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私を形成してるモノ
第5話 母の言葉を思い出して(1)
しおりを挟むそれから2年の月日が経って、私は30歳になった。
生涯の伴侶はまだ居ない。
その候補者も現れない。
未だに気ままな独り者だ。
しかし気ままだったからこそ、踏み切れた人生の選択もあった。
専門学校を卒業した20の年から11年間勤めていた会社を辞めて、住まいも都会から地元に移したのだ。
理由は色々とある。
していた仕事がつまらなくなった。
スキルが付たのは良いが、代わりに日々の刺激がなくなった。
まるで消化試合でもしているかのように感じられてしまい、何のために仕事をしているのかが分からなくなった。
実は、管理職に昇進するという話もあった。
しかし私は元々現場作業が好きでこの仕事を選んだのだ。
なのに現場から離れるというのも、何かちょっと違う気がした。
試しに管理職の仕事内容についても少し聞いいてみたものの、やはりと言うべきか大して心惹かれない。
だから会社を辞める決意をしたのだ。
一方、引っ越しについては元々インドア派だから家の外が都会だろうが田舎だろうがさして変わりは無いし、少し前にした祖父の死に目に会うための急ぎ旅で、改めて実家との距離の遠さを実感し歯痒い思いをした。
仕事やめるのならば、尚更都会に固執する理由がない。
それらが重なって、結局地元に帰る事を選んだ。
とはいっても、今更実家であの母との同居は私が無理である。
しかしあの母の事だ、おそらく「帰ってきたんならわざわざ別に住むことないでしょ」とか言ってくるだろう。
だからそこは「もう大人だから」とか「自立のため」とか、そんな言葉で説得して別の家を借りるしかない。
説得は少々面倒だが、これは必要な事なので仕方がない。
私のこれまで人生の中ではおそらく最も大きな決断だっただろうが、それでも不思議と心には余裕のようなものがあった。
いわゆる「どうにかなるでしょ」というやつである。
普段割と石橋を叩いて渡るタイプの私が珍しくそんな気持ちでいられたのは、おそらく前職で貰っていた11年分の給料がほぼ手付かずの状態で貯金され続けていたからだ。
当分生活に困る事は無いだろうと思える額にはなっていた。
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