女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

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第11話 『歴史狂い』の歴史的見地と確固たる意思(2)

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 実はそれは、私が歴史研究をする中で出会った『公にされなかった事実』だ。
 
 その当時の領主は、現在は跡目を譲ってこそいるもののまだ存命だ。
 現王はきちんとした人だからきっと国に報告すれば、当事者はそれなりの叱責を受ける事になるだろう内容である。

 だからこそ彼に地名まで言う事は憚られる。

「……私は歴史を研究したいのであって、歴史のあら捜しをしたい訳ではありません。歴史研究を告発に使いたくはないのです。ですから他言無用という条件でしか、お話することはできません」
「ジョン」
「はい。私は今何も聞いておりません」

 即答したジョンに頷いて、彼は私を真っ直ぐに見据えた。

「これで聞いているのは俺だけだ。俺にも告発の意思はない。俺の敵は隣国だ、要らぬ事をして中にまで敵を作りたくはない。そもそも今の俺に他言するような外への友好もない」

 彼の目はとても真剣だった。
 嘘のないまっすぐな目だと思った。
 説明できない感情が「彼は信用していい」と言っていた。
 だから自然と口を開けた。

「リザンドーマです」
「あの土地はたしか湿地帯だったな」
「はい。しかし地すべりを起こした場所は、あまり傾斜がありませんでした。そのため当時の領主もまさかそんな事になるとは思っていなかったらしく、現場も領主館も混乱し、色々な対応が後手に回った……という事が、一文官の手記に綴られていました」

 公には、小規模な事故として片付けられている案件だ。
 王城への災害報告も成されなかったが、それについてその文官は「災害ならば国からの援助も得られただろうに、自分の判断と欲をかいた開墾の結果の惨事を隠したかった領主の思惑でなかった事にされた。伝えていればもっと多くを救う事もできたかもしれない」と、悔恨と共に綴っていた。

「他にも、開墾する前にはその用途で使える土地なのかを調査した方がよいと思います。私は領地経営に関してはズブの素人ですが、また別の土地では『開墾後に作物が育たない土地だと気がついて更なる労力を強いられた』という歴史も存在します。ララントの観光地になっている花畑などはその結果の好例だと言えますが、偶然が重なった結果ですから」
「開墾がただの労力の無駄になる事もあるという事か」
「はい。そうでなくとも『今までずっと作業の手がなく未着手だった』とジョンが言っていましたから、せっかくわざわざ手を空けたのにその結果が振るわないとなれば、流石に携わる方々が可哀想かと……」


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