6 / 55
第一章:我が領地は『国』になります。
第6話 メイドのリズがどうやら心配しているようです。
しおりを挟む王都から領地へと返ってきた私は、優雅に紅茶を飲みながら一枚の書面に目を通していました。
領地に返ってきたその日の内に、お父様は周辺諸国に独立宣言を出したようです。
お父様は、私よりも余程慎重なお方ですから、おそらく抜け目は無いでしょう。
ですからそれについては全く気にせず、私は領地……いえ、もう国ですね。
国の経営の方へを注力しているところです。
地区毎の報告書の一枚を読み終えて、私は小さく「ふぅ」とため息を吐きました。
読むのも頭を使うのも、実はそれほどしんどくはありません。
しかしそれでも、ずっと同じ体勢でいる事には疲れます。
切りが良いので、少し大きく伸びをして肩を回します。
すると私付きのメイド・リズがこんな事を聞いてきました。
「お嬢様、あの国は大丈夫でしょうか?」
彼女の言う『大丈夫』が一体どういう意味なのか。
彼女自身はその詳細に言及しませんでしたが、私には何となく分かります。
「私達が抜けた後のあの国はやっていけるのでしょうか?」ではなくて。
「大丈夫よ、あちらはこちらに絶対に干渉なんてできないから」
「そうですか? 万が一あちらが独立を不服に思って兵を挙げたら……民は戦いを強いられます。その事にお心を傷めないお嬢様でもご当主様でも無いですから、私はそれが心配で……」
「ありがとう、リズ。でもね、これは何も希望的観測という訳ではないわ」
不安そうに眉をハの字にしたリズに、私は笑ってそう言います。
「だって我が国の独立は、王太子殿下から「お前達は不要だ、養ってやっているのだ」と言われたからです。つまりこれは、それを受けて「王族の方を煩わせてはならない」と思った我が領が殿下のご期待に沿うようにした結果でしかないのです。ならばわざわざ気を効かせた私達に、あちらが不服を申し立てるなんてとても変な話でしょう?」
少なくとも散々あの場でこき下ろし「要らない」と言っておきながら、いざなくなったらそれを拾いに来るなんて。
そのような威厳もへったくれもないような事を、体裁を大切にしなければならない王族がまさか出来る筈もありません。
唯一懸念すべき事は、あの場でのやり取りを一切合切なかったことにされる事ですが。
「私と一緒にあの場に居合わせた貴方なら、もしかして気がついていたのではない? あの場に交換留学中の隣国の王女・ジェイン様がいらっしゃったのだけど」
「はい、それは勿論です」
隣国・エインスレイド王国の第2王女・ジェイン様。
彼女と私は少し仲良くさせていただいている仲です。
あの方は、誠実で国民思いのお方。
国民の一人であるこの私に王族ともあろうものがあの様な言動をした事は、きっと許せない事でしょう。
47
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる