「君の婚約者、浮気しているよ」と婚約者が代わるたびに教えてくれる親切な元婚約者がいるので、いつになっても結婚が出来ません……。

月密

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第十話

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 クリスタとライムントは公園で散歩をした後、往来から外れた隠れ家の様なレストランにやって来た。
 華美な装飾の店内へと入ると、店員が現れライムントを見るなり直ぐに奥へと案内をしてくれる。その様子から、彼がこの店の常連だと分かった。
 
「どうでしょうか、お口に合いますか?」
「はい、とても美味しいです」
「それは良かった」
「ライムント様はこちらによくいらっしゃるんですか?」
「いえ、数回程度です。ただこの店はなので、是非クリスタ嬢をお連れしたいと思ったんです」
「特別、ですか?」
「えぇ、特別です」

 その後、何がどう特別なのか気になりライムントに訊ねるもはぐらかされてしまった。
 確かに店の雰囲気も装飾、料理など文句のつけようもなく素晴らしいが特別とは違う気がする。
 もしかしたら彼にとっての特別という意味なのかも知れない。例えば大切な思い出があるとか……それなら納得だ。

(沢山歩いたし、少し疲れちゃったのかも……何だか、眠気が……)

 食事をしながら雑談をしていたが、デザートのフォンダンショコラを食べていた時、急な眠気に襲われた。
 頭がぼうっとして兎に角瞼が重い。
 目覚ましにレモン水に口を付けたが、よけいに眠くなった気がした。

「クリスタ嬢、どうかされましたか?」
「いえ、何でもありません……」

 幾ら眠いからといって、当然だが此処で寝る訳にはいかない。
 このデザートを食べ終われば帰れるのだから我慢しなくてはと思うが、身体がいう事を聞いてくれない。

「クリスタ嬢?」

 ライムントが席を立ちクリスタへと近付いてくるのがぼやけた視界に映った所で意識は途切れた。

 

 早く起きなくちゃ……そう思うのに眠くて起きれない。
 クリスタはまだ眠りから覚めきらない中、目を覚まそうと身動ぐ。
 
「ん……」

 暫くしてようやく肢体が動くようになり、ゆっくりと目を開けた。

(ここは……? わたし、どうして……)

 見知らぬ天井が視界に映り、まだぼんやりとしている頭で記憶を辿る。

(そうだ、私、ライムント様と食事をしていて急に眠くなって……)

「お目覚めですか?」
「⁉︎」

 直ぐ側で声が聞こえ、クリスタは驚き一気に覚醒した。
 首を横に傾けると薄明かりの中ライムントがベッドの横で膝をつきこちらをじっと見ている。

「っ‼︎」

 クリスタは跳ね起きると本能的に彼から距離を取ろうとしてベッドから降りようとするが、腕を掴まれた。

「クリスタ嬢、どうされたんですか」

 部屋の中が薄暗い為、ライムントの顔に影が差し、その瞳はまるで獲物を狙っているかのよう見える。
 
「あ、あの……これは一体、どういう事ですか……」
「本当は、ここまでするつもりはなかったんです。でも貴女が婚約を破棄したいなどと言い出すから」
「きゃっ‼︎」

 掴まれていた腕を強く引かれ、ベッドの上に転がされた。

「私には貴女が必要なんです」
「でも、今日のデートが終わったら婚約を破棄して下さると」
「すみません、あれは嘘です」
「え……」
「ああでも言わないと貴女はお父上に直談判しそうでしたから。それだと不都合でしたので、仕方がなかったんです」

 頭が混乱している中、両腕をベッドに押し付けられ馬乗りにされる。
 寡黙だが穏やかで優しい方だと思っていたが、今はその面影は微塵もなくただただ彼からは恐怖しか感じない。

「そんな顔をしないで下さい。大丈夫です、が済んだら今日は帰してあげます」
「用事……?」

 こんな状況で用事などと言われても訳が分からない。しかも今日はとは一体どういう意味なのか……。

 ライムントはクリスタへと顔を寄せると耳元で囁いた。

「私の子種を貴女の子宮なかに注ぐんです」
「っーー」

 予想もしない言葉に一瞬何を言われたのか理解が追いつかない。だが彼に抱き締められ、身体を撫で回され我に返った。

「は、離して下さいっ‼︎  どうして、こんな」
「クリスタ嬢、ほら分かりますか」
「⁉︎」

 彼は下腹部をクリスタのそこに押し当てた。
 衣服越しでも感じる違和感のある硬い膨らみに、思わず腰を引こうとするが体重をかけられ更に密着させてくる。

「私の陰茎が貴女の所為で今にもはち切れそうだ。こんな事は初めてです。……実は私は性的不能なんです。これまで何度も試してきましたが一度も勃った事がなかった。それが今こんなに硬く膨れ上がっている。素晴らしいと思いませんか? クリスタ嬢、私の子が産めるのは貴女しかいない」
「そ、そんな事言われても、困りますっ」

 どうにか逃れようと全身に力を入れるが、明らかな体格の違いがありびくともしない。

「一度でもまぐわえば、子が出来る可能性があります。そうなれば貴女は私と結婚するしかなくなる。後日、ロワリエ侯爵には婚前に手を出してしまった事を報告と共に謝罪しますから安心して下さい」
「い、いや、やめて下さいっ」

 頭では分かっている。
 本来はライムントと結婚しなくてはならない。これは政略結婚だ。そんな事は分かり切っている。婚約破棄なんて自分のただの我儘だ。それでもーー

(いや……)

 彼と婚約が解消となり、その後何度も婚約を繰り返す中で覚悟は当然持っていた……筈だった。
 だがあの日、ブラッドとレッスンを始めてから少しずつ何が変わり始めた。
 こうやってライムントに身体を触れられて実感する。

気持ちが悪いーー

 ブラッドには自分でも触れた事のない恥ずかしい場所を触られてもそんな風には思わなかった。寧ろもっと触れて欲しいとすら思う浅ましい自分がいた。

「女性に触れる事自体は初めてではないので、きっと満足させてあげられます。クリスタ、二人で気持ち良くなりましょう……」

(ブラッド、さま……)

 背中の紐を乱暴に解かれ、肩からドレスが剥ぎ取られていくのを感じクリスタはキツく目を閉じた。

 
 



 

 
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