか?
私なら、それだけ喋ってしまえば、
たちまちに学習と実用ができると!
イズィ、ジズズ、ルゥラァ!」
セイメイの知識を詰め込むに足る器。
それがクレオである以上、
僕が学んだことを、圧倒的な百倍速で追い越すのは、
当たり前のことか。
こちらは、どうしても秋田訛りの邪神語だったのに、
クレオと来たら、早速、流暢なネイティブ邪神語を使っている。
人間が発音できない音を、
知性を使って再現してみせているのだ。
ジェーンに、「帰っていい」と言われて離れかけていたのが、
クレオに「来い」と言われて、接近を再開する。
ゾル=イソムに、裂け目を超えられる。
誰も立ち向かおうと思えない、質量差だ。
事情を知らないと、
対処できないままに、蹂躙されてしまうだろう。
「もう、なんでもいい!
すべてを平らにしてしまえ!
私が、私が一人残れば、どうとでもなる!
前世の知性が、最強を証明してみせるんだ!」
亀裂から、ゾル=イソムが触手をねじ込み、
通れる穴の大きさを広げた。
無理矢理に空間を歪められる余波だけでも、
国に災害が通ったかのような爪痕が、刻まれてしまう。
もう、全てを擲つ気分のクレオが叫び、
破滅を呼び寄せる。
「両親に殺されかけた生まれ、
愛する人を、ずっと殺したくなる枷!
全部を壊せ! 壊してしまえ!」
「これが最後なんだよね!?」
地球三個ほどの大きさの生き物が、
今にも、こちらに上陸しようとしている。
そこに、クレオは、思いっきり拳を振りかぶった。
人を殴れない彼女が、最もやらない動作。
肩、肘、拳を真後ろにやり、
腰を落として、後ろ足に全力を籠めて、解き放った。
「そうだ、ジェーン!
僕の力を、思いっきり振るうんだ!
衝撃はすべて向こうが引き受けて、こちらは問題ないから!」
「よおし!
これが終わったら、あたしを信じて、話を聞いてもらうわ!」
どれだけ下手を打ったり、知略で不意を討たれても、
僕には、世界最強クラスのパワーがあった。
めったに放たないものだけれども、
放つ時は、一切の遠慮をしない。
ジェーンが、スゲーマンの、
僕を前世として使い、
セイメイを前世にした少女の前で本当の力を出した。
しかし、人を殴ることの不快感にも耐えられないジェーンにとって、
邪神を殴った不快感というのは、
失禁モノの嫌悪感があった。
はじめは、ぬめった悪臭を放つ粘着液と、
殻を剥いた海老を叩いたような弾力。
それが、暴力に晒されたと判断すると、
たちまちのうちに、
無数の強固な血管が浮かび上がっては凝集し、
網目になって固まった。
「…………!!」
泣き言を言ったら、
その場で嘔吐すると悟ったのだろう。
ジェーンは、唇を噛みちぎる勢いで噛んだ。
正しい判断だ。
それに、勝手に連れてこられた人に、
不愉快だから嘔吐しました、というのは失礼にあたる。
相手はあくまで、お呼ばれしたから来た人だ。
「知っているかい?
いっそ、私を倒せば、それで──」
「それをしても無駄だからよ!」
全力の僕でも、骨が折れる。
ジェーンの骨が
負荷に負けて、本当に折れていく、
そんな質量を、押し返そうとしている。
リスクを減らしたいならクレオの言うように、
交渉者を先に倒せばいい。
だが、それは選ばない。
「あなたに、信じてもらいたいの!」
歯を食いしばって、燃える。
空間の罅が、あちこちに繋がり、
宇宙一の天才が、
孤独に浸るための要塞が、崩壊していく。
ここが崩壊しきれば、
安全装置が作動し、
僕たちは地上に出ていく。
その前にあの巨大な人にはお帰りいただくしかない。
両手を握りしめ、
天才の顔に、焦りと葛藤が強く燃える。
「なにを信じるんだ。
前世に、
自分のために、君も害そうとする、
私の、どこを」
「だって、貴女にずっと憧れていたもの!
貴女に会えたのが、本当に嬉しかったもの!
ここで頑張れば、
あたしは、あなたと対等だって、証明できる!」
根拠はないが、
ジェーンはそう信じている。
ならばそれでいい。
彼女は、やりたいことを信じる時が一番強い。
この国の人なら、
みんなが知っていることだ。
ジェーンの髪が、
僕が本気を出す時にそう成ったように、
金色に染まっていく。
双眸が黒く光り輝き、
力が増していく。
僕の力を、再現している。
「無理だ。スゲーマンでも、
一人では、対処できなかった!」
「こっちは、二人よ!
