44 / 61
《sentimentalism》
【碧人:秘蜜】
しおりを挟む
「まだ、切らなくていいと思う」
秋は深まり、合服期間を迎えた教室内にも彩りが増える。
美容室を探す凛の手からスマホをひょいと抜き取ると、不服そうな眼差しが返ってきた。
「いや、これ以上伸びたら見た目にも鬱陶しいし」
「そんなことないって。俺の方が凛より長いじゃん」
「そりゃ碧人は髪色が軽いから似合ってるけどさぁ」
長袖のシャツにチョコレート色のカーディガンを掛け合わせた凛が襟足の髪をいじる。
たったそれだけの仕草で、胸の奥はざわりと波打った。
凛の赤い唇に目が吸い寄せられ、慌てて窓の方を向く。
困ったな。
最近の凛は進化が止まらない。
小さな口から漏れる吐息も、どこか憂いを帯びた黒目がちな瞳も、秋の深まりに熟れては静かな魅力を増していく。
本音を言えば、戯れに凛に絡むクラスメイトは許せなくて、プリントを渡し「頑張れよ」と凛の肩に手を乗せる先生ですらやめてほしい。
誰も凛を見つけないで欲しい。
指一本だって触れないで欲しい。
凛の全部は、俺のものなのに。
「うっ……んん」
掃除を言い渡された、人気のない化学準備室。
手伝いに来てくれた凛を壁に押し付け舌を絡める。
茜色に差し込む夕陽が上気する凛の頬を殊更赤く染め上げていた。
「ん、碧人……!学校はダメだって!」
「大丈夫。こんな所誰も通りかからないよ」
凛が嫌がるのを知っていながら、あえて深く口づける。
俺のことをどこまで許してくれるのか、時折こうして量りたくなってしまって。
もっと。
もっと凛に感じて欲しい。
もっと思い知って欲しい。
凛の中で、俺は特別なのだと。
独占欲のまま抱きしめる腕に、凛の熱い体温が伝わる。
これ以上はまずいと忠告する理性。
このまましたいと誘う本能。
いつもみたいに凛が「いい加減にしろ」と押し返してくるのを期待していたが、抵抗していたはずの華奢な手はいつの間にか俺のベルトに触れていた。
「え、凛……?」
「……煽ったのは、碧人だから」
驚いて離れようとした俺を、今度は凛が棚まで追い詰める。
制止をかけた声は濃厚なキスで塞ぎ返され、柔らかな手がスラックスのホックを割り中まで滑り込んできた。
「ま、待って。だって、汚れるし」
「汚さないよ。俺が」
両膝を床についた凛が扇情的な瞳で見上げてくる。
完全にスイッチが入った夜の顔だ。
明るい場所で見るのは初めてで、部屋中が茜色に染まるせいか綺麗さと妖艶さにくらくらと眩暈がした。
「り……ん、うぅ…」
漏れかけた声を行き場のない手で塞ぐ。
凛の濡れた舌が局部を這い、慣れた手が包み込むように快感を高めていく。
甘い痺れに体の自由は奪われ頭の中は真っ白だ。
「凛、ほんと、や、ばい……から」
「ん、我慢して」
力の抜ける膝を凛が体で支える。
耳に届く、遠くから響いた生徒の声。
崩れ落ちることすら許されず、背徳的な行為に神経は過敏に。
罪悪感は煮詰めた蜜より甘いエクスタシーに格上げされ、細胞の隅々までどろりと満たされていく。
常識という概念はとっくに置き去り状態だ。
もはや一滴も抗えず忘我の境地に達すれば、凛が苦しそうな声を漏らした。
「んん…」
受け止めたものをすぐに吐き出そうとはせず、凛は手近なペーパータオルで丁寧に後処理をしてから律儀に自分で乱した俺の衣服を整え直す。
流れる汗に耐えることしかできなかった俺は、情けなくも凛にそこまでさせてから棚を背にしたままズルズルと床に座りこんだ。
「は、はぁ、はぁ……頭、死にそ……」
とてつもない気持ちよさと脱力感に動けずにいると、凛のさらりと流れる黒髪が胸に寄せられた。
「碧人……」
「ん、なに……?」
「俺、碧人が好きだ」
凛の目尻が夕陽の名残に淡く反射する。
小さな肩が震えたから、それが涙なのだと気がついた。
「凛、泣いてんの?なんで?」
「分かんない。でも、好きすぎて、……切ない」
茜色に混じるのは抑えた哀愁。
俺はどうすれば凛の涙が止まるのかが分からず、震える肩を撫でることしか出来なかった。
