ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第143話さぁみんなもやってみて?

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「私が悪かったわ。……本当にごめんなさい」

 月読 カノンは前回の一件を反省し、頭を下げて誠心誠意謝るところから始めることにした。

 前回のダンジョンアタックはあまりにも反省が多すぎた。

 そして中でも最も反省すべき点は自分にあると、カノンは分かっていたからだ。

「前回今一うまくいかなかったのは私のせいよ、私はあなた達に隠し事をしていたの」

「隠し事? 一体なんなんだそれは?」

 同じパーティのハバキリ君が困惑交じりに訊ねるので、カノンは秘密を開示した。

「急に強くなった理由よ。確証はなかったけど……もう言ってしまうわ。私はある場所でこの子を手に入れたの。この子の力は本物よ」

 そう言うとカノンはカプセルを取り出して、白玉を呼び出す。

 空中に突如として現れた兎の精霊に、パーティメンバーは騒然となった。

「な、なにこれ? かわいいけど……なんか雰囲気あるわね」

 天音さんは白玉を気に入ってくれたようだが魔法使いだけあって魔力の感覚には敏感らしい。

 彼女は肌でこの神々しい雰囲気を感じ取っているみたいだった。

「光の精霊……らしいわ。私と契約することで私の力を底上げしてくれているみたい。たぶんこの子のレベルは私よりずっと高いから、戦闘を手助けしてくれているわ」

「そんなことがあり得るのか? ……じゃあ、カノンは一体こいつをどこで手に入れたんだ?」

 リーダーの草薙君は、まだ確信を得られていないのか半信半疑に問いただす。

 だがカノンはその質問に待っていましたと、勢いよく答えた。

「1階の売店に売っていたわ!」

「「「売店に?」」」

 だがせっかく全部教えたというのに、パーティメンバーの反応は芳しくなかった。



 説明だけではらちが明かないと判明し、カノンはパーティの仲間達を多少強引にダンジョンに連れて入る。

 そしてダンジョンに入ると、光の精霊である白玉に同じ精霊の気配を探知させた。

 あのガチャには、沢山の精霊が入っていると思って間違いない。

 ならば気配を辿れば狙ってたどり着けるはずだと踏んでいたが、その目論見は成功した。

 ただ意外だったのは、カノン達の他にもクラスメイトが売店にたどり着いていたことだった。

「……というか、何やってるの貴方」

「どうも。松林です♪ らっしゃいやせー」

「…………働いてるの!?」

 カノンはまさかと声を上げるが、クラスメイトの松林君は飄々とした態度で頷いた。

「そだよー」

「そだよーじゃないでしょ。いったい誰に雇われたの?」

「そいつは秘密ってもんでしょう? 特に店長はこの店のトップシークレットだよ? ……ってことでどうします? 何か買われていきます?」

「……買うわ」

「いいですねー。置いてあるアイテムはどれもこれも地上じゃ札束が飛ぶようなアイテムですが、ご安心ください。当店はダンジョン価格、全て手持ちで買える価格に抑えたサービス期間中ですよ? というか安すぎ」

