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布屋さんに初来店のフィーリアは、安堵し、心配し、怒って帰る。

第17話 布がほしかった理由(1)

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 案内された先にあったのは、赤い屋根の木造りの家だった。
 屋根の下に掲げられている『ネェライ』と書かれた看板は随分と年季が入っており、店の歴史を感じさせるには十分だ。

 両手が食材で塞がっているディーダが半ば体当たりで扉を押し開くと、カランカランとドアベルが鳴った。

 ぐるりと見回せるほどの広さしかない店内は壁一面、こげ茶色の棚になっている。
 所狭しと布や糸や裁縫の素材が並んでおり、赤や黄、青に緑、紫から白や黒。グラデーションの陳列から、見栄えと選ぶ者の利便性も気にして揃えているのが分かる。

 少し埃っぽく雑多な雰囲気があるのが難点ではあるが、今日一番のカラフルさは見るだけでも心が躍る。
 一応店の一角には裁縫具類と、あれは布製品かしら。数こそ少ないものの、既に形になっているものも売られているみたい――と思ったところで、店の奥からドタドタと重い足音がやってきた。

「いらっしゃい――ん?」

 顔を出したのは、銀髪のモヒカン頭に褐色肌の男性だった。
 麻の半そでシャツも黒いズボンも、ピチピチなのは彼の服の好みなのだろうか。背も高く、隆起した筋肉が逞しい。全体的に大きな人だ。

 その彼がディーダとノインを見つけて、立ち止まった。腰から下げられている古びた皮のポーチの金具が、チャリッと鈍い音を立てる。

「何だお前ら、もう前の服を破ったのか」

 剣呑な声が、ため息交じりに言った。
 邪険にしているというよりは、見知った相手の来訪に外面を剥いだような雰囲気だが、粗野な感じが社交界にはあまりいないタイプである。思わず身構えてしまいそうになったところで、ディーダが面倒臭そうに「ちげぇよ」と言い返す。

「この女が来るって言うから案内しただけだ。じゃなかったら誰がこんな店に来るかよ!」
「女ぁ? って、本当だ。珍しいな、お前らに連れが居るなんて」

 訝しげだった表情が、私を見つけて驚きに変わる。咄嗟にぺこりと頭を下げると、両手で抱えていた袋から鍋が転げ落ちそうになった。
 思わず「あっ」と、声が出た。
 慌ててバランスを取ろうとしたところで、横から手が伸びてくる。鍋を上から抑えるように支えてくれたノインの手に「あ、ありがとうございます」と応じれば、「別に」という素っ気ない声の後で、鼻で笑いながら目の前の彼に続ける。

「アンタの顔が怖くて客が寄り付かないからボクたちが客を連れてきてあげたんでしょ」
「うっせぇ! ちゃんと客はいるわ!」
「説得力全然ないぞ、バイグルフ」

 バイグルフ。それがこの店員さんの名前なのだろうか。

「それで?」
「え?」

 何を問われたのか分からなくて思わず小首をかしげると、ため息と共に問いがくる。

「ここで布を買って何するの?」
「あぁ、お二人の着替えを作ろうかと思っているのです」

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