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1章
25話
しおりを挟む「さ、入りましょう」
「え?」
私はクレアを連れて孤児院へと入っていく。
門を開けて中に入ると、クレアは辺りを見渡して呟いた。
「…………思ったより綺麗だな」
「そうでしょう? 誰がいつ来てもいいように清掃はきちんとしているんです」
この孤児院は建物自体が新しいため、貴族が通っている学園と同じくらい清潔だった。
「ここに何をしに来たんだ?」
「ふふ、それはお楽しみです」
私は思わせぶりに笑って孤児院の扉を開く。
その瞬間、子供たちが駆け寄ってきた。
「エマお姉ちゃんだ!」
「エマ姉!」
子供たちは私を見るや否や、笑顔で勢いよく駆け寄ってくる。
クレアはびっくりしたのか固まっていた。
「今日は何を買ってきてくれたの!?」
「その後ろの人が持ってるふくろ!?」
子供たちは矢継ぎ早に質問してくるので、そのパワーに圧倒されそうになりながら答える。
「ええ、そうよ。今日は皆んなにアップルパイを買ってきたのよ。あのお姉ちゃんが手伝ってくれたから、お礼を言って食べてね?」
「「「はーい!」」」
子供たちは勢い良く返事してクレアにお礼を言う。
「ありがとうきれいなお姉ちゃん!」
「ちがうよ、貴族の人にはありがとうございます、だよ!」
「ありがとうございます!」
「う、うん……」
クレアは子供たちにどう接していいのか分からないのか戸惑いながらも、笑顔を浮かべて子供たちにアップルパイを渡していく。
私はその様子を観察しがら感慨深く呟いた。
「女装×バブみ…………これは、流行る!」
「バカ言ってないで早く手伝え!」
クレアが小声で私に怒鳴ってきたので手伝いに行こうとしたその時、奥の部屋からとある人物がやってきた。
「エマ様。こんにちは」
「マリアさん。久しぶり」
やってきたのはこの孤児院で働いている養母の一人のマリアだった。
「ありがとうございます。今日もお菓子を持ってきていただいて」
「いいの、私も子供たちの笑顔が見たいし。それより、いつも言ってるけど様づけはやめてくれないかしら……?」
貴族とはいえ元の世界ではただの一市民だったので、畏まられると何だか居心地が悪い。
そのためいつも様づけは辞めてほしい、と言っているのだがマリアには拘りがあるようで絶対に譲らないのだった。
「そんな訳にはいきません。この孤児院を運営しているお方なんですから……あら、そちらのお方は?」
マリアは後ろのクレアに気づいたようで、私に質問してきた。
「彼女はクレア・アワード公爵令嬢です」
「えっ」
私がクレアの事を告げた瞬間、マリアの表情が固まった。
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