ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。

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生粋の貴族夫人・フィーリアは、強い瞳の彼らに出逢う。

第5話 生まれた願いは儚い夢想(2)

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 きっと彼等のお陰なのだろうな、と思いながら二人を盗み見る。

 彼等がこうして一緒にご飯を食べてくれなければ、そもそもあの場所で彼等と出会えていなければ、私はきっと今も尚、全てを失い行くあてもなく、それどころか心の置き場所さえ分からなくて、どうしていたか分からない。


 まだ外では雨がザーザーと降っている。温かな火の前でこうして雨宿りをさせてもらえる幸運に、目を閉じた。

 この場所はひどく心地よい。
 埃っぽいし、雨漏りもしている。隙間風だって吹いているけれど、ここはとても温かい。

 ――ここに、居たいな。

 心の中にポツリと生じた願いが、ただの仄かな夢想に留まって良かったなと思う。

 彼らの中に入れてもらえるだなんて、そんな高望みをしてはいけない。
 彼らは単に、惨めな私に同情をしてここに連れて来てくれただけなのだ。きちんと自覚していなければ、傷付くのは自分である。

 ザイスドート様に棄てられた痛みさえまだ忘れられていないこの心で、もしまた何かに失望したら。せっかく私を助けてくれた彼らに、要らぬ濡れ衣を着せたくはない。

 体と共に、心も雨宿りさせてもらった。だからもうこれで十分だ。
 彼等みたいな子供達がを普通に生きているのだ、大人の私が出来ないなんて弱音ははけない。

 もう誰にも必要とされてはいない私だけど、生きていこう。身を寄せる場所もないけれど、それでもどうにか、私なりに。

 ご飯を食べたら出ていかなくては。
 まだ婚姻契約が有効である以上、伯爵家との縁は切れていない。もし万が一私の身に何かがあった時に彼等が近くに居たら、迷惑をかける事になるかもしれない。

 親切にしてくれた彼等だから、私の突然の提案を受け入れてくれた優しい彼等だから、余計な事に巻き込みたくない。

 だから食べたら、素性が知れる前に早く。
 そう思うのに、何故だろう。瞼が全然上がってくれない。

 手のひらの、食べかけのジャガイモの熱がポカポカと温かい。パチパチ、ピチョンピチョンという音が、耳にとても心地よい。
 多分たくさん歩いたから、疲れてしまったのだろう。まるで体に掛かる重力が倍になったかのように重たくて、床に沈むような感覚を抱く。

 あぁ、行かなくては。そう思うのに、意識がゆっくり落ちていった。
 どうしても抗う事の出来ない睡魔の端で、二人の話し声が聞こえた気がした。

「ねぇ良いの? なんか寝ちゃいそうなんだけど」
「はぁ……まぁしょうがねぇだろ。今日の宿代替わりは貰ったし、外で寝たら間違いなく朝には金を盗まれてるぞコイツ。なら置いといて、また恩返しにせびれば俺達は明日も飯が食える」
「確かに合理的だけど、本気で言ってないでしょソレ」
「うっせぇよ」

 クツクツと笑うノインの声に、ディーダがフンッと鼻を鳴らした。
 二人の言葉の真意を考える前に、私の意識は深く落ちた。

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