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教師1年目
授業再開
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「さて、学校が再開されたわけだけど。そろそろ期末テストがちらついてくるわけよ」
新年早々、気が滅入る話をする。
「2月初めから中盤にかけてテストが行われるわけだけど、実は1か月しかないからな。で、今回の学年末テストは前期の期末テストから今までの範囲じゃなくて、この学年で学んだもの全てが範囲になる。そりゃ後期に学んだことが多めになるけど、前期で学んだことはもう遥か昔にやったことだしな? いくら一回テスト勉強しているとはいえ、見直す時間は必要だろ?」
親切心なのである。
日本では学年末テストはその名前通りではなく、結局後期の期末テストである場合が多いと記憶しているが、こちらでは違うのだ。
「テスト範囲自体はこれから勉強してく部分も入るから、まだ増えていくからな。一度勉強した部分くらい先にしていていいと思うぞ。じゃあ、今日の授業を始めよう」
後期になって追加された授業。
地理である。
「先生、地理ってなんで学んでるんですかー?」
「お、今さらだな、マロン」
「僕は勉強が苦手だからー。勉強しなくていいならしたくないんですよー」
「ま、そりゃもっともだ。そうだなぁ……」
少し理由を考えるライヤ。
「正直、研究者とかにならない限りは地質とかの話は関係ないかもな」
「ほらー」
「他の内容だと、王国の周辺の地形の名前とかだけど。戦時の地形把握が絶対に簡単になる。戦況の説明の時に全員に地図がいきわたっている場合なんてまずない。S級として説明をされることになるだろうけど、その時に地形はこうだから自分はこうしたらいいっていうのがわからないのはもったいないぞ?」
「なるほどー」
「単純に科目に指定されてるからって理由よりは勉強もしやすいだろう。あとは、俺の個人的な話になるんだけど。勉強して出てくる場所は何かしらで有名なところが多いわけだ。観光地として栄えている街が出てくることも少なくない。例え他国であっても、いつか行ってみたいなと思うのは想像できて楽しくないか?」
観光地という観光地には長いこと行けていない。
この前の夏の海水浴もほとんど楽しめなかったし。
穏やかな観光地に行きたいというライヤの切なる願いである。
「……あの……」
「ん、どうした?」
「……あの、えっと、算数を教えて欲しくて……」
放課後、シャロンが職員室を訪れた。
訪れたと言っても人見知りなシャロン。
知らない先生がいる場所に入るのが怖すぎて職員室の周りをまごまごとうろついているのをライヤが察知して駆けつけた形だ。
「あぁ、そっか。苦手だもんな」
シャロンは勉強の得意不得意がはっきりしていて、文系科目が得意で理系科目が苦手である。
ライヤの中での話にはなるが、どちらかというと理系科目が苦手な方が早期の対処が必要になると考えている。
なぜなら、理系科目が苦手という事はたいていの場合数字の扱いが苦手という事だが、算数・数学はどこかで躓いたらその先のことが一気にできなくなるのだ。
文系科目は記憶の割合が多いため、一つできなくてもその先のことが出来なくなるという事はあまりない。
例えば、ある漢字を覚えられなかったからといって、他の漢字も覚えられないということは無いだろう。
だが理系科目、数学においてはそうではない。
足し算が出来なければ引き算も難しくなるし、勉強の難易度が上がれば上がるほどそれは顕著になる。
2次関数の計算が出来なければ3次関数の計算も出来ないだろう。
そして、学んできたことが前提となるという性質が数学はより濃い。
ここで苦手を少しでも減らそうとするシャロンは地頭がいい。
「あー、そうだな。またうちでやるか。ただ、ちょっとだけ待ってくれるか? 今のうちに終わらせないといけない仕事があってな」
「……もちろんです……」
