姫金魚乙女の溺愛生活 〜「君を愛することはない」と言ったイケメン腹黒冷酷公爵様がなぜか私を溺愛してきます。〜

水垣するめ

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28話 ノエルの本音


私、ノエルはその日たまたまリナリアの部屋の前を通っていた。
部屋の中から叫び声が聞こえてきたので、私は急いで部屋の中に入ろうとした。
しかし聞こえてきた声で私は一度立ち止まった。

『──じゃあ、どうすればよかったんですか!』

聞こえてきたのはリナリアの声だった。
いつものリナリアからは考えられないような荒ぶった声と、次に聞こえてきた言葉に私は完全に固まってしまった。
部屋の中からはリナリアの悲痛な叫び声が聞こえてくる。

『私だって! 私だって愛されたかった!』
『そうです! 打算です! あなたを助けたのも! 今あなたを心配するフリをしたのも全部私のためです! でもここなら! もしかしたら愛してもらえるかもしれなかった! あの家と違って!』
『食事はまともに与えられなくて! 私はみんなと同じ屋敷に住めなくて! ボロボロの小屋で寝泊まりして! 朝から晩まで召使として働かされて! あなたは知らないでしょう!? 父親に面と向かって「お前なんか生まれなければ良かった」って言われた私の気持ちを! 私はそういう所で育ってきたんです!』
『本当に啜ったことなんてないくせに! 父の機嫌が悪くて何日も食事が与えられなかった時、私がどうやって生き延びたか知ってますか? 本当に泥水を啜ったんですよ!』

リナリアの口から告げられる衝撃の事実に、私は思わず口元を押さえた。
リナリアを婚約者として迎えにマリヤック家へと行った時の記憶が蘇る。
全く似合ってないドレス。娘を売り飛ばすと言うのに以上に嬉しそうな父親。リナリアの痩せ細った身体。そして窓の外から見えた
思えば気づくための要因はいくつもあったのに、なぜ気づくことができなかったのか……。

(いや、違う)

私は気がつかないフリをしていたのだ。
まさかそんなことがある訳が無い、と必死に目を逸らしていたのだ。

『打算でも媚を売ってでも愛されたいと思って何が悪いんですか! 親に愛されて育ったあなたに私の気持ちなんかが分かるはずがないっ!』

その言葉は私の胸に深く刺さった。
リナリアは美しかった。
生きようとするその意思が。
打算でも媚を売っても愛されたいと叫ぶその姿が輝いて見えた。
今まで打算ばかりで、偽物の笑顔ばかり浮かべてきた私にとって、その言葉はどこか救いのように聞こえた。
醜いと思っていた自分を肯定されたような気分になった。

(っ! 今はそんなことを考えている暇はない!)

私は我に帰り部屋の中へと入った。

「何事だ!」

リナリアは泣いており、アンナは頬を打たれた跡があった。
当然私はアンナを解雇しようとした。

「私は大丈夫です」

しかしリナリアは何も無かったと言った。
それどころか今まで口論をしていたアンナを助けた。

「しかし……」
「お願いします」

リナリアは私の瞳をしっかりと捉えてお願いしてきた。
まただ。
またこの瞳だ。
私はこの瞳に見つめられると何故かリナリアの言葉を全て聞いてしまう。
そのくらいリナリアの瞳には抗い難い魔力のようなものがあった。

「何故あなたはそこまで…………」

リナリアの表情から察するに、アンナに心を抉るような言葉を投げかけられたことは間違いなかった。
それなのにそこまでしてアンナを庇う理由が私には分からなかった。
リナリアが私を見つめてくる。
私はその抗い難い魔力に負け、ため息をついた。

「はぁ……わかりました。今回の件は見なかったことにします」

今回の事件は見なかったことにする以外の解決策がなかった。そうでないとアンナに罰を下さなければならなくなるし、今回の罰はクビ以外はあり得ない。
私は部屋から出ていく。
部屋から出てきても私は心の中の困惑が収まらず、さっき聞いたリナリアの言葉について考えていた。
不思議なことに、この時点で私はリナリアとの婚約を破棄するという考えはなかった。

思えば、ここが私のリナリアに対する気持ちの転換点だった。

それまでリナリアはただの次の婚約者までの繋ぎの婚約者であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。
できるだけ私という人間を知られないように会話も極力避けていた。

だけどリナリアがどういう人間なのかを知ってからその認識は変わった。
それから私は今までは避けるようにしていた会話をするようになった。
あれほど誰にも内心を悟られまいとしていたのに、リナリアに心に触れられるのは何故か苦痛ではなかった。
いつも朗らかに笑っているリナリアは長い貴族生活で荒んだ心を癒し、また慰めてくれた。

そしてリナリアと会話をしているうちに、私の中でリナリアは次第に大切な存在へと変化していった。
リナリアに対して恋心を抱いた訳ではないが、目の前に現れたこの眩いほどの存在を手放してはならないと、そんなことを考えるくらいには大切な存在にはなった。

だけど同時に、早急にリナリアとの婚約を破棄したほうがいいことは理解していた。
いくらいずれ婚約破棄するとはいえ、世間体や品位の問題は大事だ。
リナリアが実家で奴隷のように育てられてきた、と知れ渡れば私にも被害が及ぶ。
でも、それでもまだ大丈夫。
時間はまだあるのだから、と私は問題を先送りにして考えないようにしていた。
この心地よい時間を保つために。


パーティーから帰ってきた夜、アンナが私の部屋へとやってきた。

「お願いします。リナリア様との婚約を破棄しないでください」

アンナは部屋に入ってくるなり私にそう言った。

「私は解雇されても良いので、どうかリナリア様だけは」

私は今までのアンナの利己的な性格からは想像もできない献身的な言葉に驚いていた。
あの私の妾になることを狙っていた頃のアンナと同一人物とは到底思えない。

「あなたには養わなければならない家族がいたはずです。彼らを養うためにもあなたは解雇されるわけにはいかなかったのでは? それなのになぜそこまでリナリアのことを助けようとするのですか?」

そう、リナリアには仕送りで生活する家族がいたはずだ。
加えて病気の母のために治療費を稼ごうと私の妾になろうとしていた。

「彼女は私の恩人だからです」
「恩人?」
「リナリア様は私の母を救ってくれました」

アンナから事情を聞いてみると、どうやらリナリアが持ってきたドレスをアンナにあげて、そのドレスを売り払ったお金でアンナの母を救うことができたらしい。
私はアンナの状況を知っていたし、哀れだとも思っていた。
それでも助けなかったのはアンナのような不幸な話などどこにでも転がっているからだ。
誰かが不幸な状況に陥っているたびにいちいちそれを救おうとしてはキリがない。
だから私はアンナを助けることはしなかった。
しかしリナリアはそれをいとも容易く行なったらしい。

「私は他の仕事をすれば食い繋ぐことはできます。けどリナリア様は婚約破棄されれば後に残っているのは何もないんです。どうか私をクビにする代わりにリナリア様をこの屋敷においていただけないでしょうか」

アンナが私に頭を下げてきた。

「……」

私は沈黙していた。

「ですが、リナリアが嘘をついていた以上、公爵家の当主としてこのままにしておくのは──」
「違いますね」
「…………何を」
「本当は私を解雇しようとした日、全てを聞いてらしたのでしょう?」

いきなり核心を突かれて私は誤魔化すことすらできなかった。

「……何故分かったのですか」
「女の勘です」

アンナはそう断言した。

「根拠を言うなら、あの日からリナリア様に対する態度が変わっていることですね」
「……驚いた。とんだ名探偵ですね、あなたは」

私は勘でそこまで気づかれていたことを素直に称賛した。

「何故リナリア様を追い出さなかったのですか」
「その時はリナリアの過去について確信が無かったんです……」

実際私が聞いたのは断片的な言葉で、リナリアの過去はそこから想像したものに過ぎない。

「では、何故馬車の中でリナリア様を問い詰めなかったのですか」
「それは私も困惑していて……」

いや、違う。
リナリアがどんな風に過ごしてきたのかは知っていたはずだ。
ローラの言ったことも予想の範疇だったし、ローラがあのようにリナリアの過去を言いふらす人物だと分かった時点でリナリアを切り捨てるべきだった。
しかし私はそれを選択しなかった。
本当は分かっている。
私は必死に探していたのだ。
リナリアの婚約者のまま留めておく言葉を。

「本当は、リナリア様を引き留めるための理由を探していらっしゃたんでしょう?」
「……」

全て見透かされていた。
図星すぎて何も言い返すことができない。

「明日、リナリア様を花園へとお連れいたします。それまでにリナリア様を引き留める理由を考えておいてください」
「……」

私の返事を待たずにアンナは部屋から出ていった。

「女の勘というものはあそこまで凄まじいものですか……」

私は少ない情報で全てを見透かしてきたアンナに少々恐れを抱く。
だが、アンナの言った言葉は正しかった。

「リナリアを引き留めるための理由……」

その夜、一晩中私はリナリアを引き留めるための理由を考え続けた。
しかしどれだけ考えても言葉が思いつかなかった。



翌日、私はアンナに言われた通りに花園でリナリアを待っていた。
しばらく待っているとアンナがリナリアを連れてやってきた。
アンナはすぐに去っていって、花園には私とリナリアが残された。
先に口を開いたのはリナリアの方だった。

「あっ、あのっ! じ、実は私! 財政の管理とかできます!」
「は?」
「実は父に当主としての仕事をほとんど押し付けられてたので、そういう仕事は得意です!」

開き直ったように私にそう言うリナリアに私は呆気に取られていた。

「それに私、料理も家事も得意です! 本もたくさん読んでるので知識だけはいっぱいあります! だから……だから! まだ私と婚約を結んでいてください!」

最後の言葉で、私はハッとした。
リナリアもこの婚約が続くことを望んでいる。
私もなんとか返事をする。
しかし口から出てきた言葉は本心とは別の公爵家当主としての冷たい言葉だった。

「ローラ嬢の言葉によればあなたは元の家では冷遇されてきたようですね。そして今まで黙っていた、そうですね?」
「っ!」

リナリアが深く傷ついた顔になる。
ああ、違う。
私はこんなことが言いたいのではない。

「何故もっと早く言ってくれなかったのですか。初めから知っていれば──」

これも違う。
初めから知っていたなら、そもそもリナリアを婚約者にしようなんて考えなかった。
理由、理由だ。
リナリアの過去というデメリットを帳消しにしてでも引き留めるに足る理由がいる。

「私は……」

見つからない。
どれだけ探してもリナリアを引き留めるに足る理由が見つからない。
どうにか理由をこじつけようとしても公爵家当主としての理性が邪魔をして、私にリナリアを引き留めさせようとしない。

「申し訳ありません……」

リナリアが思い詰めたような表情で私に謝罪する。

「違います」
「え?」
「私が言いたいのは、そんなことじゃないんです……」

 私はもどかしさに拳を握りしめる。

(違う! 私はリナリアにこんな表情をさせたいわけじゃない!)

そうだ。
理由が見つからないのなら。

(私が、理由を作るんだ……!)

「わ、私と──」

息を吸い込む。
リナリアの手を取る。

「友人になってください!」
「え?」

リナリアはポカンとした顔になった。
私だって荒唐無稽なことを言っていることは分かっている。
だけどもうこれでしか、リナリアを引き留めることができない。

「なんで……」
「実は、あなたのことは知っていました」
「え?」
「黙っていて申し訳ありません。でもあの時、愛されたいと、そのために嘘をついて何が悪いと叫ぶその姿が、今まで虚飾まみれで生きてきた私にはとても美しいと感じたんです」
「私が、美しい……?」

リナリアが私の言葉を噛み締めるように繰り返すと、その瞳からポロポロと涙が零れ落ちてきた。

「嘘をついた私を許してくれるのですか……?」
「許します」

許さないわけがない。
嘘をついていたのは私もだ。
当初、リナリアが私に好意を持っていると勘違いをし、私はそれを利用しようとした。

「だから友人として婚約者のまま私を支えてはくれませんか……?」

ここで拒絶されたらもうリナリアを引き留める理由がなくなる。
私は祈るようにそう言った。

「はい……!」

リナリアは笑おうとして、失敗してまた泣いた。

「ありがとうございます……っ!」

リナリアが泣きじゃくる。
そんなリナリアを宥めながら、私は心の底からリナリアを引き留めることができたことに安堵していた。
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