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第四章

奇跡の再会

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 黒衣に包まれた長身に、淡く煌く銀髪、深い青の瞳と、冷たいほど整った顔立ちに、薄く引き締まった唇――
 やはり幻覚じゃ無い……!
 どこからどう見ても、私の最愛の人、エルファンス兄様だ!

「……ど、どうして……っ」

 大き過ぎる驚きと感動に頭が沸騰したようになって、言葉がうまく出てこない。

「……地獄まででも一緒だと言っただろう?」

 囁くように言って、エルファンス兄様は大きな温かい手で私の頬をくるみ、愛しみを込めた瞳で見つめながら、強く唇を重ねてきた。

「まさか……本当に死に掛けているとは思わなかったけれど……お前……一体……何してるんだ?
 心配ばかり……かけて」

 言葉の合間に何度も会いたかった想いを伝えるように、情熱的に唇を吸ってくる。

「んっ……ごめ……なさっ」

 思わず涙を溢れさせていると、

「あんた誰だっ? っていうか、さっきから人前で何してるんだ!」

 横からカークの叫び声が響いてきて、私はやっと近くにいる二人の存在を思い出す。

「お前か、この酷い特攻パーティーのリーダーは?」

 エルファンス兄様が銀髪を揺らし、ギッと怖い目を横に向けるのが見えた。
 お兄様の全身から青白い怒りの炎が揺らめくようで、剣呑な空気にぞくっと背筋に悪寒が走る。
 物凄くお兄様は怒っている!

「……確かに貴方が来なければ相当まずい状況でした。
 ありがとうございました」

 激しい怒りを感じ取ったのか、キルアスがカークの頭を押さえ込んで無理矢理下げさせ、お礼を言った。
 お兄様は冷たく睨んでから顔を背け、それを無視して、私に向き直り尋ねてくる。

「……フィー、荷物は宿屋か?」

「うん……」

「よし戻ろう」

 言うや否や私を腕に抱き、エルファンス兄様は懐から、すっ、と角が多い複雑な形状の黄金色の金属物体を取り出して、短く呪文を唱えた。

「えっ?」

 刹那に景色がぐわんと歪んでぶれて、ずれたようになり、気がつくと私達はラウルの店の前にいた。

「えっ? えっ? 何で? 何が起こったの?」

「お前、転移術も知らないのか?」

「知ってるけど……ええっ?」

 混乱したままお兄様に腕を掴まれ、ラウルの店の中へと引っ張って連れて行かれる。

「部屋は空いてるか?」

「……あ、あんたはさっき来たばかりの!
 もうお嬢ちゃんと会えたのか、早いな」

「ああ……見ての通りだ」

「部屋ならちょうど空いているよ」

 ラウルの手から鍵を受け取ると、お兄様は鋭い視線を走らせ私に尋ねる。

「お前の荷物は?」

「二階に……」

「お嬢ちゃんの部屋の鍵なら預かっているよ。はい」

 と、気のきくラウルがポンともう一個の鍵も出して来た。


 宿屋部分になっている二階に上がり、私が泊まっていた部屋に入ると、お兄様は目に見えて機嫌を悪くした。

「あいつらと相部屋だったのか?」

「他に空いてなくて……」

 お兄様の表情と詰問口調が凄く怖くて、思わずびくびくして答えてしまう。

「全く、だからフィーからは目が離せないんだ。で、お前の荷物はどれだ?」

 指さしで答えると、エルファンス兄様はさっと荷物を持ち上げ、空いた片手で私の事も同じように抱え、隣の部屋へと移動した。

 バタン……と閉じたドアにがちゃりと鍵をかけられ、荷物が床にどさっと置かれる。
 部屋に入ると、改めてエルファンス兄様が私に向き直る。
 深い青の瞳は鋭利な刃物のようで、その表情は相変わらず怖かった。

「エルファンス……兄様……怒っているの?」

「当たり前だろう」

 色んな状況を考えると……もう謝るしかない。

「……ごめんなさい」

 涙ぐんでいると、ふっとお兄様の全身から、緊張が緩む気配がした。

「……でも会えてほっとした」

 安堵するような大きな溜息をつくのが見えた、次の瞬間、がばっと両腕で身体を強く捕まえられていた。

「フィー、もう離さないからな」

「うん……お兄様……」

 再び万感の想いを込めるように強く唇が重ねられ――
 久しぶりのお兄様の熱い口づけに全身が火照り、甘い痛みが胸に広がって呼吸が苦しくなる。

 しばらくそうしてお互いの温もりと感触を確認しあった後、お兄様は寝台に座り、向かい合う格好で自分の膝の上に私を座らせた。
 お兄様の硬い脚の感触をお尻の下に感じ、正面から見据える瞳の真剣さに落ちつかない気分になりながらも、私は口を開く。

 話したいこと、聞きたいことがたくさんあった。

「……どうして私が生きていて、しかも、ここにいるって分かったの?」

 不思議で不思議でたまらなかった。
 エルファンス様は左手で背中を抱き、右手で愛情を込めるように髪を撫で梳かしてくれながら、静かな口調で語り出した。
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