「うん、じゃあ、そこのイスに座っといてくれ」
こういう時に職員室のライヤの席は便利である。
いっぱいある席の中から自分が座る席を選ぶシステムなのだが、なにせライヤ。
他の教師からも距離を置かれているので隣の席の教師がいない。
生徒の一人や二人訪ねてきても全く問題ないスペースが周りにあるのだ。
まぁ、仕事をしていて多少気が滅入るところではあるが、
疎外感が凄い。
「んん! ライヤ先生、少しいいかなんだな」
「これはこれはイベリコ先生。どうされました?」
そんなライヤ。
もちろん職員室で話しかけられることなどまずない。
だからこそ、D級担任のイベリコから話しかけられたのにはかなり驚いた。
「今、生徒を家に招いているようなことを言っていなかったかなんだな?」
「えぇ、まぁ。うちであれば資料もたくさんありますし、俺も教えやすいので」
「そこで提案なんだな! 新任のライヤ先生には荷が重いだろうから、僕がその役目を代わってあげるんだな!」
自信満々に言い放つイベリコ。
名前の通り存在感のある腹を揺らしながらシャロンの方を向く。
「ぼ、僕は先生をして長いんだな。僕に教わった方がわかりやすいと思うんだな!」
「……ひっ……!」
イベリコには生徒の中で結論が出ている事項がある。
それは、まぎれもないロリコンであるという事。
教師という仕事上、どの学年を受け持つかは時によるのだが、学年が上の方を受け持っている時の仕事に対する意欲が極端に低い。
そして、学年が下の方を受け持った時は何かと家に招こうとする。
毒牙にかかった者も後を絶たないらしいが、貴族の力でもみ消しているのだろう。
実際にそんな誘いに乗ってしまうのは平民の子たちしかいないだろうから。
だが、それでも諦めないダイアモンドの心の持ち主である。
「お気遣いはありがたいですが、シャロンは俺の生徒です。俺が教えます」
無論、ライヤもそんな横暴を許すわけがない。
「んふー、そうなんだな。まぁ、気が変わったらいつでも教えてあげるんだな」
去り際は心得ているようで、人三倍くらいある足音を立てて自分の席に戻っていった。
エッグいな……。
新年早々、気が滅入る話をする。
「2月初めから中盤にかけてテストが行われるわけだけど、実は1か月しかないからな。で、今回の学年末テストは前期の期末テストから今までの範囲じゃなくて、この学年で学んだもの全てが範囲になる。そりゃ後期に学んだことが多めになるけど、前期で学んだことはもう遥か昔にやったことだしな? いくら一回テスト勉強しているとはいえ、見直す時間は必要だろ?」
親切心なのである。
日本では学年末テストはその名前通りではなく、結局後期の期末テストである場合が多いと記憶しているが、こちらでは違うのだ。
「テスト範囲自体はこれから勉強してく部分も入るから、まだ増えていくからな。一度勉強した部分くらい先にしていていいと思うぞ。じゃあ、今日の授業を始めよう」
後期になって追加された授業。
地理である。
「先生、地理ってなんで学んでるんですかー?」
「お、今さらだな、マロン」
「僕は勉強が苦手だからー。勉強しなくていいならしたくないんですよー」
「ま、そりゃもっともだ。そうだなぁ……」
少し理由を考えるライヤ。
「正直、研究者とかにならない限りは地質とかの話は関係ないかもな」
「ほらー」
「他の内容だと、王国の周辺の地形の名前とかだけど。戦時の地形把握が絶対に簡単になる。戦況の説明の時に全員に地図がいきわたっている場合なんてまずない。S級として説明をされることになるだろうけど、その時に地形はこうだから自分はこうしたらいいっていうのがわからないのはもったいないぞ?」
「なるほどー」
「単純に科目に指定されてるからって理由よりは勉強もしやすいだろう。あとは、俺の個人的な話になるんだけど。勉強して出てくる場所は何かしらで有名なところが多いわけだ。観光地として栄えている街が出てくることも少なくない。例え他国であっても、いつか行ってみたいなと思うのは想像できて楽しくないか?」
