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動き出した第二王子
第2話 アリティーに寄り添う二人の側近(1)
しおりを挟む「『さっきの』って?」
「さぼり癖の件です」
「――あぁ」
それの事か。
そう言いたげに声を上げると、アリティーは小さくクスリと声を立てた。
そして、答える。
「サボってはいないさ。まぁ、多少手は抜いてるけどね」
主人の返答に、騎士は「よく分からない」と言いたげに小首を傾げた。
「一般的には、そういうのを『さぼり』というのでは?」
「違うよ」
アリティーは、即答で騎士の言葉を否定した。
しかしそれ以上を語ろうとする気配は無い。
自分の疑問に根拠無く行われた即答に、普通なら人は大体疑問を持つ。
何故説明してくれないのか、と。
しかし、その騎士は。
「そうですか」
彼の即答に、すぐさま納得の声を上げる。
彼の顔を盗み見れば、彼は既に興味を失ったような、否、最初から疑問など抱いていなかったかのような顔をしていた。
そんな彼に、アリティーは思う。
(考えるの諦めたな、コイツ)
そんな彼に、アリティーは思わず苦笑する。
アリティーの専属護衛騎士・ラインバルト。
まだ10代後半だというのに王族の騎士に選ばれるのだから、その剣の腕は折り紙付きだ。
しかし彼には弱点もある。
それこそが、ちょっとばかし頭が残念な事だった。
いわゆる脳筋というやつである。
しかし、その一方で。
(まぁそこが、彼の良いところなんだけどね)
そう独り言ちる。
頭で色々と考えない分、彼は命令に実に忠実に動いてくれる。
そういう人間はいざという時に強い。
そして何よりも。
(絶対に僕の意に反しないし、面倒なことを勘繰ったりもしない)
それが、アリティーが彼を評価する最も大きな理由だった。
それに対して、妙に感が良く勘繰る人間は面倒だ。
「まったく・・・・・・人が折角苦労して隠しているものを周りに晒そうとするなんて、厄介な野生の勘だよね」
ため息混じりに零したその声は、先ほどの騎士団長に向けたものである。
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