始龍の賢者〜生まれた直後に森に捨てられたけど、最強種のドラゴンに拾われ溺愛されて最強になった~

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中

文字の大きさ
8 / 69

第8話 もうツッコミが追いつきません……

しおりを挟む

「奥って……それって、大魔境の中に住んでいらっしゃるってことですか……!?!?」

 ライゼが尋ねてきたので俺は答える。

「うんまあ、でも俺は赤ん坊のころからずっとこの中に住んでるから、外で大魔境とかって呼ばれてるのは知らないな」
「えぇ……ずっと……!? それにしても、大魔境を知らないなんて……」
「一度も外に出たことないしな」
「えぇ……!??!?! ずっと大魔境の中にいるんですか!?!?!」
「うん」

 なにもそこまで驚かなくても、と思うくらいに、彼女らは驚いた。
 そこまでおかしなことだろうか?
 俺にとってはこれが当たり前だから、わからない。

「人と会うのもこれが初めてだ」
「で、でも……それならレルギア殿の非常識っぷりも納得だな……」
「いやぁ……そんなに非常識なのか、俺は」
「それはもう……さっきから驚きっぱなしだ。こっちは……」

 ティナにあきれられてしまう。

「一度も、森の外に出ようとは思わなかったのか?」
「まあな。外に出るのは危険だってアイリが言ってたからな」
「それって外に出るとレルギア殿が危ないっていうより、レルギア殿のせいで外が危険っていう意味なんじゃ……」
「そうなのか……? まあよくわからんけど、アイリが言うからには間違いないんだ」

 またティナにあきれられてしまったようだ。
 どうも俺たちの常識にはかなりの齟齬があるらしい。
 外の世界がどんなふうなのか、俺にはまったく予想もつかない。
 アイリという人物が気になったのか、ライゼがきいてくる。

「アイリ……さんですか……?」
「ああ、俺の母……っていうか姉っていうか、嫁っていうか……? まあ、そんな感じのやつだ」
「そうなんですか……。その方は今どちらに……?」

 俺は、答えなかった。



◆◆◆



 そこからしばらくまた歩いて、ようやく俺ん家の近所にまで到達する。
 俺一人なら一瞬で戻れたけど、彼らの歩幅に合わせるとこんなもんだ。
 大魔境とやらに入るときに、またオブライエンとやらが異議を唱えたが、ライゼによって跳ねのけられた。
 ライゼは困惑しつつも、俺のことを全面的に信頼してくれているようだが、オブライエンはまだ俺を怪しんでいる様子だ。
 まあ、姫を守るために過剰に警戒するのは、仕方のないことかもな。
 ティナはティナでかなり俺にフランクに接してくれている。

「ちょっと家の前が散らかってるから、先に掃除するわ。ちょっと待っててくれ」

 家に案内する前に、近くの木の下で彼らを待たせる。

「家の前が散らかっているって、落ち葉とかでしょうか……?」

 ライゼとティナが俺の家の前を確認しようと、身を乗り出しながらきいてくる。
 俺の家の前を占拠していたのは、大量の巨大魔物たちの死体だった。

「朝からこいつら襲ってきてさ……こいつら馬鹿だから話が通じなくて、倒すしかねえんだ。まったくいっつもめんどくさくいんだよなぁ……」
「あ、あの……レルギア様……」
「ん? なんだライゼ。幽霊でも見たような顔して」
「この魔物たちって、最強クラスの危険種族たちなんですけど……も、もしかしてこれらをお一人で……?」
「そうなのか? こいつらってこの辺りじゃ雑魚もいいとこだぞ? 知能も低いし……」

 実際、ここに倒れている魔物たちは俺にとってはワンパンだ。
 ただ数が多いし毎日のように絡んでくるし、掃除は面倒だしで、厄介なことに変わりはない。

「もうなにを見ても驚かないつもりでいましたが……これは……全部ギルドだとSSSランクの危険度に指定されている魔物ですよ……?」
「あー、そうなんだ。じゃあ結構外の世界はここよりも平和なんだな」
「そりゃあもう……大魔境と呼ばれるくらいですからね……」

 さっきから自分の常識のなさを痛感させられる。
 それにしてもこんな雑魚でさえそんなに恐れられているなんて、外の世界はいったいどんな感じなんだ?

「じゃあ、さっそくちゃっちゃと掃除してしまうか」

 俺は家の中から掃除道具を持ってきて、それで魔物の死体を隅の方に退かしはじめた。
 とりあえずはこれでいいだろう。

「あ、あのーレルギア様……そのお手に持っていらっしゃるものは……?」

 またしてもライゼが俺のことを怪訝な顔で見る。

「これ? 掃除に使ってる道具だけど、これがどうかしたか?」

 俺は手に持っている一本の大剣を宙に掲げた。
 ちょうど形状が魔物を掃除するのに便利で、大きさもいい感じだから、いつも掃除に使っている。
 まあ俺が戦うのに剣とか必要ないしな。素手で十分な場合がほとんどだ。

「あの……私の見間違いでなければその剣、聖剣イストワールにそっくりなのだが……はは……まさかな……」
「ああ、たしかこれそんな名前だったな」
「まさか……本物……!? なんだな……っく、もうなにも驚かないぞ……」

 またティナにあきれられてしまった。
 うちの倉庫にはアイリが昔集めてたいろんな武器や宝具が眠っているからな。
 その中でもこの聖剣イストワールは価値が低いとかって、アイリが掃除道具に使い始めたんだっけ。
 俺が魔物の死体をあらかた片付け終えたころ、家の裏手からロゼの声がきこえてきた。

「ワンワン! くぅーん!」
「おっと、ロゼにエサあげるのまだだった。ちょうどいい。こいつら食わせとくか」

 いつも魔物の死体の後処理はロゼに食わせるか、燃やしてしまうかだ。
 放っておいたら、また死体の臭いに釣られてアホで好戦的な魔物が寄ってきてしまうからな。

「ワンちゃんを飼われているんですね」

 ライゼがそう言って俺に微笑む。
 ようやく俺にも非常識じゃない一面があると知って、安心したようすだ。

「ああ、ロゼっていうんだ」
「私も、お城で犬を飼っています」
「そっか、ようやく俺たちにも共通点があったな! 俺もうれしいぜ」
「そうですね! レルギア様もやはり普段は普通の……」

 そこまで言って、ライゼは口をあんぐり開けたまま固まってしまった。
 会話をきいていたのか、家の裏手からロゼが出てきたからだ。
 でも、ロゼはただの可愛い犬っころなのに、なんでここまで驚くんだ……?

「あ、あのー……レルギア様、こ、このフェンリル種は……?」
「フェンリル種? ロゼはただの犬だけど。なあロゼ?」

 俺はロゼに話しかける。
 ロゼを助けたときは知らなかったが、ロゼは普通に俺と会話することができる。
 それだけ知能の高い犬ってことだな。

「ああ、我は犬だ」

 ロゼが人語を話したことで、ライゼたちはさらに驚いていた。
 でも知能の高い動物は、普通にしゃべれると思うけどなぁ。
 少なくとも、このあたりの動物はみんなそうだ。

「犬は普通しゃべりませんって……」
「でも、フェンリルってのは最強の種族なんだろ? 本でそう読んだけど」
「そうですよ! それに、こんなふうに人に懐くなんて……」
「でもこいつめっちゃ雑魚だぞ? 俺にワンパンで負けるし」
「もうどこから突っ込んでいいのか……」

 どうやらロゼは犬ではなくてフェンリルっていう種族だったらしい。
 今日は本当に、俺の常識がまったく通用しない日だなぁ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

処理中です...