ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
168 / 178

第168話見違えた

しおりを挟む
 僕らはカメラ君の向かった先で、モンスター相手に激しく戦闘を行う見知ったパーティを発見した。

 しかし……彼らの戦闘は今までの戦い方とは一線を画していた。

 相対しているのは、巨大なカブト虫のようなモンスターで非常にそそるデザインだが、今注目するのはやめておこう。

 突進する巨大カブト虫はダンプカーのようだったが、一歩も引かずに耐久役の剣士が立ちはだかっていた。

「行くぞ……」

 メガネ男子のハバキリ君が剣を構えて大きく上段に構えると、その周囲に鱗の影が現れる。

 その影はカブト虫の突進を受けとめ、触れた瞬間巻き付いて、突然現れた水流が渦巻くと、完全にカブト虫を拘束していた。

「よし! 止まったぞ! 草薙!」

「おう!」

 そしてもう一人の剣士が飛び出し、桃山君辺りで見覚えのある墨をぶちまけたようなエフェクトが津波のように押し寄せて、カブト虫の全身を叩き潰した。

 耐久力に優れていそうなカブトムシは大きくのけぞって、どう見てもダメージが通っている。

 クサナギ君の今までの気を引くことしかできなかった剣撃とは明らかに違う攻撃手段は、威力が段違いに増しているようだった。

「マキ、カノン! とどめ頼む!」

「OK! 任せて!」

 更に巨大な火の玉が太陽のように輝いて、天音さんの手から放たれた。

 灼熱の輝きがモンスターに直撃すると、跡形もなく硬そうな甲殻ごと焼き滅ぼしてしまった。

「私は必要なかったわね……」

 そして月読さんが残念そうにため息を吐いていたが、この中で誰が一番異常であるかと問われたら、僕は間違いなく彼女を推す。

 なぜなら―――彼女の周囲には、遠目からでも見てわかるほどに強烈な魔力があふれ出ていたからだ。




「……あれ、なに? ヤバァ……」

 思わずカメラ越しに眺めて、浦島先輩が声を漏らしていた。

 これは浦島先輩が失礼と言うわけではなくて、見るからにまさしくヤバいのは僕も同感である。

「……!」

 レベルが上がって、魔力に対する理解が深まった今だからこそ感じる異常さは、常軌を逸しているレベルと言っていい。

 ただ、どうしてあんなことに? と思った瞬間に僕には心当たりが瞬時に頭に浮かんでしまった。

「……あー」

 いや、いったん落ち着こう。まだ憶測の域を出ない。

 というか、今までの経験ではわからない異常事態なら、こういう時こそ頼りになるのは攻略君だった。

 なにあれ……。どういう状態?

 思い浮かべて質問すると、攻略君の答えは簡潔だ。

『精霊が飽和している』

 ……どういうこと?

『彼女のキャパシティを越えているのに精霊が離れたがっていない。実に特殊な彼女の性質が起こした状態だよ』

 思い出されるのはガチャガチャいっぱいに入っていた、数多の精霊達のことだ。

 あれだけ手に入れたら大抵は去っただろうなと思っていたけど、そうはならなかったのだという事なんだろう。

 ……大丈夫な奴?

 しかし何となく答えは分かっていたが、攻略君の答えは否だった。

『あまり良い状態とは言えないね。魔力のオーバーフロー状態だ。身に余る力は体にキツイ。それこそすでに変調を感じていてもおかしくないほどに』

「……」

 それは良くなさそうだ。今はまだ平気そうだったが、近い将来危険ならばどうにかできる人間は限られる。

 何とかしなきゃならないかと唸っていると、その時浦島先輩に肩をゆすられた。

「ね、ねえ。ワタヌキ後輩? おかしくない? 精霊集まってない?」

「え?」

 浦島先輩に言われて初めて顔を上げるとそこにはいつの間にか無数の精霊が集まっていて、騒がしく明滅しながら僕の周囲をグルグル廻る。

 別にポップしたモンスターというわけでもないようで、敵対する意思も感じないそいつらは、普通のモンスターとは違うらしい。

「な、なにこれ!?」

『どうやら何か訴えているようだ。……彼女にきっかけを与えて欲しいようだね』

 だが攻略君の言葉を聞いて、精霊達が何をしたいのか僕は察してしまった。

 ……直接催促しに来やがった精霊共!