 カノンは実は大いに迷っていた。

 怪しいことこの上ない。

 だけどカノンはすべての疑問をいったん飲み込んで前回の反省を生かし、チームの和を取って用件だけ伝えることにした。

「いいわ……じゃあ精霊ガチャいただける?」

「お? お目が高いですね月読さん! もちろんありますよ!」

 よしちゃんとある! そして店員さんも一押しとはよくわかっていた。

 精霊ガチャが夢か幻だったらどうしようかと思っていたけど、あるのなら問題ない。

 カノンはパーティを振り返ると、満面の笑みを浮かべた。

「じゃあ引いてみましょう! 話はそれからよ!」

「……なんか今日のカノンは妙に生き生きしてないか?」

「あんな笑顔見たことないな」

「ね、ねぇカノン……本気で言ってる? おかしくなっちゃったの?」

 来るだろうと思っていたけどそんなセリフに、カノンはハッキリと断言した。

「正気よ。疑われるだろうなって思ったから秘密にしてたんじゃない。でも前回の失敗は間違いなくそのせいだから教えてるの。まず疑う前に引いてみて」

 未知のものを勧めるのなら疑惑は付き物。その上で勧めたいなら、押しの強さはどうしても必要になる。

 カノンの目論見は成功し、天音さんは勢いに押されてわかったわよと降参した。

「そ、そこまで言うなら……」

 カノンから500円玉を受け取った天音さんは、ガチャに投入して取っ手を回す。

 するとコロリンと出て来たカプセルは自分から天音さんの手に収まるとパカリと中身が飛び出した。

「え?」

 飛び出した光は真っ赤な人型に変わっていた。

 そして炎が生まれて、小さな女性のような形になると天音さんの目の前でクスクス笑ってカプセルに戻って見せた。

 あっけにとられた天音さんは、カノンを見た。

「これが……精霊?」

「その通りよ! かわいいでしょ!」

「ああうん……まぁ」

 まだかわいいだけで強くなった実感はないでしょうけど、精霊からの感触はすこぶるいいと感じる。

 あんなに気に入られているのなら、すぐにその力を実感することになるでしょう。

「じゃ、じゃあ……今度はボクが行こう」

 そう言ったのはハバキリ君で、彼もカノンから500円を受け取って、ハンドルを回した。

 今度のカプセルは飛び出て来たりはしない。

 彼が恐る恐るカプセルを持ち上げてから、中からニュルリと白い蛇が出て来た。

「うひゃぁ! 蛇だぁ!」

 白蛇は悲鳴はスルーしてハバキリ君の体に巻き付くと、そのまま透明になって消えてしまった。

「え? なに? 憑りつかれた?」

 青い顔で不安そうなハバキリ君だが、おそらく伝わってくるのは好意だと思う。

「大丈夫。力を貸してくれるみたいよ。あなたの属性と同じ水の性質も持ってるみたい」

「そ、そうなのか……なら、いいのか。いいのかな? モンスターなんだよな?」

 モンスター扱いしてビクビクしているハバキリ君のおでこをカノンは爪の先で突いて、思いの外きつめに言ってしまった。

「……誠意をもって接しなさい。そうすればそのうち何を考えているのかくらいは分かるようになってくるから」

「は、はい……」

 おっと、関係の修繕をしようというのにちょっとイラっとしてしまったとカノンは反省した。

 カノンも毎日一緒に寝ていたら、ぼんやり気持ちが分かるようになってきたのだ。

 心から大切に扱うことで精霊もまた、こちらに心を開いてくれるのである。

 そして最後は草薙君だ。

 なんとなく彼はすごい子を引く気がすると、カノンは内心楽しみにしていた瞬間だった。

「俺は何が出てくるかな! なんかかっこいいし、楽しくなってきた!」

 あの現象を初見でこんなに楽しめるとは、やはり彼は中々逸材の様だとカノンは思った。

 変に躊躇う反応もちょっと頭にきていたのでニコニコと笑顔になったカノンは500円玉を彼に快く貸し出した。

 硬貨を入れて取っ手を回す。

 ガチャリと出てきたカプセルはその状態で彼の前に浮かび上がると、激しく黒いオーラを迸らせて、水墨画のような龍が姿を現した。

 すさまじくビックリしたよ。何アレ?

 小動物ばかりだと思っていたから流石に驚いてカノンも固まってしまったが、龍はジロリと草薙君を見ると、こちらも溶けるように空中に消えてしまった。

「ビックリしたぁ……初めて見たよ龍」

「……そんな感想でいいのかしら? でも力は貸してくれるみたい……あなたは私と同じ光属性だったわよね? 大丈夫かしら?」

 おそらくはあの龍は闇属性の精霊だ。

 何となく今まで属性が揃うことが多かったから意外に思ったが、草薙君自身はずいぶんあの龍のことを気に入っているみたいだった。

「大丈夫じゃないかな? なんかこう、力を貸してくれそうな感じがすごくするよ。不思議なんだけど……」

「間違ってもこんなおもちゃから飛び出していい物じゃなかったわよ……」

 天音さんは気味悪そうにガチャを見ていたが、その言い草は感心しない。

「でも言った通りだったでしょう? 彼らはきっと私達の力になってくれるはずよ」

 カノンは自信満々にそう断言する。

 そして感心した風にため息を漏らしたのは店員の松林君だった。

「はぁーすげぇな。オレも引いたんだけど、もっと小ぶりな奴しか出なかったぜ? トップの成績の奴だと、やっぱなんか持ってんのかなぁ……羨まし」

「どうかしら? でもそうね。今日出た子達はみんな強そうだったわ……じゃあ、次は私の番ね」

「え? 月読さんもう持ってるんじゃ?」

「え? 一体だけしか引いちゃダメなの? そんなことはないでしょう?」

「ま、まぁ」

 カノンはいや、そうに違いないと持参したリュックの中から換金してきたばかりの500円玉をガンと大量にカウンターに置いた。

「なにその500円長ぁ!?」

「銀行でもらってきたの。さて楽しい時間の始まりよ……」

 天音さんナイスだわ。やっぱり驚くわよね?

 でもそのリアクションのおかげで、どことなく優越感を満たしたカノンはビニールを破いて効率化された500円玉さばきを披露した。
 
 流れる様に硬貨を入れ、取っ手を回すそれは待ちに待った最初のあの体験だった。

「ああ……いいわ。この感触が最高よ……ショッピングセンターで色々教えてもらったけど……やっぱりガチャだわ」

「カ、カノン? 大丈夫?」

「なにが? 今最高に絶好調なんだけれど?」

「そ、それならいいんだけど……」

 このガチャは型が古いようだけど、そのせいか回している感覚が固めで、実に手に馴染む。

 この感覚は本当に……本当に癖になる。

「ガチャ……そうガチャがあればすべてが解決するの。大事なのは回転数よ」

 ついつい夢中になってしまったけれど、気がついたらまさか全部空になるまで回してしまうなんて……我ながら驚いたと月読カノンは後に語った。




 僕、綿貫 鐘太郎は松林君の語るエピソードを聞いて、その違和感に首を傾げた。

「……やっぱトップ冒険者ってやつは気迫が違うぜ。オラァ、パンピーとの違いを見せつけられた思いだったね」

「……え? じゃあ、ガチャなくなった?」

「空っぽだよ」

「……まじかー」

 あれぇ? 月読さんなんか様子がおかしくない!?

 いや、まぁ楽しいけどねガチャ!?

 僕はとんでもないモンスターを誕生させてしまったのかもしれないと感じながら、これはガチャを補充していいやつかどうか真剣に考えていた。
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