1 / 77
第1話いつもとちょっと違う町
しおりを挟む
駅を出た時、空の色は青色が濃くなり夜の匂いがして、私は顔をしかめた。
「もう少し早く到着できるはずだったのに……」
せめて明るいうちに到着したかったのは、夜が嫌いだからだ。
暗闇が危険だとか、本能的に怖いとかそう言う理由もあるにはあるけれど―――それだけじゃない。
もっと不可思議で危険なモノが、夜の闇の中にいる事を私は知っているからだ。
私、神木 杏樹には人ではないモノが見えている。
そして、今だってそうだった。
「うっ……」
道の真ん中に大きな一つ目の生き物が飛んでいた。
だというのに周囲の人は、なんのリアクションも示さずにそいつの前を通り過ぎてゆく。
だから私は細心の注意を払って、素知らぬ顔でそいつの前を通り過ぎた。
見えているのに見えないふりをする、これが私の日常だった。
ただ私には妖怪がはっきり見え過ぎてしまって、どうしても無視できない時がある。
そう言う違和感は隠しても周囲にわかってしまって、周りの人は気味悪そうに私を見る。
何度か失敗して引っ越しを繰り返したが、どこの町にもあいつらはいて、見える私に興味を示した。
「もっと気を付けなくっちゃな……」
私はボソリと口の中で呟いた。
前の時は特にさんざんだった。
挙句また引っ越すことになってしまったが、新しい土地ならしばらくはマシな生活を送れるだろう。
ただ、この静かな時間もそんなに長くは続かないだろうなと私には予感があった。
この町にも妖怪はいる。そしてまたいつもと同じように私を想い悩ませるだろうと。
そして、こうやって夜を歩けば、妖怪の世界がよく見えた。
「―――」
静かなままでいてくれればいいのに、いつもの通りトラブルは思っていたよりもずっと早くやって来る。
オオオオオオオ……。
引っ越し先のアパートを目指す途中、河川敷に差しかかると私は大きな川から透明の何かがゆっくりと浮かび上がってくるのを目撃した。
「……!」
それは巨大な龍のように見えた。
龍は鱗の生えた蛇のように長い胴体をうねらせて、川から空へと浮かび上がってゆく。
低い唸り声からは龍の怒りが伝わってきて、ブワッと私の全身に鳥肌が立ち、あまりの気配の強さに眩暈がした。
「これは早々ついてないかな……」
アレが妖怪の類で、しかもとても力のある存在なのは間違いない。
そして川にまつわる何かでもある。
私はそういえば、テレビで河川に薬品が流れたというニュースを聞いたことを思い出していた。
「……!」
空に黒い雲が突如として現れ、稲光が空を走ったのはあの龍のせいだろう。
あんな存在が暴れだしたら、どうなるかわからない。
理性はすぐにでも逃げ出せと囁くが、私はどうにかしたいと思った。
これは自分の悪癖だと思う。
だけど何か起きるとわかっているのに見て見ぬふりをするのが、私はとても気持ちが悪かった。
キャラキャラキャラキャラ―――。
「え? 何?」
そんな時、妙な音が聞こえて来て私は振り返ったのだが―――その一瞬で焦りから生まれた心の靄など真っ白になってしまった。
「……は?」
私は目をこする。
目の錯覚じゃなければ戦車が見える。
迷彩柄の装甲と、キャタピラと大砲は恐ろしいほど重量感抜群だった。
「おうおうあらぶってるなぁ! ちょっと頭を冷やせ!」
「ちょっと! まずは穏便に!」
「断る! 派手にいくぞ!」
「いかないで! なんで性格が変わるんです!?」
戦車から声が聞こえ、戦車の砲塔が旋回し始めた。
私の額からは一筋汗が流れ、頬が自分でもわかるほどに引きつってゆく。
まさかと体を強張らせたその瞬間、ズドンと大砲が火を噴いて、私は轟音に思わず耳を押さえてうずくまる。
「……!!」
発射された光の玉はまっすぐ龍に飛んで……あっ、見事頭に命中。
ヌォオオオオオ……。
白目をむいた龍は墜落して、川の中に沈んで消えてしまった。
私が唖然としていると、戦車の中から人影が飛び出して、騒いでいるのが見えた。
「よしよし、命中だ! やったな!」
「よしじゃないですって! もうちょっと穏便に!」
「はー? 戦車で穏便ってどうやれというのだよ?」
「それは……まぁ、そうですけど」
キャラキャラキャラキャラ―――。
キャタピラの音は来た時の同じように遠ざかって、嘘のように夜の闇の中に消えていった。
「…………」
静けさがようやく戻ってきた。
私は驚きのあまり止まっていた呼吸の仕方を思い出す。
そして戦車が消えていった方を本当にぼんやりと眺めて呟いた。
「あれ? ……いつもとなんか違う?」
っていうかアレはなんだ?
