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第25話 クエスト(2)
しおりを挟むさっきから、謎にシュガーさんが僕のことを褒めてくる……。
いや、僕なにもしてないんだけどな……。
剣を使わないのは、しょせん僕が剣を抜いたって、どうせ当たらないし、邪魔になるからなだけだ。
僕はさっきから、みんなの後ろをついていきながら、マッピングをしているだけ。
僕に向かってくるモンスターは、マリアが張ってくれているバリアと、エリーが張ってくれている焔魔法による迎撃機能で倒れていっているだけだ。
それを説明してるんだけど……なんでだろう、この人も話をきかない人だ。
なんでなんだろう……先入観って怖いな……。
すっかり僕がすごい人物だと信じていて、こっちの言葉はきこえないみたいだ。
「ノエルさん……! さすがはこのパーティーのリーダーですね!」
「ああ、もうそれでいいです……」
僕は釈明をあきらめた。
どうせシュガーさんともこの護衛任務の間だけの付き合いだ。
別に誤解を解く必要もないか……。
あ、でも、またシュガーさんにいらぬ噂を広めたりされたら困るな……。
まあ噂は今更気にしてもしかたないか……。
うーん、どうやったらここから引退できるんだろうか……。
なんて考えながら歩いていると、シュガーさんが僕に質問をしてきた。
「そういえば、ノエルさんは何の職なんですか……?」
「え……? 僕ですか?」
「ええ、ロランさんは大盾持ちなので、【重戦士】ですよね? エリーさんは【魔術師】マリアさんは【聖女】それは見ればわかるんですけど……。ノエルさんはぱっと見ではなんの職業かわからなくて、気になって……」
この世界には、職というものがある。
これはスキルとか魔法とは別に、それぞれの冒険者に一つずつあるものだ。
たとえば、【戦士】とか【僧侶】とか【盗賊】とかがある。
それぞれどの職業になるかで、得意な戦闘スタイルとか、ステータスの伸び方だとか、使えるスキルが違ってくる。
職業は神殿にいけば転職や上級職へのパワーアップもできる。
基本的に最初の職業は、生まれつき決まるものである。
ギルドに登録してギルドカードを作れば、そのときに自分がどの職業であるのかがわかるのだ。
他の職業に転職するには、ある一定の条件をクリアする必要がある。
転職先の職業によって、その条件はさまざまだ。
レアな職業に後天的に転職することはほぼ不可能に近い。
それほど条件が難しいのだ。
なので、生まれつきのレア職業は、天才などと持ち上げられたりする。
だけどまあ、いくら職業がよくてもそれだけで強くなれるわけではないんだけどね。
そこは個人差がけっこうある。
「僕は……ただの【荷物持ち】ですよ……」
「え……? そ、そうなんですか……?」
荷物持ちは、覚えられるスキルが極端に戦闘向けじゃない。
アイテムボックスなど、チート急に便利なスキルを覚えることができるから、まあ弱くはないんだけどね。
だけど、僕の場合は荷物持ちとしての便利なスキルを覚えているわけじゃないから、ただ戦闘能力が低いだけのお荷物になっている。
「荷物持ちの職業で、それほどまで強くなれるなんて……すごいです……! ますます尊敬です……!」
「いや、だから僕は強くないんですって……」
「謙遜しなくても……」
「いや事実、僕はただの荷物持ちでしかないんですって……」
これはいくら言っても信じてもらえそうにないね……。
そのまま、僕たちは無事にデスジャンク火山を抜け、シュガーさんを送り届けることができた。
まあ、最後まで誤解は解けないままだったけどね……。
まあ、それはいいか。
引退したい……。
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