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第11話 一体何を吹き込まれたのやら。(1)
しおりを挟むお陰で出かかった笑いを懸命に噛み殺す羽目になった。
すると殿下は、苛立った様に別の話を引っ張り出す。
「お前は健気に生徒会の仕事をしていたな! 大方その姿で私が釣れるとでも思ったのだろうが……俺はそんな安い男ではないわ!」
そんな風に考えるお前の頭こそ安いわ。
そんな風に思った事は秘密である。
だって流石に王族に対して失礼だ。
しかし何だろう、この違和感は。
殿下なら、「便利だな」と思いはしても「私がそれの頑張りで取り入ろうとしている」なんて事、思い付かないと思うんだけど。
……あぁ、もしかして。
そう思って殿下の後ろをチラリと見れば、目の合ったリズリーが何やら満足げな顔になった。
彼女から「どうだ! お前の目論見は潰してやったぞ!」という副音声が聞こえてくるのは気のせいか。
そうかなるほど、つまり彼女がこのイタイ誤解の元凶という訳か。
「私が生徒会活動に真剣だったのも、婚約者としての義務感からです。生徒会運営に落ち度があれば、それはそのまま殿下の悪評となります。それを避ける為にそのように振る舞っていたに過ぎません」
「つまり俺に恩を売ろうと――」
「しておりません。将来の結婚相手の悪評は私にも当然響きます。そして他の王族の方にも。私はそれを回避しただけです」
私がそう言い切ると、また周りからこんな言葉が漏れ聞こえてくる。
「まぁ確かに、将来夫になる相手の悪評はなるべく避けたいわな」
「ところで私、以前から思っていたのですが……殿下は学校行事の開会・閉会挨拶以外で、一体何のお仕事をなされているのです?」
「さぁどうなのでしょうか。調整関係はほぼエリザベート様が動いている所しか、私は見たことありませんし」
「でも『言われてみれば』って感じだな。いつもトラブルなく進んでたから、今まであまり裏方とか意識してなかった」
最後の言葉は、私にとっては正にこれ以上無い褒め言葉である。
だってそれこそが、裏方の仕事なのだから。
……あぁそうだ。
せっかくなので、みんなの前で宣言しておこう。
「私が生徒会に入ったのは、殿下の婚約者としての義務を果たす為でした。生徒会名簿の選出理由には『会長の婚約者だから』としか書かれていませんでしたし、王妃様からも『婚約者として成すべき事をなさい』と言い含められていましたから、殿下を含めた王族の方々は皆、私の能力が故ではなく、その義務を果たす為に生徒会活動に参加していた事を認識いただいている事でしょう」
これらは全て事実である。
先日籍を抜く時に「念のために」と名簿を見せてもらったが、他の方達の所には能力面での理由が記載されているにも関わらず、私の所だけはその一文で済ませられていた。
だから私は堂々と言える。
「私は先日、殿下から婚約破棄を言い渡されました。その翌日に、既に正式なやりとりが為され、即日解消となっています。ですから生徒会の籍も既にありません。先程『籍は無くとも活動には従事できる』という旨の打診を殿下から受けましたが、それもお断りしました。私に義務以上の仕事をする気はありません」
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