女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

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第10話 彼が私を呼んだ理由(わけ)(3)

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 そんな事を言われる筋合いはない、と一言言ってやろうか。
 そう思って口を開きかけたところで、ジョンが「ケインズ様」と止めに入る。

「私が彼女の言葉を貴方に伝えたのは、こんな事を言わせるためではありませんよ。私は『領地にとって有用な情報だ』と思ったからこそ貴方に伝え、貴方も『もし本当なら聞き逃せない』と思ったからこそマリーリーフ様をお呼びしたのでしょう?」
「ふんっ、それこそ『もし本当なら』だ」
「ではきちんと吟味なさいませ。この時間を設けた時点で、貴方様はご自分の剣の鍛錬の時間とマリーリーフ様の歴史研究の時間を等しく消費しているのですから」

 ジョンにそう苦言を呈されて、彼はチッと舌打ちをした。

 少なからず彼の言葉を聞いて、自身を顧みたのだろう。
 キッとこちらを向いたかと思うと、ちょっと嫌そうに再び口を開く。

「未開拓の土地の切り開きについて、ジョンに『慎重にやった方がいい』と言ったらしいな」
「えぇまぁたしかに。しかしそれが?」

 先程向けられた言葉のせいで、どうしても言い方がツンケンとしてしまった。
 しかし相手もそれは相手も同じだ。
 むしろ向こうからしてきたのだから、これでお互い様だろう。

「……何故そう思う」
「過去の歴史から。とはいえあくまでも可能性に過ぎません。ケルビン様がもし歴史を『過去の遺物』『朽ちた木偶』だとお思いなのでしたら、気にする程の事もありませんよ」

 それらは昔社交界で、ある令嬢から半笑いと共にもらった言葉だ。
 私は別に、私自身の事を言われても大して気にしない。
 しかし私が好きなものを、過去の人々の生きた証であり軌跡でもある歴史を蔑ろにする言葉には、流石に寛容ではいられない。

 彼の態度から、その時の気持ちを思い出した。
 どうせ彼も似たような事を思っているのだろうと思った。
 だから彼が言う前に牽制してやろうと思って先出ししたのだけど、彼はそんな私の予想の外にいた。

「俺がいつそんな事を言った」
「え」
「俺はお前の事が信用できないのであって、その裏にあるものに不信を抱いている訳ではない。そのような事を言った事もないはずだ。誰の言葉かは知らないが、勝手にソレと同じカテゴリーに入れられるのは迷惑だ」

 少しムッとしたように、彼は当然のようにそう言った。

 意外だった。
 所々見え隠れていしてる彼の女嫌いから、てっきりすべてのものに偏見を持って物事を見る人なんだと思い込んでいた。


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