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第3章 七寺英太の革命日記
第62話 沈みゆく栄光 Reckoning Day
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全員が配置に着いた後、俺は戦闘用のミラーで敵の姿を確認する。確かに女の二人組が接近中だ。
片方はピンクの髪を腰まで伸ばしていて、もう一人は紫の髪を肩まで伸ばしている。
どちらも特殊部隊が使うようなデジタル迷彩の服を着ている。しかし顔はまる出しの無防備。こういういい加減さは、まさにゲームならではだな。
まぁ俺たちも似たようなカッコなんだ、こき下ろすのはよそう。俺はチャット回線を開く。
(敵を射程にとらえたら、容赦なく撃ちまくれ。火力でごり押すんだ)
リスから(誰を狙えばいい?)と質問が来る。
(お前は紫髪を頼む。俺とゼーキルはピンク髪をやるから)
(了解)
レーダーに視線をやる。そろそろ頃合いだ……よし!
(撃てッ!)
俺たちは立ち上がり、瓦礫に身を隠しながら発砲し始める。だが、敵との距離がまだ遠く、なかなか命中弾を得られない。
それでも撃ち続けていると、ピンク髪の前方に青白い半透明の壁が発生し、弾を無力化していく。
ゼーキルが「バリアか!」と吐き捨てる。俺は返す。
「いいから撃て! エナジー切れに追いこむんだ!」
「ぐぅっ……!」
女たちはバリアを盾にして突き進んでくる。ここは作戦を変え、接近戦に持ちこむべきか?
そうやって迷った直後、ピンク髪が大きくジャンプする。そして、空中で二段目のジャンプを行い、俺たちの頭上を取る。
すぐに視線を向ける。奴の右手に何かの物体が握られているのが分かる。いったいなんだ? モスグリーンの色をした、野球のボールみたいな……。
「しまった! グレネード!」
刹那、ピンク髪が腕を振り、グレネードを投げる。そいつは俺たちの足元に転がり、派手な音を立てて爆発する。
バンッ! まき散らされた大量の金属片が体を貫き、俺のHPゲージが一瞬で激減する。爆風で体のバランスが崩れ、俺は地面に倒れこむ。
まぁゲームだから痛みは無い、だが臨場感を出す演出の一環として、携帯のバイブのような軽い振動や衝撃が発生する。
急いでステータスを確認すると、気絶状態だ。俺と同じく倒れてしまったゼーキルが言う。
「やられたな。さて、どうする?」
「逃げるか、戦うか……」
「これだけダメージを受けていては、どちらも厳しいな」
「じゃあ……」
いったいどうすればいい? 俺は混乱した頭を抱え、とりあえずチャット回線を開く。
(リス、大丈夫か?)
(こんくらい平気。そっちは?)
(見ての通りだ。ボロボロ)
(うわ……)
(こちらヨーランド。セブン、何があった?)
(敵にグレネードをぶちこまれてね)
(そっちもか!)
(お前も同じことをやられたのか?)
(イエス。おかげで2人も死んじまった)
(最悪だな……。しょうがねぇ、撤退するぞ。後ろの地点で合流して、態勢を立て直すんだ)
(徹底といってもよ、敵が追撃してくるぜ。それを防ぐため、誰かがここに残って戦わなくちゃ。でもそんな余力のあるやつなんて……)
唐突にゼーキルが発言する。
(その役目、俺が引き受ける。だからみんなは下がれ)
は? 驚き、俺は言う。
(おい、ゼーキル! なにを言ってる!?)
(俺のダメージは大きすぎて、もうまともに戦えない。だから捨て駒にはうってつけだ)
(だからって……)
(いいから下がれ!)
リスが悲鳴を上げる。
(あいつら、こっちに走ってきてる! まずいよ!)
(セブン、早くしろっ! 時間が無い!)
(わかったよ……!)
俺は、左手首に着けた腕時計のような機械を起動し、底部から針を飛び出させ、体に突き刺す。
針を伝って回復薬が流れこみ、少しの体力が戻り、気絶も治る。これなら走る程度はできるはずだ。
ゼーキルも俺と同じようにして回復したらしい。彼はよろよろと体を起こして言う。
「さぁ、行け!」
「……すまねぇ」
「構わん!」
そう言ってゼーキルはバリアをまとい、ソードを手にして飛び出す。すぐにピンク髪たちの発砲音が響き、戦いが始まったことを報せる。
いくらゼーキルが強いといっても、あれだけ傷ついた状態で1対2の勝負をすれば、間違いなく負ける。
だが、彼がこうして時間を稼いでくれなきゃ逃げられない。本当にムカつくけど、今は我慢だ。離脱する。
俺は走りながら歯噛みして思う。このままじゃ全滅させられるかもしれん。
クソッタレ、そんなの絶対認めねぇ! 王者たる俺は勝ち続けるんだ!
きちんと体力を回復したら、あんな弱っちそうな微課金の貧乏人のクズども、ギタギタにぶちのめす!