 こいつら調子がいいとは思ってはいたが、あながち間違っていなかったか。

 しかし、このまま放っておくのもまずそうなのもまた事実。

 僕は眉間に皺を寄せて、攻略君に訊ねた。

 解決するにはどうすればいい?

『改善する方法は二つ。精霊を追い払うか、精霊と相性のいい上級ジョブに変えればいい。精霊使いなんていいんじゃないかと思う』

 上級のジョブかぁ……。

 でもそうか、精霊と相性のいい上級のジョブに変更すれば、テイムできる上限はなくなる。

 しかしどうやってそんな条件を満たすのか、それが問題だった。

 しかし僕の懸念は、見当違いだったらしい。

『難しいところはもうこなしている。精霊を10体使役した状態でアイテムを使用すればいい』

 ……特殊条件系。ならどうにかできそうだ。

『ああ。パラメーターも精霊が手を貸すらしい。良ければチャートを用意しよう』

 なるほど? そういうのもあるのか。ならやってみるのもアリかもしれない。

 僕は方針を決めて、さっそく準備することにした。

「フー……先輩……本当にすみません。今すぐいかなきゃならないところができたんで、ちょっと行ってきます」

「……またあのパーティ、なんかあるの?」

「……そうです。なんかすごいことになってるもんで」

「だよなぁ……あれ放っておくとヤバそうなやつ?」

 浦島先輩も冷汗をかいているあたりよっぽどのことだと理解してくれたみたいだが、自然に解消するかはその時になってみなければわからない感じだった。

「ゆくゆくは……解決できるかも運しだい?」

「そりゃ急いだ方がいい。不思議な縁だし……乗り掛かった舟だから、私も手伝うよ」

「……いいんですか?」

「もちろん。あれ、精霊がらみでしょ? 精霊の階層はよく廻っているから、私も役に立てるかもしれないよね?」

 浦島先輩はそう言って、ポンと自分のお腹を叩く。

 先輩の立てた仮説はおおむね正しい。

 精霊使いになるためのアイテムが眠るのは精霊達の支配する階層だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

現代ダンジョン奮闘記

だっち
ファンタジー
15年前に突如としてダンジョンが登場した現代の地球。 誰が何のために。 未だに解明されていないが、モンスターが落とす魔石はすべてのエネルギー源を代替できる物質だった。 しかも、ダンジョンでは痛みがあるが死なない。 金も稼げる危険な遊び場。それが一般市民が持っているダンジョンの認識だ。 そんな世界でバイトの代わりに何となくダンジョンに潜る一人の少年。 探索者人口4億人と言われているこの時代で、何を成していくのか。 少年の物語が始まる。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

神殴り代行 異世界放浪記 〜俺の拳は神をも砕く〜

ファンタジー
「フォース」——それは、あらゆる生命の魂に宿るエネルギー。 23世紀、日本は新たなエネルギー「フォース」を発見した。 石油の枯渇による世界戦争の中、日本が生み出したこの力は、やがて世界を変革する。 フォースの研究は、「能力開発」へと発展し、人々は意志と感情によって能力を発現するようになった。 主人公・神谷錬(かみやれん)。 東京で働く25歳のサラリーマンであり、趣味は走ることと美味いものを食べること。 幼少期からフォースに興味を持ち、独学で研究を重ねた結果、**「空間干渉」**という独自の能力を会得する。 空間干渉——それは、フォースの膨大なエネルギーを利用し、空間を操る力。 レンは、自在に空間を歪め、破壊することすら可能となった。 しかし、ある事件をきっかけに、世界の壁の向こう側へと放り出される。 彼が目を覚ましたのは、何もない**「虚無空間」**——そこから、レンの果てしない旅が始まる。 辿り着いた異世界には、神々すら支配する強大な力が渦巻いていた。 しかし、レンの拳は、世界の理すら破壊する力を持っていた——。 世界の壁の向こうにあるのは、希望か?それとも絶望か? 異世界を旅する放浪者が、神々と拳を交える物語が、今始まる——。

処理中です...