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春休み
開戦
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再びのマルクス領。
つまり、エウレアの実家の領地である。
流石に今回は姿を見ることは無い。
「ここを拠点とすることになります。今のうちに防衛手段を固めましょう」
アンが指示を飛ばし、軍が動き始める。
「ライヤは自由に動いていいわよ」
「いいのか?」
ライヤとしても願ったり叶ったりである。
「そもそもあなたの部隊は軍所属だけど独立している部隊だから。むしろ別に動いてもらわないと困るわ」
「あぁ、そういうことね」
今から組織系統に組み込むのが難しいのだろう。
「じゃあ、行ってくるわ」
「とりあえず偵察だけよ」
「わかってる」
「と、いうわけで。アンからの許しも貰ったし、適当に動いていい」
「隊長の指示はないので?」
「俺に隊長の経験はないしな。基本的には今まで通り動いてもらった方がいいと思ってる。俺が不適当な命令だしても余計な被害が増えるだけだろ? その代わり、特殊な行動の作戦思いついたらそれに従って欲しい」
「それはもちろん。それを期待しているので。ただ、ミランダだけは隊長のもとに置いておきます。元々偵察には向かないので」
「まぁ、そうだろうな」
察しがつく。
「ミランダも無理に俺のところにいなくていいぞ? どうせ大したことはしないから」
「いえ、隊長のもとにいるのが隊員の役目なので」
「いや、だから隊長として指示してるんだけど……。まぁ、いいか。じゃあ、皆頼むよ」
一斉に散る部隊50余名。
独立部隊であるというのに納得するしかない動き。
通常の軍隊であれば5人単位で行動するのが基本だが、こっちは二人一組。
各々の実力があるからこその少人数だ。
「じゃあ、俺たちもいくか」
「はい」
ミランダを連れてライヤも偵察に出る。
「自分で言うのもなんだけど、よくついてこられるな」
「練習しました」
アン以外で目にするのは初めてだ。
ライヤと同レベルで空中移動を可能としている人間は。
以前戦場で会った帝国の帝国第二王子は恐らく、可能としているだろうが確認は取れていない。
王国で言えば、恐らく賢者のじいさんはできるのだろうが、見たことは無い。
「練習って?」
「体育祭の時、隊長がこれを使って移動しているのを見ていますので。自分も出来たほうが良いかと思いまして」
「まぁ、楽なのは確かだけどな……」
半年余りで独学で習得したことになる。
実はこいつ天才じゃね?
「……隊長」
「うん、気付いてる」
王国があれだけ大仰に軍を派遣しているのだ。
諸国連合側も放っておくはずがない。
国境付近に野営地の煙が上がっているのが見える。
ただ、ちょうど国境のあたりは密林であり、視界も悪く湿度も高い。
野営地には向かないので少し距離が開いている。
「もう少し近づきますか?」
「いや、今は開戦していないからやめておこう」
近づくには国境を越えなければならない。
わざわざ向こうにきっかけを与える必要はない。
「報告いたします! カムイ王子の部隊が開戦した模様です!」
「……」
「……開戦時期は互いに相談する予定では?」
言葉を失うライヤ。
アンは報告に来た兵士に聞くが、顔がキレている。
「そ、その予定であったはずですが……」
「なのに!?」
「ひっ……!」
「……アン、その人にあたっても仕方ない。大将たちを集めよう」
「どうせ王子を押さえられんかったんじゃろ。わしをいかせるなら向こうじゃとあれほど言ったのに……」
ぶつぶつと独り言を言っているのは王国軍大将、メンデス・ガイア。
数少ない王国軍大将の中でも年齢が王様を超えている唯一の人間である。
「メンデス大将には海戦の経験がないのではこちらでも仕方ないのでは?」
「今の大将に海戦経験がある奴はおらんじゃろうが。中将ごときじゃどうせ王子に流されると思っておったわ。どうせ大将の座でもちらつかされたのじゃろ」
「勝てると思います?」
「無理じゃろ。じゃから元々時間稼ぎって話じゃったじゃから」
諸国連合とは陸地で面している部分が少ない。
よって海戦も多くなる。
そして相手国では海軍が発達していることから海戦では苦戦が予想された。
だからこそ、全体でも2番目に多くの人員を用いて陸地で大勢が決するまで遅延する作戦であったはずだ。
「カムイの野郎が手柄が欲しくてやったんだろうな……」
「……そうでしょうね。メンデスさん、どうするべきかしら?」
「わしとしてはむしろお嬢の意見が聞きたいね」
アンをお嬢呼びするのはこの人だけである。
「やるしかないでしょう」
「その通り。口火が切られた以上、海側が潰れる前にこっちの片を付けにゃあならん」
「勝てますか」
「勝ちは揺るがん。じゃが、どれだけかかるかは正直微妙じゃな。そこの坊主次第か?」
そしてメンデスはライヤともかかわりのある人物である。
王城に行った際に見つかってしごかれたこともしばしば。
王はカムイの暴走の心配よりもライヤの実力をわかっていて好きに動かせる人間をアンの方に向かわせることを優先したのだ。
「崩して来いってことでいいですか?」
「ま、そうじゃな。指揮系統の一つでも奪ってこい。そんくらいできるじゃろ」
