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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第6話 クラウンの言い分 -眠気との戦い編-(2)
しおりを挟む俺がわざわざ声を掛けてやったのだ。
普通はそれだけで、まず「ありがとうございます」と頭を下げて然るべきだろう。
それなのに。
(あの女、結局一度も俺を見て話さなかった)
そう思えば、感情が沸々と沸騰を始める。
そして、そんな俺にお父様の声が尋ねてくる。
「……何がどう、無礼だったのだ?」
その声を聞いて、俺は大いに喜んだ。
(お父様が、俺の話に興味を持ってくれた)
こんな機会、中々あるもんじゃない。
だってお父様はいつも何かに忙しくって、俺に構う暇なんて無いのだ。
……兄には、構うのに。
だから声だって独りでに弾む。
「俺が折角『汚れたドレスを着替えさせてやるから来い』って言ってやったのに、あいつ俺を無視して帰りやがったんだ」
ね?酷いでしょ?
そう言ってお父様へと目を向けて、そして自身の『失敗』を悟った。
そこには、顔色を悪くした父の姿があった。
「……その令嬢との間にあった事を、最初から順番に話しなさい」
感情を押し殺した声。
その反応に困惑しながらも、俺はお父様の言う通りに事の次第を話して聞かせた。
全てを話し終えると、父と母が何やらそうだんのようなものをし始めた。
『類似点』とか『連想』とか。
そんな言葉を使っているが、話の内容が難しくて俺にはよく分からない。
そんな2人を眺める時間は、とても退屈だった。
(……眠い)
大口を開けて欠伸をしながら、俺は「早く終わらないかな」と心の中で独り言ちる。
焦った様子の両親は、俺にとってはまさに『対岸の火事』だった。
だって俺は、別に何も悪い事なんてしていない。
何故両親の顔色がこんなにも悪いのか。
それを疑問に思っても、「何でそんな顔してるの?」なんて質問は出来ない。
だって、どう考えても現在取り込み中だし。
それくらいの空気は読む。
少しずつ、意識の輪郭がぼやけていく。
こくりこくりと小さく船を漕ぎながら、辛うじてその輪郭を保っていると。
「……取り敢えず話は分かった。クラウンはもう寝ろ」
眠気が優った俺は、そこで相手の押し殺された怒りに気付く事もなく、ただその言葉に素直に従った。
部屋から退出する瞬間、お父様の重く深いため息が聞こえた気がしたが、眠過ぎてもう考えが纏まらない。
(――結局、何の用事だったんだろう……?)
再びベッドに潜り込んで、俺は意識の淵でふとそう思った。
しかし眠気に逆らう事は出来ず、俺はゆっくりと眠りに落ちていく。
そして今度はこそ、朝までぐっすりと眠り込んだのだった。
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