できるでしょわあたしには!
スゲーマン!!」
「できる!」
「やめろやめろ。
無根拠にムチャをさせないで!」
「根拠はある!
ジェーンを信じる!!」
「彼女が心配じゃないのか!?
普通はこのまま自壊して死ぬ!!」
聖女の親友が、血相を変えて
やめるように訴えかける。
前世を無理に再現したことで、
ジェーンの体が、
崩壊しようとしている。
クレオの分析には、まったくの不足がない。
さすがだった。
星を砕けても、
星の三倍の大きさを押し返すのは、とても大変だ。
それも、僕の力をまだ受け継ぎきっていない彼女に。
「本当!?」
「そうだ!
このままだと、君は、全身が砕けて死ぬ!」
「死ぬと思う!?」
「死なない!!」
「なんでだ!」
「僕がついている!」
ジェーンの全身に罅が入って、
体の表面が、粉状になって剥がれていく。
身体の欠片が硝子のように、
ぱらぱらと砕けていく。
向こう側の宇宙の光を照らし、
それは、あの日の、
彼が、何もかもを曝け出して、大泣きした時の、
光の欠片だった。
「そんな言葉で──」
「できるわ!
だって、この人、
あたしは聴こえないのに、
ずっと、心のなかで、挨拶してきたもの!
あたしが、道を踏み外さず──
に、いられたわけじゃなくても、
処刑されかけといて何とかなったのは、
きっと、この声のおかげよ!
さあ、スゲーマン。
ここで、ガッツリとアガるやつを!」
凄いフリをされた。
エドガーもだが、
本人が有能だから、他人にも最上級のハードルを課すタイプか。
責任重大だ。
こういう時に、正しい声掛けをできる人間はそういない。
ある意味で選ばれし存在だ。
僕は、声をかけられて、燃え上がる側であり、
燃やす側ではない。
しかし、時間がない。
こういう時には──。
──どうして
さっき思い出したばかりだからか、
彼の細くて脆い背中が、
瞼に強く浮かんだ。
夕闇が、堕ちる太陽に引きずられ、
黒く染まろうとしている。
──どうして、僕は、こんなに、ひとりなんだ。
あの時、どんな言葉をかければ……。
僕はいつも考える。
人生で、一番ってくらいに、考えてきた。
「君のことを、ずっと見てきたよ。
だって、ずっと、一緒だったからね」
……最悪な言葉が、浮かんだ。
「よし!
言われるまでもねえこと、言われた!」
ジェーンには、
まだ、刺さっていない。
これしか、浮かばない。
凡人な思考の自分を、
これほど、呪ったことはない。
何も、浮かばない。
この言葉しか。
「だから君が、
なんでもできる人だって、知っている。
なにも不安に思っていない」
「いいわね!
どんどん、来い!」
拳にかかったパワーが、
倍増した。
効果を、発揮した。
「君を、愛している。
君は、特別だ。
君を、いつでも、誇りに思うよ」
言い終えた。
なんてことのない、
両親からの受け売りだった。
家業を継げないと言われた僕を、
両親が慰めた時の言葉だった。
僕に効いた言葉であり、
親に言われて嬉しかった言葉でしかない。
迷った時は、都会で孤独を感じた時。
この言葉が……
いつも僕に、力をくれた。
ジェーンにも
通じるかなんてわからない。
どうしてこんな時に、
親からの言葉しか出てこないんだ。
自分の人生経験の浅さを呪う。
言われた彼女の目が、
まん丸くなり、
動きが止まった。
「…………………!!!!!」
何かを発言するより先に、
彼女の内側から、
無限を思わせるパワーが、弾けた。
一瞬の静止。
それから全身が、黄金に光り、
彼女の全身から、エネルギーが放出された。
口から純白の火炎が放たれ、
一つのボディに、
封じ込められないエネルギーが、
彼女の口から、焔となって溢れていく。
隕石も、彗星も、惑星も、
砕くことのできる腕力が、
ゾル=イソムを押し出した。
別の次元の
無限に広がる宇宙の奥へ、
慣性をつけた。
「殴って、ごめんなさーーーーい!」
溢れ出る焔を、一極に集中させ。
ジェーンは、白い焔を、出し切るまで、吐いた。
手を振っての謝罪も忘れない。
完璧な決着の付け方と、言えるだろう。
壊れた空間が、同時に、崩壊し、
紫色の、澄んだ空気が、流れてくる。
気持ちの良い野外に放り出された。
戦いが終わり、
意識を残して、立っているのは、
ジェーンとクレオの、二人だけ。
すべてを出し切って敗北したクレオは、
目を閉じて、相手の措置を待つ。
その表情は、死を望んでいるようにも思えた。
「終わったわ!
