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第三章:オルトガン三兄妹、報告ティータイムに興じる。

第4話 満足感に包まれながら飲む紅茶は一段と美味しい(1)

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 『革新派』の誰もが侯爵家が権力を握ることに好意的というわけではない。
 中には彼に派閥内の権力を持たせることに疑問を持つものだっている。
 おそらくそういう者達が、ヘンゼル子爵夫人から得た情報を広めているのだろう。

 少なからずそうなるだろう事は、セシリアもあらかじめ想定していた事だった。

 しかし。

(分裂するほどにまで……? これはちょっと度が過ぎてる)

 思わずそう、独り言ちる。


 想定よりも随分と大ごとに発展してしまっている。
 その原因は、間違いなくケント達の動きにあるのだろう。
 彼の動きがヘンゼル子爵夫人が打ち出した噂話を結果的に大きく底上げしてしまったのだ。

 そしてそれは、セシリアの中での唯一の想定外だった。

「ヘンゼル子爵夫人の名は、矢面には――」
「それは大丈夫、彼女の名前は出ていないから安心して」

 彼女がしたのはあくまでも噂話であり、糾弾じゃない。
 その発生源を追うのは難しいだろう。

 焦ったセシリアの心をすぐさま拾い上げてくれたのはキリルだ。
 そんな兄の言葉に、セシリアは大きく胸を撫で下ろす。


 もしもヘンゼル子爵夫人の名が出てしまっていれば、彼女が実質侯爵家に牙を剥いた形になる。

 子爵が、侯爵にだ。
 それがどれだけ不利で危険な事か。
 そんな事はアホでもわかる貴族界の常識だ。

 セシリアは、なにもヘンゼル子爵家を貶めたいが為にこんな策を取った訳ではないのだ。
 どちらかというと半ば強制的に協力してもらっただけであり、そんな相手が自分のせいで破滅するなどというのは、あまりに理不尽で残酷だ。
 少なくともセシリアは、そんは展開など望みはしない。

 そしてきっとその事を、キリルも分かっていたのだろう。

(だから、答えがあらかじめ用意されていた)

 それは正しく、兄が末妹を気遣ってくれていたからに他ならない。
 でなければ、人の生死を語る言葉の重さを正確に理解しているだろう兄が、あんな自信満々に先の言葉を言える筈がない。

 そう思うと、思わず頬が緩む。


 そんなセシリアを眺めながら、マリーシアは口元に手をやりクスリと笑った。
 そして先ほどの続きを話し始める。

「現在、他貴族たちの『侯爵離れ』はとても顕著です。一連の噂は沈静化しないどころか、むしろ肥大化し、日に日に『王族案件』になる可能性を高めています」

 そう言ったマリーシアは、実に蠱惑的な笑みを浮かべていた。

 悪い事を楽しんでいるというのに、妙に人を惹きつける。
 そんな不思議な魅力が垣間見える笑みだ。

「結果として、現在『革新派』の貴族達の殆どが、今や侯爵家と距離を置きつつあります」

 幾ら同じ派閥だからと言っても、わざわざ『王族案件』に自ら足を突っ込みたいと思う貴族なんてそうそう居ないでしょうからね。

 そんなマリーシアの言葉は、セシリアに「確かに」と思わせた。
 
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