ハードルたけぇ……。
絶対カムイ一発殴る。
本気で。
つまり、エウレアの実家の領地である。
流石に今回は姿を見ることは無い。
「ここを拠点とすることになります。今のうちに防衛手段を固めましょう」
アンが指示を飛ばし、軍が動き始める。
「ライヤは自由に動いていいわよ」
「いいのか?」
ライヤとしても願ったり叶ったりである。
「そもそもあなたの部隊は軍所属だけど独立している部隊だから。むしろ別に動いてもらわないと困るわ」
「あぁ、そういうことね」
今から組織系統に組み込むのが難しいのだろう。
「じゃあ、行ってくるわ」
「とりあえず偵察だけよ」
「わかってる」
「と、いうわけで。アンからの許しも貰ったし、適当に動いていい」
「隊長の指示はないので?」
「俺に隊長の経験はないしな。基本的には今まで通り動いてもらった方がいいと思ってる。俺が不適当な命令だしても余計な被害が増えるだけだろ? その代わり、特殊な行動の作戦思いついたらそれに従って欲しい」
「それはもちろん。それを期待しているので。ただ、ミランダだけは隊長のもとに置いておきます。元々偵察には向かないので」
「まぁ、そうだろうな」
察しがつく。
「ミランダも無理に俺のところにいなくていいぞ? どうせ大したことはしないから」
「いえ、隊長のもとにいるのが隊員の役目なので」
「いや、だから隊長として指示してるんだけど……。まぁ、いいか。じゃあ、皆頼むよ」
一斉に散る部隊50余名。
独立部隊であるというのに納得するしかない動き。
通常の軍隊であれば5人単位で行動するのが基本だが、こっちは二人一組。
各々の実力があるからこその少人数だ。
「じゃあ、俺たちもいくか」
「はい」
ミランダを連れてライヤも偵察に出る。
「自分で言うのもなんだけど、よくついてこられるな」
「練習しました」
アン以外で目にするのは初めてだ。
ライヤと同レベルで空中移動を可能としている人間は。
以前戦場で会った帝国の帝国第二王子は恐らく、可能としているだろうが確認は取れていない。
王国で言えば、恐らく賢者のじいさんはできるのだろうが、見たことは無い。
「練習って?」
「体育祭の時、隊長がこれを使って移動しているのを見ていますので。自分も出来たほうが良いかと思いまして」
「まぁ、楽なのは確かだけどな……」
半年余りで独学で習得したことになる。
実はこいつ天才じゃね?
「……隊長」
「うん、気付いてる」
王国があれだけ大仰に軍を派遣しているのだ。
諸国連合側も放っておくはずがない。
国境付近に野営地の煙が上がっているのが見える。
ただ、ちょうど国境のあたりは密林であり、視界も悪く湿度も高い。
野営地には向かないので少し距離が開いている。
「もう少し近づきますか?」
「いや、今は開戦していないからやめておこう」
近づくには国境を越えなければならない。
わざわざ向こうにきっかけを与える必要はない。
「報告いたします! カムイ王子の部隊が開戦した模様です!」
「……」
「……開戦時期は互いに相談する予定では?」
言葉を失うライヤ。
アンは報告に来た兵士に聞くが、顔がキレている。
「そ、その予定であったはずですが……」
「なのに!?」
「ひっ……!」
「……アン、その人にあたっても仕方ない。大将たちを集めよう」
「どうせ王子を押さえられんかったんじゃろ。わしをいかせるなら向こうじゃとあれほど言ったのに……」
ぶつぶつと独り言を言っているのは王国軍大将、メンデス・ガイア。
数少ない王国軍大将の中でも年齢が王様を超えている唯一の人間である。
「メンデス大将には海戦の経験がないのではこちらでも仕方ないのでは?」
「今の大将に海戦経験がある奴はおらんじゃろうが。中将ごときじゃどうせ王子に流されると思っておったわ。どうせ大将の座でもちらつかされたのじゃろ」
「勝てると思います?」
「無理じゃろ。じゃから元々時間稼ぎって話じゃったじゃから」
諸国連合とは陸地で面している部分が少ない。
よって海戦も多くなる。
そして相手国では海軍が発達していることから海戦では苦戦が予想された。
だからこそ、全体でも2番目に多くの人員を用いて陸地で大勢が決するまで遅延する作戦であったはずだ。
「カムイの野郎が手柄が欲しくてやったんだろうな……」
「……そうでしょうね。メンデスさん、どうするべきかしら?」
「わしとしてはむしろお嬢の意見が聞きたいね」
アンをお嬢呼びするのはこの人だけである。
「やるしかないでしょう」
「その通り。口火が切られた以上、海側が潰れる前にこっちの片を付けにゃあならん」
「勝てますか」
「勝ちは揺るがん。じゃが、どれだけかかるかは正直微妙じゃな。そこの坊主次第か?」
そしてメンデスはライヤともかかわりのある人物である。
王城に行った際に見つかってしごかれたこともしばしば。
王はカムイの暴走の心配よりもライヤの実力をわかっていて好きに動かせる人間をアンの方に向かわせることを優先したのだ。
「崩して来いってことでいいですか?」
「ま、そうじゃな。指揮系統の一つでも奪ってこい。そんくらいできるじゃろ」
ハードルたけぇ……。
絶対カムイ一発殴る。
本気で。
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