男爵令嬢が『無能』だなんて一体誰か言ったのか。 〜誰も無視できない小国を作りましょう。〜

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第一章:我が領地は『国』になります。

第4話 王様は只今絶賛混乱中です。〜国王Side〜

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 まず注目すべきは書簡に使われている紙だった。
 この紙は、国家間でやり取りするための公式文書として定められた用紙である。

 値段が高くそれ以外の用途で使われる事もないので、滅多に見るようなものではない。
 少なくとも男爵位の物が使う筈のないものだ。



 それが意味する所をまさか察せないような私ではない。
 が、その事実を信じたくなくて、目を皿の様にしてその内容を読み進めていく。

 そして、注意深く読んだ自分に後悔をした。


 端的に言うと「書簡を出した現時点より我が土地は『エラント男爵領』から『エラント国』にその体裁を変える」といった事が宣言されていた。
 紛れもない、独立宣言である。
 
「何故だ……」

 私には、全くと言っていいほどそんな事をされる心当たりが無い。
 否、そもそも我が国に何の相談もなく独立宣言を出すなど、どう考えても喧嘩を売っている。
 もしかしてあちらは武力闘争を望んでいるのか。
 ならば受けて立ってやろう。


 そこまで思考がヒートアップした後で、俺はハッと我に返った。

 エラント男爵という人間の為人(ひととなり)を思い出したからである。
 

 あの家は、確かに前代の時から独立を願っている節があった。
 が、私が知っている男爵は、慎重で思慮深く分別のある男である。
 決して無策に民を苦しめる戦争なんてものを起こす人間ではない。
 きっと何か……そう、少なくとも建前になるような何かがあった筈だ。



 考えろ。
 それは一体何なのだ。

 そんな風に考えて、一つだけ思い出す。

「そういえば王太子が揉めた例の会議、その相手が男爵だったな」
「はい、私もその様に記憶しております。しかしあの男爵があれしきの事で袂を分つ様な愚行をするでしょうか……?」
「それは私も疑問だが」

 確かに意見の対立があり、会議室に流れる空気も悪かった聞く。
 が、アレはあくまでも話し合いの場での言い争いだ。
 そもそも議論するための場所で、議論の仮定で空気が悪くなるような事態になったとして、どうして男爵という爵位の人間が王族に反旗を翻せるだろう。
 逆ならば未だしも。


 ……逆、ならば?


「――今すぐに王太子を呼んでこい」
「かしこまりました」

 私の指示に、宰相はすぐさま踵を返す。
 背中に見える焦りから、彼も似たような事を考えたのかもしれないなとふと思う。

 が、そんな事は正直言ってどうでもいい。

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