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寝落ちてしまったフィーリアは、一宿の恩を彼らに返す。
第9話 夢を見てはいけない(2)
しおりを挟む思えば昔は、実家の食卓やレイチェルさんがまだ来る前のザイスドート様と小さなマイゼルと三人で囲んだ食卓は、当たり前のように幸せだった。
しかしレイチェルさんが来て、少しして、最初は時間をずらしてご飯を食べさせらえていたのが、気が付けば食卓に座る事すら許されなくなっていた。
屋敷はもうきっと、私の事なんてすっかり忘れていつも通りの生活をしているのだろう。もしかしたら、私が居なくてむしろ清々としているのかもしれない。
そんな可能性を思ったところで悔しさや悲しみを抱けないのは、彼らの事をもう好きでは無くなってしまったからなのか。
分からない。
分からないけれど、懐かしさと同時にせっかく忘れていた『人と関われない寂しさ』まで思い出してしまった。
ご飯を食べる、手が止まる。
あぁいけない。ここに居ると思い出す。家族との幸せを、自分でもそんな家庭を作りたいと思っていた昔の自分を、彼となら出来ると思っていた自分自身を。
夢見てしまう。
でもその夢は、叶わない夢。そもそも彼らも私みたいな素性も知れないお荷物を、いつまでも抱えてたくはないだろう。
拒絶されるのは怖い。それならば、自分から離れた方がいい。
「……ご飯を食べたら、ここを出ます」
気が付けば、ポツリと言葉を零していた。
まだどちらの肉がいいか論に花を咲かせていた二人は、顔を見合わせて黙り込む。
「お前、行く当てがあるのかよ」
「それは、無いけれど……大丈夫です。私だって大人ですし」
「そんな非常識な状態でかよ」
バカにするように、ディーダがフンッと鼻で笑った。
「まさかその辺で寝泊まりしようとは思ってないよな?」
「お二人がやっている様に、とりあえずはどこか空き家を探して住み着こうかと……ダメでしょうか?」
「そりゃぁダメだろ。お前みたいな弱っちいのなんか、すぐにその辺の男どもの慰み者にされるか、身ぐるみを剥がされるか。そうでなけりゃぁ奴隷商売の恰好の餌食だな」
「奴隷商売は、この国では禁止でしょう?」
「はぁ? 法律がどうしたよ」
「忘れたの? この領地では色んな事がほったらかし。もちろん大々的にやってりゃ捕まるだろうけど、実際にそういう事をしてるやつは大体上手く隠れてる」
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――いいえ、それよりも今は目の前の事よね。
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