くすのき君は妖怪が見えるけどそれはともかく趣味の人である。

くずもち

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第62話面白い珍事は上から声をかけてくる

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「ふーむ……」

 神木 杏樹はもらったストラップを眺めて、二つあるそれになんとも言えない気持ちを抱えていた。

「……二人目か」

 いや、力になってくれるのは嬉しい。そこは間違いない。

 でも、こう……家に強力な妖怪が沢山住みついているという圧倒的な現実が……若干重たいだけで。

 これは中々受け止めるのには時間がかかりそうだなと思う。

 それが例え有益だとわかっていたとしても……割り切れないものはあるらしい。

「……ねぇ君、よかったの? 山に返らなくて?」

 ひとまずなぜか未だに帰る気配がない鬼火に聞いてみる。

 すると揺れるカボチャランプがぽっと灯り、鬼火は楽しげに答えた。

「別に私は酸素があればどこでもほどほどに燃えられますので」

「ハードル低すぎない? ……実質それってどこでもいいってことでしょ?」

「そういうことです。ならば顔見知りの人間の側にいた方が好都合というものでしょう? 楠様の知人であるのなら申し分ありません」

「バイクはいいの?」

「ご存じだと思いますが、大破しましたので。まぁ手に入るあてが出来るまではどうしようもありません」

「そうでした……」

 ということらしい。

 流れでこうなったとはいえ、なんともそこは妖怪らしいフワッとした理由だった。

「……人間の町は、意外と燃えちゃまずいところが沢山あるから、そこには気を付けてほしいかな?」

「なんと。難しい物です」

「火事は洒落にならないからね? ついてくるのは……まぁ、構わないけど。お願いだから私の事情にも合わせてよ? それが最低条件」

「もちろん。お邪魔は致しませんとも」

 鬼火は幸い、人間に理解を示せる妖怪だった。

 おそらくバイカーとしての経験が、彼に人間の価値観を生み出したのかもしれない。

 思わぬ副産物だなと杏樹は内心で感心した。

 力も貸してくれるようだし、本人もそのつもりでストラップをやってくれているのはわかるので杏樹にもメリットは十分にある。

 ただ、まぁ力を貸してもらうような珍事はさすがにもうしばらくは起きないよなとこの時、杏樹は高をくくっていた。



 しかしながら楠君の家からの帰り道、杏樹はいきなり声をかけられた。

「ちょっといーいー?」

「え?」

 方向は上。

 暗闇の中に何かが動いていた。

 上からの時点で普通ではないわけで、杏樹は声に視線を向けようと思ったのだが―――。

「はぁい♪」

「どうわああああ!」

 上から落っこちて来たらしい誰かさんが巨大な蝙蝠だったものだからとんでもなくビビった。

 だって近かったんだもの。

 カバンからハリセンを引き抜くまで0・01秒。

 日々の努力は綺麗に決まった会心の居合抜きで証明された。

「ぎゃあああ!!」

「しまっ……!」

 落ちて来た巨大蝙蝠はバン! と景気の良い音に弾き出されて吹っ飛ぶ。

 切り揉みして飛んで行く巨大蝙蝠の飛びっぷりに杏樹の顔は青ざめた。
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