もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!

文字の大きさ
19 / 21

第14話 褒めている様で強要してる。分かってますよ? 王妃様。


 それが先日のパーティーで起きた婚約破棄の事だというのは、すぐに分かった。
 しかし令嬢の経歴に『婚約破棄された』なんていう大きな傷を付けておいてよくもそんな事が言えたものだ。

 今まで常々「殿下と王妃様は似てないな」と思っていたが、こういう無神経な所はもしかすればちょっと、似てるかもしれない。


 この場合、返すべき言葉は一つしかない。
 しかしそれを、私は敢えて言わなかった。

「えぇもう本当に驚きました。まさか殿下があそこまでリズリーさんの事を想っていらっしゃるとは思っておらず……これはもう私の出る幕ではないと思い、潔く身を引かせて頂きましたわ」

 そんな声に、ほんの一瞬ほんの少しだけ、王妃様の片眉がピクリと反応したのが分かった。

 彼女が私を「家族同然」という程に、私と王妃様の繋がっていた期間は長い。
 だから分かる。

 これは何か気に食わない事があった時の仕草である、と。

「あらあらエリザベート、いけませんね。状況を鑑みれば今回のような事が起きるのは最早必定だったでしょう? ならば自身の立場に相応しい行動を取らなければ」

 つまり「食い下がれと」言いたいのか。
 嫌である。

 私は王族の仲間入りをする事をとうとう自分の義務以上には思えなかったし、殿下を愛する気持ちも無い。
 そんな状態で、見るからに面倒そうな泥沼に、どうして足を突っ込みに行かねばならないのか。

「王妃様、私はこれでも殿下の事を考えて決断したのです」

 そう言って、無理矢理悲しげな顔を作る。

「私はずっと、殿下がすべき様々な事を「少しやり過ぎていたな」とあの時反省したのです。殿下が私から離れ独り立ちなさろうとしているのを見て、「私の役目は終わったのだ」と思いました。私は全てを背負おうとしてしまいましたが、リズリーさんとなら殿下は手に手を取り合って2人で苦楽を共に出来るでしょう」

 正直言って、リズリーには文官としての才も外交官としての才も無いと思う。
 彼女に出来る事と言えば、精々疲れた殿下の精神的な支えくらいなものだろう。
 
 しかしそれで良いんじゃないか。
 愛に生きると決めた殿下なのだから、きっとそのくらいの苦労は厭わないだろう。
 精々馬車馬のように働けば良い。

「ねぇエリザベート、反省出来る事は美徳よ? だって次に活かせるのだから」

 だから心を入れ替えて、まだまだ殿下のために尽くせ。
 そう言いたいのだろうが嫌である。
 絶対に、嫌である。

「その機会が私にはもうありません、王妃様」
「あるじゃない。王子は貴女に、もうそれを示した筈よ?」

 なるほどそれは、先日の学校で論争になった生徒会業務の件を言ってるのか。

 ……否、この王妃の事である。
 きっとこの先も、私を似た様な事に使う算段を立てているに違いない。
 一つ折れればなし崩し的に一生使われる。
 彼女はそれを当然の様に相手に強要できる人だ。

「王妃様、私はもう自分に見切りをつけました。私が殿下を支える事は、やはり荷が重かったのです」
「そんな事無いわ、貴女は良くやっていた。書類仕事から方々の調整、トラブルの対処まで。あれほど周りに目端が効き、的確に指示が出せるのです。貴女は王子を支える力を十分持っている」

 彼女が何故こんな事を言うのかは分かっている。
 
 学校でのあの騒動から1週間が経ち、殿下達今の生徒会メンバーは次の学内行事の為に慌ただしく動いているのだ。
 私がするだろうとたかを括って、全てを放置していたのが良くなかった。

 例年のスケジュールから遅れた作業開始、普段は勝手に終わっている仕事を山積みにされて、彼らは今てんてこ舞いだ。
 お陰で方々への調整が雑になり、幾つもの齟齬が発生している。

 先日は廊下のど真ん中で、殿下付きの近衛騎士隊長の息子が「良いから言う通りにしろ!」と声を荒げているのを見た。
 まぁ彼は元々脳筋で、全てが根性で片付くと思っている節がある。
 大方作業時間の計算もろくにせずに「明日までに全部やっとけ」とか、そんな無茶振りをしたのだろう。