そうだ、俺は負けない! どこまでも勝ち、すべてを支配する! もし負けるくらいなら引退したほうがマシだ!
片方はピンクの髪を腰まで伸ばしていて、もう一人は紫の髪を肩まで伸ばしている。
どちらも特殊部隊が使うようなデジタル迷彩の服を着ている。しかし顔はまる出しの無防備。こういういい加減さは、まさにゲームならではだな。
まぁ俺たちも似たようなカッコなんだ、こき下ろすのはよそう。俺はチャット回線を開く。
(敵を射程にとらえたら、容赦なく撃ちまくれ。火力でごり押すんだ)
リスから(誰を狙えばいい?)と質問が来る。
(お前は紫髪を頼む。俺とゼーキルはピンク髪をやるから)
(了解)
レーダーに視線をやる。そろそろ頃合いだ……よし!
(撃てッ!)
俺たちは立ち上がり、瓦礫に身を隠しながら発砲し始める。だが、敵との距離がまだ遠く、なかなか命中弾を得られない。
それでも撃ち続けていると、ピンク髪の前方に青白い半透明の壁が発生し、弾を無力化していく。
ゼーキルが「バリアか!」と吐き捨てる。俺は返す。
「いいから撃て! エナジー切れに追いこむんだ!」
「ぐぅっ……!」
女たちはバリアを盾にして突き進んでくる。ここは作戦を変え、接近戦に持ちこむべきか?
そうやって迷った直後、ピンク髪が大きくジャンプする。そして、空中で二段目のジャンプを行い、俺たちの頭上を取る。
すぐに視線を向ける。奴の右手に何かの物体が握られているのが分かる。いったいなんだ? モスグリーンの色をした、野球のボールみたいな……。
「しまった! グレネード!」
刹那、ピンク髪が腕を振り、グレネードを投げる。そいつは俺たちの足元に転がり、派手な音を立てて爆発する。
バンッ! まき散らされた大量の金属片が体を貫き、俺のHPゲージが一瞬で激減する。爆風で体のバランスが崩れ、俺は地面に倒れこむ。
まぁゲームだから痛みは無い、だが臨場感を出す演出の一環として、携帯のバイブのような軽い振動や衝撃が発生する。
急いでステータスを確認すると、気絶状態だ。俺と同じく倒れてしまったゼーキルが言う。
「やられたな。さて、どうする?」
「逃げるか、戦うか……」
「これだけダメージを受けていては、どちらも厳しいな」
「じゃあ……」
いったいどうすればいい? 俺は混乱した頭を抱え、とりあえずチャット回線を開く。
(リス、大丈夫か?)
(こんくらい平気。そっちは?)
(見ての通りだ。ボロボロ)
(うわ……)
(こちらヨーランド。セブン、何があった?)
(敵にグレネードをぶちこまれてね)
(そっちもか!)
(お前も同じことをやられたのか?)
(イエス。おかげで2人も死んじまった)
(最悪だな……。しょうがねぇ、撤退するぞ。後ろの地点で合流して、態勢を立て直すんだ)
(徹底といってもよ、敵が追撃してくるぜ。それを防ぐため、誰かがここに残って戦わなくちゃ。でもそんな余力のあるやつなんて……)
唐突にゼーキルが発言する。
(その役目、俺が引き受ける。だからみんなは下がれ)
は? 驚き、俺は言う。
(おい、ゼーキル! なにを言ってる!?)
(俺のダメージは大きすぎて、もうまともに戦えない。だから捨て駒にはうってつけだ)
(だからって……)
(いいから下がれ!)
リスが悲鳴を上げる。
(あいつら、こっちに走ってきてる! まずいよ!)
(セブン、早くしろっ! 時間が無い!)
(わかったよ……!)
俺は、左手首に着けた腕時計のような機械を起動し、底部から針を飛び出させ、体に突き刺す。
針を伝って回復薬が流れこみ、少しの体力が戻り、気絶も治る。これなら走る程度はできるはずだ。
ゼーキルも俺と同じようにして回復したらしい。彼はよろよろと体を起こして言う。
「さぁ、行け!」
「……すまねぇ」
「構わん!」
そう言ってゼーキルはバリアをまとい、ソードを手にして飛び出す。すぐにピンク髪たちの発砲音が響き、戦いが始まったことを報せる。
いくらゼーキルが強いといっても、あれだけ傷ついた状態で1対2の勝負をすれば、間違いなく負ける。
だが、彼がこうして時間を稼いでくれなきゃ逃げられない。本当にムカつくけど、今は我慢だ。離脱する。
俺は走りながら歯噛みして思う。このままじゃ全滅させられるかもしれん。
クソッタレ、そんなの絶対認めねぇ! 王者たる俺は勝ち続けるんだ!
きちんと体力を回復したら、あんな弱っちそうな微課金の貧乏人のクズども、ギタギタにぶちのめす!
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