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第12話 もう一度言っておきますね?(1)
「おっ、お前はリズリーを虐めていたらしいじゃないか! リズリーに『貴方に殿下は相応しくない』とも言ったらしいが、相応しいかどうかは俺が決めるのであって、お前の出る幕ではない! そこまでして俺の心が欲しいとは……なんて醜悪な」
何かを噛みつぶす様に、彼が言う。
しかし私はキョトンである。
全くもって、こちらにも心当たりは無い。
……否、心当たりでは無いけど、思い出した。
(確かお父様が、「乱入してきた殿下がその様な事を口走っていた」と……)
どうやらこれの事らしい。
ならばこれも公衆の面前で早急に叩き潰した方が良いだろう。
でなければ、おそらく後日その件がまだ引き合いに出されて一悶着起きるだろう。
後から掘り起こされるのは御免である。
「殿下に相応しくは無い、ですか。そうですね。『ただ殿下のご好意に甘えていてはいけません。そうでなくとも今の立場で殿下のお側に侍るのは難しいのですから、せめて人の目がある場でくらいは相応の振る舞いが出来る様にならねばなりませんよ』というような事は、私も言った覚えがあります」
私のそんな言葉に、周りは理解を示してくれる。
「確かにその通りですね。たかが一男爵令嬢が殿下のお側に侍るどころか、気安く振る舞うなんて。例え殿下が許可されても、決して許される事ではない」
「というか、今のは別に彼女自身を『相応しく無い』と言っているのでは無かったよな?」
「そうですね、むしろ『誰にも口を挟ませない振る舞いをしなさい』と発破をかけている様にも聞こえます」
そんな声が口々に囁かれる中、私は一度目を閉じて嘆息し、そして「しかし殿下」と一言申す。
「殿下に彼女が相応しいかどうかは、貴方が決める事でもありませんよ」
「何っ?!」
「相応しいか否かは、周りの目が決める事です。ですから殿下の思いは意味が無いのです、周りが彼女を『殿下の妻に足る存在だ』と認めない限りは」
彼をまっすぐに見据えてそう告げれば、周りは皆うんうんとしきりに頷いた。
と、ここで趣旨が少しズレていることに気が付いて、一度コホンッと咳払いをする。
「彼女がその言葉をどう受け取ったかは存じませんが、少なくとも私は彼女を殿下の前から廃そうとした事は一度もありません。だってそもそもこれは政略結婚で、私自身、特に殿下のお心が欲しいとは思っていませんでしたから」
「しかしお前も女だ。例え政略とはいえ、結婚に夢を抱く事も――」
「少なくとも殿下、貴方に対して私はソレを全く抱いていませんでした。貴方が、私に対してそうであったのと同じ様に」
女だから。
そんな曖昧なもので一括りにしているのなら、お門違いも良いところだ。
私は私であり、私でしか無い。
女という言葉は、必ずしも私個人を指す言葉ではないのである。
その言葉が出る辺り、彼が私に全く興味が無かった事がよく分かる。
(興味が無いのは良いのよ別に。問題なのは、そうなのに何故私を留め置く様な事をしようとするのか――あぁそうだった、私の事務処理能力が原因なんだわ)
今日した呼び出しの理由に、彼は確かに生徒会活動を挙げていた。
つまりは事務処理能力を私に求め、しかしソレが叶わなかったから今度は餌で釣ろうとしている。
その結果が、今の現状なのだろう。
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