 まぁそんなこんなで、今生徒会の評判は悪い。

 私側に偶々見たのがソレだったというだけで、実際にはもっと支障が出ているらしい。
 
 そのせいで、周りは最近こんな事をヒソヒソと囁いている。

「1人抜けただけてこんなにガタガタになるとか」
「それだけエリザベート様の貢献が大きかったという事ですよ」
「やはり采配もエリザベート嬢がしていたんだな、じゃないとここまで悪くはなっていない」
「元々采配は会長である殿下の仕事だったでしょうに」

 そんな周りの声達を、王妃様もそれを知っているのだろう。
 だから私に言っているのだ。
 手伝いなさい、と。

感想 9

あなたにおすすめの小説

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

次に貴方は、こう言うのでしょう?~婚約破棄を告げられた令嬢は、全て想定済みだった~

キョウキョウ
恋愛
「おまえとの婚約は破棄だ。俺は、彼女と一緒に生きていく」  アンセルム王子から婚約破棄を告げられたが、公爵令嬢のミレイユは微笑んだ。  睨むような視線を向けてくる婚約相手、彼の腕の中で震える子爵令嬢のディアヌ。怒りと軽蔑の視線を向けてくる王子の取り巻き達。  婚約者の座を奪われ、冤罪をかけられようとしているミレイユ。だけど彼女は、全く慌てていなかった。  なぜなら、かつて愛していたアンセルム王子の考えを正しく理解して、こうなることを予測していたから。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

【本編完結】真実の愛を見つけた? では、婚約を破棄させていただきます

ハリネズミ
恋愛
「王妃は国の母です。私情に流されず、民を導かねばなりません」 「決して感情を表に出してはいけません。常に冷静で、威厳を保つのです」  シャーロット公爵家の令嬢カトリーヌは、 王太子アイクの婚約者として、幼少期から厳しい王妃教育を受けてきた。 全ては幸せな未来と、民の為―――そう自分に言い聞かせて、縛られた生活にも耐えてきた。  しかし、ある夜、アイクの突然の要求で全てが崩壊する。彼は、平民出身のメイドマーサであるを正妃にしたいと言い放った。王太子の身勝手な要求にカトリーヌは絶句する。  アイクも、マーサも、カトリーヌですらまだ知らない。この婚約の破談が、後に国を揺るがすことも、王太子がこれからどんな悲惨な運命なを辿るのかも―――

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

私を捨てて本当に後悔しませんか?

花々
恋愛
公爵令嬢のスカーレットは第一王子ダリウスの婚約者。王族の中では魔力の低いダリウスを支えるために長年尽くしてきたが、本人からは疎まれていた。 ある時、スカーレットたちの通う学園にノーラという平民出身の少女がやってくる。 ダリウスはほかの貴族令嬢たちと毛色の違うノーラを気に入り、常にそばに置くように。そしてついにはスカーレットに婚約破棄を突きつける。 今日からスカーレットの代わりはノーラが務めると言われ、冷たく追い払われるスカーレット。傷心のスカーレットは、休暇の間を母の実家の領地で過ごすことにする。 一方、ノーラさえいればスカーレットなしでもどうにでもなると思っていたダリウスだが、スカーレットがいなくなった途端、何もかもうまくいかなくなりだして……。 ✴︎息抜きに書き始めました。短めの話で終わる予定です!

【完結】「めでたし めでたし」から始まる物語

つくも茄子
恋愛
身分違の恋に落ちた王子様は「真実の愛」を貫き幸せになりました。 物語では「幸せになりました」と終わりましたが、現実はそうはいかないもの。果たして王子様と本当に幸せだったのでしょうか? 王子様には婚約者の公爵令嬢がいました。彼女は本当に王子様の恋を応援したのでしょうか? これは、めでたしめでたしのその後のお話です。 番外編がスタートしました。 意外な人物が出てきます!

<完結済>婚約破棄を叫ぶ馬鹿に用はない

詩海猫(9/10受賞作発売中!)
恋愛
卒業パーティーでの婚約破棄に、声をあげたのは5番目に破棄された令嬢だったーー記憶持ちの令嬢、反撃に出ます!

虐げられた聖女が魔力を引き揚げて隣国へ渡った結果、祖国が完全に詰んだ件について~冷徹皇帝陛下は私を甘やかすのに忙しいそうです~

日々埋没。
恋愛
「お前は無能な欠陥品」と婚約破棄された聖女エルゼ。  彼女が国中の魔力を手繰り寄せて出国した瞬間、祖国の繁栄は終わった。  一方、隣国の皇帝に保護されたエルゼは、至れり尽くせりの溺愛生活の中で真の力を開花させていく。