観光地という観光地には長いこと行けていない。
この前の夏の海水浴もほとんど楽しめなかったし。
穏やかな観光地に行きたいというライヤの切なる願いである。
「……あの……」
「ん、どうした?」
「……あの、えっと、算数を教えて欲しくて……」
放課後、シャロンが職員室を訪れた。
訪れたと言っても人見知りなシャロン。
知らない先生がいる場所に入るのが怖すぎて職員室の周りをまごまごとうろついているのをライヤが察知して駆けつけた形だ。
「あぁ、そっか。苦手だもんな」
シャロンは勉強の得意不得意がはっきりしていて、文系科目が得意で理系科目が苦手である。
ライヤの中での話にはなるが、どちらかというと理系科目が苦手な方が早期の対処が必要になると考えている。
なぜなら、理系科目が苦手という事はたいていの場合数字の扱いが苦手という事だが、算数・数学はどこかで躓いたらその先のことが一気にできなくなるのだ。
文系科目は記憶の割合が多いため、一つできなくてもその先のことが出来なくなるという事はあまりない。
例えば、ある漢字を覚えられなかったからといって、他の漢字も覚えられないということは無いだろう。
だが理系科目、数学においてはそうではない。
足し算が出来なければ引き算も難しくなるし、勉強の難易度が上がれば上がるほどそれは顕著になる。
2次関数の計算が出来なければ3次関数の計算も出来ないだろう。
そして、学んできたことが前提となるという性質が数学はより濃い。
ここで苦手を少しでも減らそうとするシャロンは地頭がいい。
「あー、そうだな。またうちでやるか。ただ、ちょっとだけ待ってくれるか? 今のうちに終わらせないといけない仕事があってな」
「……もちろんです……」
「うん、じゃあ、そこのイスに座っといてくれ」
こういう時に職員室のライヤの席は便利である。
いっぱいある席の中から自分が座る席を選ぶシステムなのだが、なにせライヤ。
他の教師からも距離を置かれているので隣の席の教師がいない。
生徒の一人や二人訪ねてきても全く問題ないスペースが周りにあるのだ。
まぁ、仕事をしていて多少気が滅入るところではあるが、
疎外感が凄い。
「んん! ライヤ先生、少しいいかなんだな」
「これはこれはイベリコ先生。どうされました?」
そんなライヤ。
もちろん職員室で話しかけられることなどまずない。
だからこそ、D級担任のイベリコから話しかけられたのにはかなり驚いた。
「今、生徒を家に招いているようなことを言っていなかったかなんだな?」
「えぇ、まぁ。うちであれば資料もたくさんありますし、俺も教えやすいので」
「そこで提案なんだな! 新任のライヤ先生には荷が重いだろうから、僕がその役目を代わってあげるんだな!」
自信満々に言い放つイベリコ。
名前の通り存在感のある腹を揺らしながらシャロンの方を向く。
「ぼ、僕は先生をして長いんだな。僕に教わった方がわかりやすいと思うんだな!」
「……ひっ……!」
イベリコには生徒の中で結論が出ている事項がある。
それは、まぎれもないロリコンであるという事。
教師という仕事上、どの学年を受け持つかは時によるのだが、学年が上の方を受け持っている時の仕事に対する意欲が極端に低い。
そして、学年が下の方を受け持った時は何かと家に招こうとする。
毒牙にかかった者も後を絶たないらしいが、貴族の力でもみ消しているのだろう。
実際にそんな誘いに乗ってしまうのは平民の子たちしかいないだろうから。
だが、それでも諦めないダイアモンドの心の持ち主である。
「お気遣いはありがたいですが、シャロンは俺の生徒です。俺が教えます」
無論、ライヤもそんな横暴を許すわけがない。
「んふー、そうなんだな。まぁ、気が変わったらいつでも教えてあげるんだな」
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エッグいな……。
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