見たでしょう、クレオ。
あたしって、貴女と同じくらいに強くて、
とっても凄いのよ!」
力こぶを見せて、
自分のパワーをアピールした。
砕け始めていた身体は治っていない。
しかし、彼女には、
親友に胸を張る方が重要だった。
「そうだね。ここまで、やれると思わなかった、私の……。
いえ、スゲーマンを見くびりすぎた、
私とシニスター・セイメイの負け。
またしてもね」
「じゃあ、もうわかったよね?」
クレオの両手に手を載せ、
そのまま強く引き寄せて、抱きしめた。
呆然とした彼女の耳元で、
力強く、言い切る。
「あたしも、あなたの研究に混ぜてね」
「…………どういうこと?」
まったく理解できず、
天才が首を傾げた。
「だからね?
不老不死の実験をあたしの体でやるの。
この戦いでもわかったように、
このあたしより、頑丈な人なんていないもの。
あたしの体に効くものは、
あたしに実験しないと、作れないでしょう?」
「それを証明するために、
あんなに拘ったの?」
信じられない、というように、
クレオが呟いた。
僕は理解できている。
ずっと、ジェーン・エルロンドは、
これを胸に、クレオと戦ったのだ。
ずっと、背中を見て、尊敬してきた、
クレオという天才と、並ぶために。
「……永遠を生きてもいいの?」
「それはちょっと、イメージできないけれども。
刻むことだって、できるんじゃない?
不老不死になってから、
寿命を千京年、百兆年、十億年って感じに縮めるとか。
スゲーマンが、百万年生きたんだから、
あたしは、百倍の一億年を目処にしましょう。
できる、できる」
それ、目処にする単位かな?
まあ、僕も百万年生きても、
狂ってなかったみたいだし、
百倍もいけるのかもしれないなあ。
しかし、百万年だの、一億年だの、
生命の寿命にはなんて非現実的な単位だ。
ジェーンでないと、
気軽にトライしようだなんて、
絶対に言えない。
「あたし達が初めて会った時のこと、覚えてる?
ゴーレムに入力する、
プロトコルの話し合いをしていたやつ。
量産化のために何度もムチャをしていたわ」
「そうだね。覚えている。
当時は、僕はまだ、君に死んでもらってもいいと思っていた」
「あなたが止めるのを聞かずに、
とにかく、一番頑丈にしようって言って、
ゴーレムを起動したわ。
案の定、暴走して襲いかかってきた時、
身を挺して、助けてくれたじゃない。
その時のデータで、あたし達はゴーレムの量産化ができたし、
食料革命も完全に成功したわ」
「よく覚えている。
あの時、死にかけていても、なお私を信じる、貴女を見て、
私は──なんだか希望を持てた。
前世から離れられるって」
弱々しく、眉を落として、
罪悪感に打ちひしがれる、
クレオの手を取った。
「今度は、あたしが助ける番だわ。
貴女のやりたいことは、絶対に、叶えてあげたい。
だから一緒にやろう?
あたし達って、特別な、ふたりだもん!」
「そうだね」
クレオの両目に、涙が浮かび、
静かに流れ、手の甲で、拭う。
「ずっと、一緒にいてくれる?」
「もちろん!
だって、子供の頃から、
一緒じゃないの!!」
そう言って、
二人は笑い合う。
僕は、ただ、黙って見守る。
今のこの気持ちを表すには、
僕はあまりにも単純な性格だった。
ただ、夜明けを一足飛びした、
朝焼けだけが、
僕の喜びを物語っていた。
取りあえずは、
浮浪者の彼との食事には、
間に合いそうだ。
よかった。
約束の待ち合わせに、
遅れたりするのって、
よくないしね。
「一件、落着だ」
僕は目を閉じて、
この空間と時間を、
二人だけのものにした。
関係ないけどジェーンって、
口から火を吐く適性が、あったんだなあ。
僕は吐けないから凄いや。
これも個人差だな。
0
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