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もふもふは悩む
しおりを挟む「入れ」
「失礼致します。ご報告に参りました」
「いつもの話し方でいい。で?」
「まぁ、待て。そんなに急かすな」
ドサッとソファに腰掛け、部屋の主の方に顔を向ける。宰相アデルがため息混じりに答える。少し服を寛げ、先程まで一緒に居た人物の事を考える。第一印象はこんなにも美しい者がいるのかと衝撃を受けた。柄にもなく間抜けな顔を晒してしまう程に。わざと遠回りをして会話を誘い、吟味しようと思ったが、全く非の打ち所がなかった。疲れているだろうに笑顔を絶やさず、文句一つ言わずに歩いていた。王族であれば我儘な者も多いのだ。嫌味のひとつでも出てくると思ったのだがな…
「結論から言うと、部屋に案内するまでの態度は申し分ないな。お前の命令通りに護衛にユーリをつけ部屋に置いてきた。どんな反応をするか楽しみだな。ほんとにお前も人が悪い」
「お前だって人の事は言えないだろうアデル。わざと遠回りをして部屋に案内をして…」
「そろそろ行かないとな。いつまでも待たせてる訳にはいかないからな」
重い腰を上げドアに向かい歩く。心無しかいつもより足取りが重い。
「しっかりな」
ドアが閉まる直前に聞こえた声が更に追い打ちをかけてくる。早く正妃を迎えろと家臣にせっつかれたが、結婚なんて全く興味がなかった。いや興味がない振りをしていただけか…。お世辞にも良いとは言えない姿。見ただけでも怯えられる事もある。
他国から呼ばれた夜会で食べないで!と泣かれた時には殺意が沸いた。お前みたいな奴誰が食べるか!いや、誰の事も食べたりはしないが…。そんな夜会で聞いたバルロのレイ皇子の話。産まれたと同時に死産とされる事が多い獣姿の赤子。たとえ殺されなくても、生後間もなく捨てられるか、家畜以下の扱いを受ける。あまりに酷い扱いをしている国には攻め込み保護をしている。だいたいその様な思考をしている国は王族や貴族が腐りきっている。処分したところで感謝されども恨まれる事はないだろう。中にはまともな貴族も存在する。ちゃんとした者に任せれば何事も上手く運ぶものだ。王は作らず、貴族だけで政権を維持する。そんな風に小国家をいくつか建て直したら不名誉な噂が流れるようになった。別に気にはしていない。同士を救ったまでだ。
レイ皇子。赤子が、産まれると登録する制度を作った人物。妊娠が発覚したら医師の証明書と共に城に登城し妊婦登録する。定期検診にかかる費用は補助券を発行し、出産後には母親に祝い金を出す。どうしても赤子を育てられない時は、国が運営する孤児院に預け、その際、祝い金は孤児院に出す。不正を働く輩もいると思うが、産まれた赤子には定期検診を受けさせる義務をつけ、守らない場合は処罰する。不幸な思いをする赤子は自然と減少していく。まだ、改善点がある制度だが、素直に素晴らしいと思った。そしてレイ皇子に会ってみたいと思った。
レイ皇子の容姿も聞いている評判もどちらも素晴らしい。ただ上っ面の評判が良いだけかもしれないと色々と試すような事をした。悪いとは思っている…。が、今俺の目の前の光景はどういう事なのか説明して欲しい。
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