秋は深まり、合服期間を迎えた教室内にも彩りが増える。
美容室を探す凛の手からスマホをひょいと抜き取ると、不服そうな眼差しが返ってきた。
「いや、これ以上伸びたら見た目にも鬱陶しいし」
「そんなことないって。俺の方が凛より長いじゃん」
「そりゃ碧人は髪色が軽いから似合ってるけどさぁ」
長袖のシャツにチョコレート色のカーディガンを掛け合わせた凛が襟足の髪をいじる。
たったそれだけの仕草で、胸の奥はざわりと波打った。
凛の赤い唇に目が吸い寄せられ、慌てて窓の方を向く。
困ったな。
最近の凛は進化が止まらない。
小さな口から漏れる吐息も、どこか憂いを帯びた黒目がちな瞳も、秋の深まりに熟れては静かな魅力を増していく。
本音を言えば、戯れに凛に絡むクラスメイトは許せなくて、プリントを渡し「頑張れよ」と凛の肩に手を乗せる先生ですらやめてほしい。
誰も凛を見つけないで欲しい。
指一本だって触れないで欲しい。
凛の全部は、俺のものなのに。
「うっ……んん」
掃除を言い渡された、人気のない化学準備室。
手伝いに来てくれた凛を壁に押し付け舌を絡める。
茜色に差し込む夕陽が上気する凛の頬を殊更赤く染め上げていた。
「ん、碧人……!学校はダメだって!」
「大丈夫。こんな所誰も通りかからないよ」
凛が嫌がるのを知っていながら、あえて深く口づける。
俺のことをどこまで許してくれるのか、時折こうして量りたくなってしまって。
もっと。
もっと凛に感じて欲しい。
もっと思い知って欲しい。
凛の中で、俺は特別なのだと。
独占欲のまま抱きしめる腕に、凛の熱い体温が伝わる。
これ以上はまずいと忠告する理性。
このまましたいと誘う本能。
いつもみたいに凛が「いい加減にしろ」と押し返してくるのを期待していたが、抵抗していたはずの華奢な手はいつの間にか俺のベルトに触れていた。
「え、凛……?」
「……煽ったのは、碧人だから」
驚いて離れようとした俺を、今度は凛が棚まで追い詰める。
制止をかけた声は濃厚なキスで塞ぎ返され、柔らかな手がスラックスのホックを割り中まで滑り込んできた。
「ま、待って。だって、汚れるし」
「汚さないよ。俺が」
両膝を床についた凛が扇情的な瞳で見上げてくる。
完全にスイッチが入った夜の顔だ。
明るい場所で見るのは初めてで、部屋中が茜色に染まるせいか綺麗さと妖艶さにくらくらと眩暈がした。
「り……ん、うぅ…」
漏れかけた声を行き場のない手で塞ぐ。
凛の濡れた舌が局部を這い、慣れた手が包み込むように快感を高めていく。
甘い痺れに体の自由は奪われ頭の中は真っ白だ。
「凛、ほんと、や、ばい……から」
「ん、我慢して」
力の抜ける膝を凛が体で支える。
耳に届く、遠くから響いた生徒の声。
崩れ落ちることすら許されず、背徳的な行為に神経は過敏に。
罪悪感は煮詰めた蜜より甘いエクスタシーに格上げされ、細胞の隅々までどろりと満たされていく。
常識という概念はとっくに置き去り状態だ。
もはや一滴も抗えず忘我の境地に達すれば、凛が苦しそうな声を漏らした。
「んん…」
受け止めたものをすぐに吐き出そうとはせず、凛は手近なペーパータオルで丁寧に後処理をしてから律儀に自分で乱した俺の衣服を整え直す。
流れる汗に耐えることしかできなかった俺は、情けなくも凛にそこまでさせてから棚を背にしたままズルズルと床に座りこんだ。
「は、はぁ、はぁ……頭、死にそ……」
とてつもない気持ちよさと脱力感に動けずにいると、凛のさらりと流れる黒髪が胸に寄せられた。
「碧人……」
「ん、なに……?」
「俺、碧人が好きだ」
凛の目尻が夕陽の名残に淡く反射する。
小さな肩が震えたから、それが涙なのだと気がついた。
「凛、泣いてんの?なんで?」
「分かんない。でも、好きすぎて、……切ない」
茜色に混じるのは抑えた哀愁。
俺はどうすれば凛の涙が止まるのかが分からず、震える肩を撫でることしか出来なかった。
0
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる