「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。

水垣するめ

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1話

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 それは、ある一言から始まった。

「ナタリー、君は僕より目立ち過ぎる。男である僕より目立たないでくれないか」

 私が十歳の頃、伯爵家のノーラン・パーカーと婚約してからすこし経った時に、はノーラン私に向かってこう言った。
 確かに、今まで教えられてきたことにも「婦人として目立ちすぎない」こと、とあった。
 だから私は自分の見た目を地味にした。
 金髪は茶色に染め、化粧は落とし、前髪を伸ばし、猫背気味にした。

 そのかいもあって、私はとても地味になった。
 しかし、まだ満足しなかったノーランは次にこう言った。

「男の僕よりも発言するのをやめてくれ」

 確かに私はノーランよりも発言することが多かった。
 貴族の淑女はおしとやかでなければならない、とも教えられていたので、私は従うことにした。
 徹底的に口を閉じた。
 余計なことを喋らないように、質問されたこと以外には答えないようにした。

 私はそうしてノーランの希望通りに自分をかえていった。
 全てはノーランの為だった。
 しかし、その努力は裏切られた。

「ナタリー・ウィルソン。君との婚約は今日で破棄する」

 学園の庭園へと呼び出された私は、到着するやいないや婚約者のノーランからそう切り出された。
 ノーランの隣には女性が座っていた。

「僕はより相応しい女性と婚約することにしたよ」

 そう言ってノーランは隣に座っている女性を紹介した。
 しかし、私は何も喋らずうつむいていた。

「彼女は子爵家のサンドラ・ワトソン。どうだい、君と違って美しいだろう? それに、彼女と話しているととても楽しいんだよ」

「初めまして、ノーラン様の婚約者のサンドラです!」

 サンドラが元気よく私へ挨拶する。
 確かにサンドラの顔は整っていた。
 “今の私”とは大違いだ。

 なおも私は黙って俯いている。

「君みたいに地味でブサイクで、無口で面白みもない女性は僕とは釣り合わないからね」

 ノーランが見下したような笑みで私を馬鹿にする。

 しかし、この時私は全く別のことを考えていた。

(婚約破棄ってことは、もう地味なメイクも、無理に黙らなくてもいいってこと……!?)

 そう、私は歓喜に打ち震えていたのだ。
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