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第24話 クエスト(1)
しおりを挟む今回のクエストは護衛任務だった。
シュガーという名の商人を、目的地にまで無事送り届けることが仕事だ。
僕たちの今いる街は、ユトリンヒトールという街だ。
そしてここから、北へいくとデスジャンク火山がある。
デスジャンク火山を超えると、リリンディールという街まで近道なのだ。
だが、デスジャンク火山はS級に指定される超危険地帯。
そこで、僕たちの出番というわけだ。
「今回は、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
僕たちは依頼主のシュガーさんと握手を交わす。
シュガーさんはメガネをかけた、背の低い青年だった。
「あなたがリーダーの閃光のノエルさんですね! お噂はかねがね。期待していますからね!」
「あはは…………」
そんなに期待されてもなぁ……。
僕にできることなんて、荷物持ちくらいなものだ。
どうやら、シュガーさんは最近街で流れている、僕に関する噂をききつけて、僕らに依頼してくれたみたいだ。
クエストというのは、こちらから冒険者ギルドに仕事を探しにいくフリーの依頼もあれば、今回のように、冒険者パーティーを指名して依頼する指名依頼もある。
最近、街でよく閃光のノエルの名前をきくようになった。
それもこれも、あの伝説の剣なんか抜いたせいだ……。
僕は目立ちたくはないのに……やれやれ……。
このままじゃ、ますます引退から遠ざかっているような気がする。
「じゃあ、とりあえず行きましょうか」
「そうですね」
◆
【シュガー視点】
僕の名前はシュガー・ボム。
しがない商人だ。
僕は今回、どうしても用事でユトリンヒトールからリリンディールまで、2日でいかなければならなかった。
だが、そのためにはデスジャンク火山を超える必要がある。
そこで僕は【霧雨の森羅】に護衛任務を依頼した。
なぜこのパーティーに依頼したのか、それは閃光のノエルの存在だ。
閃光のノエルといえば、今この街で評判を上げている冒険者のうちのひとりだ。
彼については、いろんな噂を聞いた。
S級オークと戦って、一人だけ無傷で戻ってきたらしい。
そして冒険者に絡まれたときには、無詠唱で魔法を放ち、一瞬のうちに退けたのだとか。
さらにはギルド内で最年少でレベル8の冒険者になったらしい。
SSS級モンスターであるフェンリルをいとも簡単に飼いならし、遭難した冒険者パーティーを救ったともきく。
倒れていた冒険者パーティーを回復魔法で蘇生したというのもきいた。
あとは伝説の剣を抜いたりだとか、悪漢に襲われたさいに無傷で跳ね返しただとか……。
その伝説は枚挙にいとまがない。
この人になら、安心して任せられる、僕はそう思った。
僕たちはデスジャンク火山の中に入り、ダンジョンを進んでいた。
僕は、そこで信じられない光景を目の当たりにした。
なんと、ノエルさんに向かってくる敵が、一瞬で消えていくのだ。
敵はノエルさんに攻撃するのだが、その攻撃はなにかバリアのようなものに弾かれている。
そして、ノエルさんに触れたモンスターは、すぐさま炎に変わるのだ。
ノエルさんがなにか魔法を唱えているようすはない。
ノエルさんはただその場に立っているだけだ。
おそらく、あらかじめそういう魔法をかけているのだろう。
さすがだ……。
自分ではまったく動くことなく、モンスターたちを退けていく。
これが閃光のノエルか……。
「ノエルさん……さすがです……!」
「え……? なにが……?」
ノエルさんはもはやなにがすごいのかも理解していないようだ。
それだけ、このくらいのことはノエルさんにとってはあたり前のことだということか……!
「ノエルさん、さすがお強いのですね! さっきから、その伝説の剣を一切使わずに……!」
「ああ、これですか……。僕が戦うと、逆に足手まといになるので……」
「なるほど、それほど仲間を信用されているということですね! ノエルさんの剣は最終兵器ですか!」
「いや……違うけど……」
このくらいの敵なら、わざわざノエルさんが剣を抜いて戦うまでもないということか。
ノエルさん以外のメンバーは、必死に戦っている。
その中で、ひとり冷静に立っていられるノエルさんは本気をだしたらいったいどれだけ強いのだろうか……。
ほんとうに、護衛としては頼もしい。
「いや、僕は本当になんにもしてないんですよ……? 僕、さっきからマッピングしてるだけですし……」
「マッピングしながら戦えるなんてすごいです! さっきから敵がノエルさんを避けていく……! それほどお強いのですね!」
「いや……違うけど……。これ、マリアとエリーが僕にバリア張ってくれてるだけなんです」
「ご自分の手柄を味方の手柄にしようなんて……心持も謙虚なんですね……! 素晴らしい……! さすがです……!」
「だから違うんですって……!」
ノエルさんは性格も素晴らしいとはきいていたが、本当に謙虚で尊敬できる人物だ。
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