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5話 ダンジョンの隠し扉

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僕とリコは、手を繋いでダンジョンを進む。
ここは大昔の遺跡らしいけど……。
とにかくあちこちボロボロだ。
足を踏み外さないように、気を付けよう。

「キャッ!」

「大丈夫!?」

僕はリコをとっさに抱きしめる。
なんだか力まで強くなった気がする。
どうやらリコはコウモリに驚いたみたいだね。

「ありがとう、トン」

「いいんだよ、リコ」

僕がリコの頭を撫でると、リコはうっとりとした顔で微笑んだ。
よかった、安心してくれたみたいだね。

でも、ダンジョンは暗くて本当に危険だ。
モンスターなんかに出くわさなければいいけど……。

「あれ……? これはなんだろう?」

僕は壁の一部に、違和感があることに気づく。
なにかの人工物のようだ。

「扉……じゃないかな?」

「調べてみよう」

その扉らしきものは、コケに覆われて、もはやそれとはわからないほどに劣化していた。
でも、たしかに隠し扉のようなものがここにある。

「開けてみよう……ダメだ、開かない」

「トンの、スキルを使えば……?」

「うーん、よし、やってみよう!」

正直、こんなスキルに期待なんかしていないけど……。
ダメでもやるだけやるか!

「《万能鍵マスターキー》!」


――システムメッセージ――

トン・デモンズの《万能鍵マスターキー》のスキルレベルは現在、Lv1です。
【イニシエのダンジョンの隠し扉】はLv1以上の【伝説級レジェンドクラスダンジョン鍵】で開けられます。
よって、開錠します。

――システムメッセージ終了――


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

「開いた!」

システムメッセージ? の言ってる意味はよくわからなかったけど、とにかくここの扉は僕のスキルでも開くようだ。
どうやら、Lv1でも開けられる扉と、開けられない扉があるみたいだね。
そういえば、家の鍵は【民家の鍵Lv2】が必要とかなんとか言ってたっけ?
いろいろ試してみる必要がありそうだ。

「ここは……?」

僕たちは恐る恐る、中に入る。

「まぶしい……!」

中に入った瞬間、強烈な光に目を襲われる。
輝く黄金の宝箱が、そこにはあった。

「これは……宝物庫?」

「そうみたいだね」

きっと太古の昔に封じられて、忘れさられたのだろう。
外壁こそ経年劣化が激しかったが、宝箱はまだ手つかずのままだ。

「開けてみる?」

「うん……」

宝箱は3つあり、それぞれに内容物を解説した書簡も収められていた。
最初に出てきたのは、豪華な装飾品のようなものだった。


――――――――――――――――――――――――

●NEW!!
名前【挑み続ける者】
種別【アクセサリ】
レア【★★★★★★★☆☆☆】
効果【装備している者の会得経験値を5倍にする】

――――――――――――――――――――――――


「これは……?」

「アクセサリアイテムのようだね。それにしても、すごい効果だ」

いったい誰が、こんなレアアイテムをここに隠したんだ?
次に出てきたのは、剣だった。
こんな剣、見たことない……!


――――――――――――――――――――――――

●NEW!!
名前【龍殺しの剣】
種別【剣】
レア【★★★★★★★★★☆】
効果【あらゆる龍を切り裂く剣】

――――――――――――――――――――――――


「これ、もしかして滅茶苦茶すごいものだったりするのかな?」

リコもびっくりしている。

「そうだね……どうしよう、コレ」

「と、とりあえず、最後の一つを開けてみましょう」

「う、うん」

最後の宝箱から出てきたのは――これは、石?
キラキラ輝いて、とっても綺麗だ。


――――――――――――――――――――――――

●NEW!!
名前【生命の宝珠】
種別【アクセサリ】
レア【★★★★★★★★★★】
効果【装備した者の命を護り続ける石】

――――――――――――――――――――――――


「とっても綺麗ね……」

「これはリコ、君が着けておくといい」

「え!? いいの……? トンのスキルで手に入れたのに?」

「僕からのプレゼントだよ。これは、リコに似合うと思うから……」

「あ、ありがとう……」

リコは顔を真っ赤にして照れる。
やっぱり、リコは村で一番かわいいな……。
いや、世界で一番に違いない。
僕たちは村の外のことは知らないけど、それだけは確信できる。
そんなリコと一緒に居れて、僕は幸せだ。

「それにどうやら、このアイテムはリコのことを護ってくれるみたいだよ? もちろん、僕がそばにいるときは僕が守るけどね!」

「ありがとうトン、このアクセサリ、トンのことだと思って大事にするね!」

そんなことを言われると、僕も照れてしまう。
もう一個のアクセサリは、なんだか不気味な見た目だったから、僕が着けることにした。
剣は重たいし、物々しいから、これも僕が持つ。

「さあ、そろそろ祠を目指そうか、遅くなっちゃう」

「そうだね……」

僕たちが隠し扉の部屋から、出ると――。

そこには待ち伏せたかのように、アッケネーアがいた。
アッケネーアの取り巻きのいじめっ子たちも一緒だ。
彼らはまだ成人の歳じゃないけど、アッケネーアに呼ばれて来たんだろう。
わざわざ僕にいやがらせをするために……。

「ようトン、待ってたぜ……? 寄り道なんて、ずいぶんと余裕そうだな」

「まあね、でもまあ、君ほど暇じゃないよ」

「んだとぉおおおおお!? 殺す!!」

アッケネーアはそう言って、僕に剣を向けてきた。
剣聖の剣だ。
アッケネーアもいちおう剣聖だったっけ……。
でもそんなこと、僕には関係ない。

「僕だって、さっきこの龍殺しの剣を手に入れたんだ!」

――ブン!

僕は龍殺しの剣を振って、アッケネーアの剣聖の剣に対抗する。

――キン!

剣と剣がぶつかり――!

アッケネーアの剣聖の剣が、折れた。

「はぁ!?」

アッケネーアは目を丸くして、折れた自分の剣を見つめる。

「お、おおお俺の剣聖の剣がぁああああ!!」

「あーあ……」

「お、おかしいだるぉおお!? 剣聖の剣だぞ!? なんでこんなに簡単に折れるんだ! なにかずるをしたに違いない!」

「いや、たぶん僕の剣のほうが性能がいいだけだと思うけど……」

龍殺しの剣はレア度9って書いてあったしね……。
いくら剣聖の剣だろうと、龍殺しの剣のほうが強ければ、簡単に折れてしまう。

「くっそおおおおおお! 俺の剣が!」

「もういいかな? 先に行くね?」

アッケネーアはよほど悔しかったのか、その場に座り込んで、いつまでも泣いていた。
僕とリコはそれを無視して、森の奥へと歩を進める。
もう追ってこないといいけど――。
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