疑問しか残らない夜は、ありえないくらい鮮烈に心に刻まれたけれど、私には全く理解できなかった。
「もう少し早く到着できるはずだったのに……」
せめて明るいうちに到着したかったのは、夜が嫌いだからだ。
暗闇が危険だとか、本能的に怖いとかそう言う理由もあるにはあるけれど―――それだけじゃない。
もっと不可思議で危険なモノが、夜の闇の中にいる事を私は知っているからだ。
私、神木 杏樹には人ではないモノが見えている。
そして、今だってそうだった。
「うっ……」
道の真ん中に大きな一つ目の生き物が飛んでいた。
だというのに周囲の人は、なんのリアクションも示さずにそいつの前を通り過ぎてゆく。
だから私は細心の注意を払って、素知らぬ顔でそいつの前を通り過ぎた。
見えているのに見えないふりをする、これが私の日常だった。
ただ私には妖怪がはっきり見え過ぎてしまって、どうしても無視できない時がある。
そう言う違和感は隠しても周囲にわかってしまって、周りの人は気味悪そうに私を見る。
何度か失敗して引っ越しを繰り返したが、どこの町にもあいつらはいて、見える私に興味を示した。
「もっと気を付けなくっちゃな……」
私はボソリと口の中で呟いた。
前の時は特にさんざんだった。
挙句また引っ越すことになってしまったが、新しい土地ならしばらくはマシな生活を送れるだろう。
ただ、この静かな時間もそんなに長くは続かないだろうなと私には予感があった。
この町にも妖怪はいる。そしてまたいつもと同じように私を想い悩ませるだろうと。
そして、こうやって夜を歩けば、妖怪の世界がよく見えた。
「―――」
静かなままでいてくれればいいのに、いつもの通りトラブルは思っていたよりもずっと早くやって来る。
オオオオオオオ……。
引っ越し先のアパートを目指す途中、河川敷に差しかかると私は大きな川から透明の何かがゆっくりと浮かび上がってくるのを目撃した。
「……!」
それは巨大な龍のように見えた。
龍は鱗の生えた蛇のように長い胴体をうねらせて、川から空へと浮かび上がってゆく。
低い唸り声からは龍の怒りが伝わってきて、ブワッと私の全身に鳥肌が立ち、あまりの気配の強さに眩暈がした。
「これは早々ついてないかな……」
アレが妖怪の類で、しかもとても力のある存在なのは間違いない。
そして川にまつわる何かでもある。
私はそういえば、テレビで河川に薬品が流れたというニュースを聞いたことを思い出していた。
「……!」
空に黒い雲が突如として現れ、稲光が空を走ったのはあの龍のせいだろう。
あんな存在が暴れだしたら、どうなるかわからない。
理性はすぐにでも逃げ出せと囁くが、私はどうにかしたいと思った。
これは自分の悪癖だと思う。
だけど何か起きるとわかっているのに見て見ぬふりをするのが、私はとても気持ちが悪かった。
キャラキャラキャラキャラ―――。
「え? 何?」
そんな時、妙な音が聞こえて来て私は振り返ったのだが―――その一瞬で焦りから生まれた心の靄など真っ白になってしまった。
「……は?」
私は目をこする。
目の錯覚じゃなければ戦車が見える。
迷彩柄の装甲と、キャタピラと大砲は恐ろしいほど重量感抜群だった。
「おうおうあらぶってるなぁ! ちょっと頭を冷やせ!」
「ちょっと! まずは穏便に!」
「断る! 派手にいくぞ!」
「いかないで! なんで性格が変わるんです!?」
戦車から声が聞こえ、戦車の砲塔が旋回し始めた。
私の額からは一筋汗が流れ、頬が自分でもわかるほどに引きつってゆく。
まさかと体を強張らせたその瞬間、ズドンと大砲が火を噴いて、私は轟音に思わず耳を押さえてうずくまる。
「……!!」
発射された光の玉はまっすぐ龍に飛んで……あっ、見事頭に命中。
ヌォオオオオオ……。
白目をむいた龍は墜落して、川の中に沈んで消えてしまった。
私が唖然としていると、戦車の中から人影が飛び出して、騒いでいるのが見えた。
「よしよし、命中だ! やったな!」
「よしじゃないですって! もうちょっと穏便に!」
「はー? 戦車で穏便ってどうやれというのだよ?」
「それは……まぁ、そうですけど」
キャラキャラキャラキャラ―――。
キャタピラの音は来た時の同じように遠ざかって、嘘のように夜の闇の中に消えていった。
「…………」
静けさがようやく戻ってきた。
私は驚きのあまり止まっていた呼吸の仕方を思い出す。
そして戦車が消えていった方を本当にぼんやりと眺めて呟いた。
「あれ? ……いつもとなんか違う?」
っていうかアレはなんだ?
疑問しか残らない夜は、ありえないくらい鮮烈に心に刻まれたけれど、私には全く理解できなかった。
1
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる