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教師2年目
過去と現在と
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「ルールは何でもありだ。ただ、相手を殺しかけるようなことがあれば俺が割って入るからそのつもりで」
「わかったわ」
「はい」
やけに聞き分けの良い2人だが、イリーナはともかくキリトからは「どうせ止められないけどな」という意味合いも感じられる。
「大抵の怪我はヨルがいるから何とかなる。その部分は安心していい」
「私の立場からすると、止めないといけないんですけど? というか、ライヤ先生もそうですよね?」
「知らんな」
「はぁ……」
「もういいでしょう? 早く始めましょう」
「いいだろう。キリトもいいな?」
「はい」
「じゃあ、始めろ」
「ファイアランス!」
開幕、キリトが炎で形作られた槍を手にする。
柄の部分は自らが得物としている槍のものだが、所謂槍部分に炎の外形が増築されているようなものだ。
「土よ」
対してイリーナは普段通りの片手剣を手に持ち、静かに土魔法を使っている。
「はああぁ!!」
正面からぶつかっていくキリトをするすると移動しながらいなしていくイリーナ。
「ライヤ先生はイリーナさんが勝つと思ってるんですよね」
「まぁ、そうだな」
「キリト君もかなり自信があるようですけど、その辺りはどう思います?」
「……ヨルはキリトの名前を諸国連合で聞いたことがあるのか?」
「? いえ、ないと思いますけど……」
「なら、そういうことだろ」
「?」
つまるところ、王国よりも小さな諸国連合で国レベルで特別視されるような存在ではないという事だ。
言い方は悪いが、簡単に国外に出されていることからもそれは推測できる。
国を一身に背負うほどの才能であれば、国外に出さないように最大限の努力をするだろう。
比較的やりたい放題しているアンが許されているのは王女であるというだけでなく、1人でも国を動かす力があるからだ。
「それこそ、アンさんと戦うとなれば勝敗はわかると思いますけど……」
「……なんか、イリーナに関して誤解があるみたいだけどな」
「避けてばかりしていないで、戦え!」
「あたしが避けられない攻撃をすればいいだけだろう。甘えるな」
「イリーナもかなり強いぞ?」
正直言って、イリーナは少し失望していた。
ライヤのことは人格はともかく、実力は承知している。
そのライヤが連れてきたのだからこの下級生もそれなりに歯ごたえのある相手だと踏んでいたのだが、全く口ほどにもない。
魔力量に物を言わせて大振りの攻撃をしてくるだけ。
下級生なんてそんなものだろうと言われればそれまでなのだが、それでも期待していた分、落胆は隠せない。
隠す気もない。
「……ふん」
チラリとライヤの方を見るが、何やら新任の諸国連合から来た先生と話している様子。
これ以上長引かせる意味もないし、終わらせるかと攻勢に出ようとした瞬間。
目の前の少年から発せられる魔力量が格段に多くなった。
「俺が勝たないと……。この世界に来た意味がない!」
何やらよくわからないことを叫んでいるが、その魔力量には目を見張るものがある。
もしかすると、アンにも匹敵するかもしれない。
「まぁ、素質はあるのかしらね」
その姿が少し前の自分と重なる。
魔力量を絶対視し、とにかく強い魔法を使っていればいいだろうと考えていた。
その考えはライヤによって粉々に打ち砕かれるわけだが。
「(このまま成長してたらと思うとゾッとするわね……)」
元々が勝ち気な性格のイリーナ。
アンにも腕試しがてら何度も手合わせを申し込んでいた。
負け続けていたが、それを魔力量のせいだと勘違いして当てのない努力を続けていたのだ。
差が開いていく様に感じたのはアンが自分の魔力量を伸ばす方法を発見したからだと思っていた。
だが、実際は魔力制御が格段に上達したことにより、効率よく魔法を使用していただけだったのだ。
そのことに思い至ったのはライヤに敗北した後、ようやく落ち着いてなぜ負けたのかを考えられた時。
既にライヤと戦ってから2週間が経った頃であった。
「(そうか。今はあたしが経験した、アン姉さまに負ける段階なんだ)」
最初からライヤが相手をしていればと思わないこともない。
しかし、ライヤとしては折角だからイリーナに自分の過去を振り返る機会を与えようという意図があった。
結果として、それは成功している。
「うあああぁ!!」
突貫してくるキリトに目をやり、一呼吸。
ガガッ!
今まで避けていた炎の槍を正面から土壁で受け止める。
「ぐっ……!」
作用反作用というものが存在するが、全力で走っているところでいきなり土壁にぶつかればどうなるか。
そりゃ痛いなんてものじゃない。
槍を取り落としたキリトの目の前に剣の切っ先が向けられる。
「素質は認めるわ。だけど、まだスタートラインにすら立てていないわね。そこの先生から学ぶことは多いと思うわ」
そう言って剣を納めるイリーナ。
「これで満足?」
「あぁ、強くなってるな、イリーナ」
「まだまだよ。今それを実感したわ」
イリーナが去った後の練習場に、激突による衝撃で苦しんでいるキリトとそれを介抱するミクが残された。
「わかったわ」
「はい」
やけに聞き分けの良い2人だが、イリーナはともかくキリトからは「どうせ止められないけどな」という意味合いも感じられる。
「大抵の怪我はヨルがいるから何とかなる。その部分は安心していい」
「私の立場からすると、止めないといけないんですけど? というか、ライヤ先生もそうですよね?」
「知らんな」
「はぁ……」
「もういいでしょう? 早く始めましょう」
「いいだろう。キリトもいいな?」
「はい」
「じゃあ、始めろ」
「ファイアランス!」
開幕、キリトが炎で形作られた槍を手にする。
柄の部分は自らが得物としている槍のものだが、所謂槍部分に炎の外形が増築されているようなものだ。
「土よ」
対してイリーナは普段通りの片手剣を手に持ち、静かに土魔法を使っている。
「はああぁ!!」
正面からぶつかっていくキリトをするすると移動しながらいなしていくイリーナ。
「ライヤ先生はイリーナさんが勝つと思ってるんですよね」
「まぁ、そうだな」
「キリト君もかなり自信があるようですけど、その辺りはどう思います?」
「……ヨルはキリトの名前を諸国連合で聞いたことがあるのか?」
「? いえ、ないと思いますけど……」
「なら、そういうことだろ」
「?」
つまるところ、王国よりも小さな諸国連合で国レベルで特別視されるような存在ではないという事だ。
言い方は悪いが、簡単に国外に出されていることからもそれは推測できる。
国を一身に背負うほどの才能であれば、国外に出さないように最大限の努力をするだろう。
比較的やりたい放題しているアンが許されているのは王女であるというだけでなく、1人でも国を動かす力があるからだ。
「それこそ、アンさんと戦うとなれば勝敗はわかると思いますけど……」
「……なんか、イリーナに関して誤解があるみたいだけどな」
「避けてばかりしていないで、戦え!」
「あたしが避けられない攻撃をすればいいだけだろう。甘えるな」
「イリーナもかなり強いぞ?」
正直言って、イリーナは少し失望していた。
ライヤのことは人格はともかく、実力は承知している。
そのライヤが連れてきたのだからこの下級生もそれなりに歯ごたえのある相手だと踏んでいたのだが、全く口ほどにもない。
魔力量に物を言わせて大振りの攻撃をしてくるだけ。
下級生なんてそんなものだろうと言われればそれまでなのだが、それでも期待していた分、落胆は隠せない。
隠す気もない。
「……ふん」
チラリとライヤの方を見るが、何やら新任の諸国連合から来た先生と話している様子。
これ以上長引かせる意味もないし、終わらせるかと攻勢に出ようとした瞬間。
目の前の少年から発せられる魔力量が格段に多くなった。
「俺が勝たないと……。この世界に来た意味がない!」
何やらよくわからないことを叫んでいるが、その魔力量には目を見張るものがある。
もしかすると、アンにも匹敵するかもしれない。
「まぁ、素質はあるのかしらね」
その姿が少し前の自分と重なる。
魔力量を絶対視し、とにかく強い魔法を使っていればいいだろうと考えていた。
その考えはライヤによって粉々に打ち砕かれるわけだが。
「(このまま成長してたらと思うとゾッとするわね……)」
元々が勝ち気な性格のイリーナ。
アンにも腕試しがてら何度も手合わせを申し込んでいた。
負け続けていたが、それを魔力量のせいだと勘違いして当てのない努力を続けていたのだ。
差が開いていく様に感じたのはアンが自分の魔力量を伸ばす方法を発見したからだと思っていた。
だが、実際は魔力制御が格段に上達したことにより、効率よく魔法を使用していただけだったのだ。
そのことに思い至ったのはライヤに敗北した後、ようやく落ち着いてなぜ負けたのかを考えられた時。
既にライヤと戦ってから2週間が経った頃であった。
「(そうか。今はあたしが経験した、アン姉さまに負ける段階なんだ)」
最初からライヤが相手をしていればと思わないこともない。
しかし、ライヤとしては折角だからイリーナに自分の過去を振り返る機会を与えようという意図があった。
結果として、それは成功している。
「うあああぁ!!」
突貫してくるキリトに目をやり、一呼吸。
ガガッ!
今まで避けていた炎の槍を正面から土壁で受け止める。
「ぐっ……!」
作用反作用というものが存在するが、全力で走っているところでいきなり土壁にぶつかればどうなるか。
そりゃ痛いなんてものじゃない。
槍を取り落としたキリトの目の前に剣の切っ先が向けられる。
「素質は認めるわ。だけど、まだスタートラインにすら立てていないわね。そこの先生から学ぶことは多いと思うわ」
そう言って剣を納めるイリーナ。
「これで満足?」
「あぁ、強くなってるな、イリーナ」
「まだまだよ。今それを実感したわ」
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