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《ユノンの復讐》
31話 そのころ勇者パーティーは【side : ギルティア】
しおりを挟むランタック村を出たあと、俺たちは勇者パーティーらしくダンジョンをかたっぱしからクリアしていった。
こうやって国に貢献していれば、いずれ俺の名があのクソ田舎の村にも届くだろう。
そうすれば、嫌でも俺を見直すことになるだろう。
ふっふっふ、そのときが楽しみだ。
◇
ダンジョンには2種類ある。
自然発生する野良ダンジョンと、魔王出現とともに現れる魔王軍ダンジョンだ。
魔王のもとに行くには、その魔王軍ダンジョンのコアをすべて破壊する必要がある。
魔王はそのコアをつかって、軍備を増強しているので、勇者である俺は魔王軍のコアを壊すのが仕事だそうだ。
そうすれば魔王軍全体の力が下がり、魔王の力も下がる。
「順調なようだな……! さすがは勇者だ!」
俺は自分で、自分を褒める。
だがやはり俺が勇者で間違いはないようだ。
俺たちはこの短期間でかなりのダンジョンをクリアしてきたからな。
俺たちはとりあえず、強いダンジョンから攻略することにしたんだ。
その方が手っ取り早く名声を広められるからな……!
ちなみに魔王軍の領地に近づくほど、強いダンジョンになっている。
だが魔王軍の領地に入るには、人間側の領地にあるダンジョンすべてをクリアしなければならないらしい。
「っち……ややこしいな。手っ取り早く魔王と直接戦いたいもんだぜ」
「そうはいかないわよ。魔王だってそう簡単にやられたくはないでしょうからね……」
「どうやら魔王は時間を稼いでいる間に、力を蓄えているらしいな」
魔王とやらは姑息な臆病者らしいな。
それに比べて、俺は実に勇者らしい男だ。
とりあえず人間の領土側にある強そうなダンジョンはほぼ壊滅させることができた。
これで魔王軍は戦力の三分の一を失ったことになり、魔王の力もかなり削れたな。
ちなみに普段魔王はダンジョンから出られないらしい。
ただコアの出力が最大になったら出れるようになるそうだ。
その前にすべてのダンジョンを破壊するのが、俺たちの仕事というわけだ。
「あとは弱めのダンジョンばかりだな……」
「でもこんなのは勇者の仕事じゃないわね」
「次はいよいよ魔界領土にも攻め入るかな……」
俺たちはそんな会話をしながら、次のダンジョンを探していた。
国にもらった金で、一流の地図師を雇っているから、広範囲にわたる詳細な地図が見れる。
ダンジョンの情報もほぼ網羅できているそうだ。
「ん……? おい、待てよ? こいつはなんだ?」
俺は地図を見ながら、あるおかしな点に気づく。
最弱とされるエリア(Fランクダンジョン)のダンジョンがまだ一つ、未クリアで残っているではないか……!
こんな序盤にクリアされそうなところを見落としていたとは……。
いや、ムリもない。
こんな雑魚ダンジョンは俺たち勇者パーティーがクリアしなくとも、そこらの冒険者が勝手にクリアしていてしかるべきものだ。
「名前は……始まりのダンジョンだと!?」
舐めた名前をしていやがる……!
なんでこんな弱すぎるダンジョンがまだクリアされていないんだよ!
世間の冒険者たちはなにをやってるんだ!
「クソ! 不甲斐ない連中だ。俺はイライラしてきたぜ! 無能はキライなんだよな」
まあちょうどいい。
魔王領に攻め入る前に、先にここを潰してしまうのもいいだろう。
まあわざわざ俺が行くまでもないようなダンジョンだが。
久しぶりにあのあたりに戻って、城の連中や村の連中に手柄を自慢したいからな。
それに、一度弱すぎる相手と戦ってみるというのもいいだろう。
「蹂躙の時間の始まりだぜ!」
「ちょっと、いくらなんでも簡単すぎなんじゃない?」
「そうだな私たちがいけば、一瞬でクリア可能だろうな」
まあそういうわけで、俺たちは『始まりのダンジョン』とやらを目指した。
舐めてかかるのは危ないとはよく言うが……。
さすがにこんなダンジョンくらいは簡単に一瞬でクリアできるに決まってる。
だって俺は勇者だから。
俺たちは……勇者パーティーだから――!
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